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商業デザイナーから現代アーティストへのポジショニング

香川県出身の画家 猪熊弦一郎(1902〜1993)は、香川県庁の設計デザインに自身の作品が組み込まれています。香川県庁を設計した丹下健三を、当時の金子知事に紹介したのは猪熊です。香川県をあげて、猪熊の功績を讃えるはもちろんのこと、出身地の丸亀市には「丸亀市猪熊弦一郎現代美術館」1991年開館があります。

MIMOCAで猪熊の展覧会を見始めた頃、不思議に思ったことがありました。何で生計を立てていたのだろう。
代表的な作品って何だろう。
三越の包装紙といえば猪熊デザインと言われるものの、ほかに有名な作品タイトルを覚えていませんでした。実家が裕福だったから? 突出した猪熊カラーがわからなかったのです。

上野駅中央改札の上に掲げられた壁画「自由」。どういう経緯で猪熊の作品が飾られることになったのか、展覧会のたびに解説を読み、検索しながら行き着いたのは宣弘社という広告代理店でした。お抱えの商業デザイナー、猪熊という表記は見当たりませんが、ラッピングやノベルティグッズのデザインに加え、慶応の学生ホール壁画、挿絵や装丁なども行っています。椅子やテーブルもデザインしました。まるで、佐藤可士和のようではありませんか。
当時売れっ子の商業デザイナーでもあったという記述こそ、全く見かけないのも、だれかわかりませんが猪熊を仕掛けた側の戦略によるのだろうと思います。
現代アートの画家というポジショニングをとる。デザイナーというより重鎮さが増す響きです。

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