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学び直しは辛くて楽しい、の話

大人になって退化した。

ほぼ毎週末、市民プールに泳ぎに行く。

元々、子どもの付き添いで行っていただけなのだが、彼らが独力で泳げるようになったのを機に、私も泳ぐようになった。かれこれ半年くらい前の話である。

ちゃんと泳ぐのは多分中学校以来。実に云十年ぶりだ。そして、泳いでみて気づいた。

息継ぎができない。

息継ぎの仕方を完全に忘れてしまった。
小学生の頃はできていたのに...... あの頃は水中メガネもせず裸眼でガツガツ泳いでいたのに......
ドラゴンボールの目薬、欲しかったなあ。

リコーダーの吹き方も、リトマス試験紙の色も忘れてしまった。
”夏の風を忘れゆきながら 僕達は大人になるけれど...”と、今はなきSMAPは歌っていた。
大人になるってこういうことなのかな......そう思った。

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塩素を摂るか、呼吸を止めるか。

さて、息継ぎができないとは、どういう状況なのか説明しよう。
水面から顔を上げて呼吸をしようとすると、なぜか水がドバーッ!と、口の中に入ってくるのだ。お腹チャプンチャプン。

つまり、どこの馬の骨かわからない市民のエキスが入った塩素水を飲まないといけないのだ。これは身体衛生上そして精神衛生上、とてもツラい。

地上では無意識に行っている呼吸という行為。水上だとこんなに難易度が上がるのか。大いなる挫折。そして私は息継ぎを諦めた。

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息継ぎができないとなると、もはや息を止めて泳ぐしかない。
通常、25mをクロールで泳ぐと30秒くらいかかる。30秒くらいなら息をしなくても平気だろ?と思うかもしれない。静止して息を止めるなら楽勝だ。しかし、泳ぐとなるとこれがけっこうキツい。

1時間クロールするとおよそ500kcalを消費する。この消費量はランニングの約2倍。全身をフルに使う分、ハードモードだ。つまり息継ぎは不可避なのである。
食べ物に換算するとかっぱえびせん(1袋)や、すき家の牛丼(ミニ)のカロリーとほぼ同じである。泳いでいる最中に、河童や海老や牛が体から出てくるって、想像するだけでゾッとするよね。

実は、スイミングの世界には、息継ぎによるタイムロスを防ぐために、息継ぎせずに泳ぐ選手もいる。
息を止めて泳ぐことを専門用語でノーブレスと言うらしい。ちょっとカッコいいネーミングだ。でも、私のやつはそんなカッコいいものではない。意図的に止めるのではなく、強制的に息を止められているだけだ。息が続かなければ気絶し、水面に浮上したところを監視員に運ばれる、ただただ迷惑なおじさんだ。

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昔の自分に並ぶ

そんな地獄のような息継ぎなし生活が半年ほど続き、市民の出汁入りプール水の飲量が累計100リットルを突破したあたりから、なぜかちょっとずつ息継ぎができるようになってきた。原因はよくわからないが、きっと出汁の効果だろう。それはともかく、やっと小1の頃の自分に並ぶことができた。

まだまだ息継ぎ動作はぎこちないものの、今は水面から顔を上げる度に「息ができるって素晴らしい!酸素は命の源!指圧の心は母心!」と空気のありがたみを全身で感じながら泳いでいる。超気持ちいい!何も言えねえ!

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というわけで、なんか学び直しって楽しいなと思った話、おしまい。
昔できていたことが今はできなくなって、落ち込んだりもしたけれど、わたしは元気です。


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