初公判を振り返って その1

初公判を終えました。
修習では模擬裁判員裁判をやりますが,実務に出て初めてやったのは認めの一回結審の事件でした。
証拠等関係カードの記載や弁論,尋問等に関しては,修習の経験が生きましたが,やはり初めて一人でやるということでひどく緊張しました。
備忘録的にも,今回の経験をnoteに記録しておきたいと思います。

1 起訴後にすべきこと

(1)身柄解放にむけて
 ア 保釈請求
・被告人が勾留されている場合には,保釈請求を速やかに行う。
・保釈は,被疑者段階から用意しておいて,起訴日にやるというのが基本。それができないと,被告人から文句を言われることに…
・保釈請求の際には,家族に身元引受人を探してお願いすること,日本保釈支援協会等を利用して保釈金の用意をすること
 イ 被告人の家族と連絡をとるには?
・被疑者から電話番号を聴取
・被疑者から携帯電話の宅下げを受ける(なお,携帯電話の宅下げを受けると,携帯電話の差し入れは受け付けていないため,被告人に返せないことがある)
・検察官に教えてもらう
 ウ 各種書面の準備
保釈請求書身元引受書誓約書の起案(ビギナーズに書式アリ)

(2)公判に向けた準備
 ア 検察庁への連絡
・検察庁に電話連絡して「証拠の閲覧・謄写はいつになったらできるか?準備ができたら連絡してほしい」という旨伝える
・検察では,起訴日+被告人名で事件を特定しているようなので,代表電話につながったら,この二つをつたえて,証拠の閲覧・謄写をしたいといえばスムーズ
 イ 閲覧・謄写手続き
・検察庁から準備ができた旨連絡があったら,検察庁に直接行く又は検察庁に出張している司法協会に謄写手続きをやってもらう
・後者の場合には,通常の閲覧・謄写の請求書類に加えて委任状も必要になりる

(3)裁判所との期日調整
・裁判所は,起訴後早い段階で公判の予定をいれようとしてくる
・証拠の閲覧・謄写が終わってないときには,その旨伝えて「まだ決められない」と言って断る

2 証拠の閲覧・謄写後

(1)総論
・スケジュール的には,証拠の謄写⇒間接事実等の把握⇒証拠意見の決定+被告人質問や証人尋問の準備⇒証拠意見の見込みの通知+弁護側立証の開示⇒第一回公判期日一週間前⇒検察官から弁護側立証の証拠意見の見込みの通知⇒公判という流れ
・証拠意見では「不当な影響を及ぼす証拠,適正手続等から許容できない証拠の廃除が課題」となり,「公判前整理手続きに付されていない事件では,検察官証拠調べ請求は,第1回公判期日において行われるのが通常であり,被告人側の証拠意見表明は,その直後におこなわれる。ただし,第1回公判期日前の事前準備として,検察官は請求予定証拠の開示を行い,弁護人は証拠意見の見込みを検察官に通知する」ことになる(岡,神山「刑事弁護の基礎知識」第2版)。
・この「検察官に通知する」時期が第一回公判期日の一週間前

(2)証拠意見決定にむけた準備
ア 証拠意見
・被告人に刑事記録を差し入れて,「被告人の認識と異なるところがないか?」ということを確認し,被告人の認識と異なる場合等には不同意とする。
・他には,余罪に関する書証等につき不同意かつ関連性なし
・というより,「原則として不同意」が基本だが…
・例外的に同意すべきなのは,不同意とすることで不利益が具体的に生じる場合。詳しくは,「刑事弁護の基礎知識」94頁を。
・なお,供述証拠の場合には,同意・不同意で意見を述べ,非供述証拠の場合には異議あり・異議なしで意見を述べる。ただ,異議なしと述べることはあまりなく,「しかるべく」と言う…のだろうか。
イ 注意点
・保釈された場合や在宅事件の場合には,刑事記録を外部に公開しないこと,外部に公開した場合にはプライバシー侵害や名誉毀損となりうることを説明して,書面に残す(※ 詳細は不明だが,SNSに供述調書がアップされたなんていう話もある)

(4)被告人質問や証人尋問の準備
・形式的なこと:裁判官の方を見て答える,弁護人や検察官の質問が終わってから答える,証人には公判当日には印鑑を用意してもらうことは伝える

(5)弁護側立証の開示
・検察官に弁護側立証の証拠意見を決めてもらうために,事前に開示が必要。事前に準備を進めておかないと,第一回公判期日の一週間前に焦ることになる。
・書式はビギナーズにあり,基本はそれを改変して使っていく

3 その他

・実務の相場観が分からずに苦労することがあった。
・思わぬハプニングがあるのが刑事なのでスケジュールには余裕をもっておくこと
・書面の印刷,押印等の形式的な準備に時間がかかって前日に苦労した
・用意した書面は,証拠意見書,証拠調請求書+証拠等関係カード,弁号証,弁論。自作が難しそうな書式は証拠等関係カードだが,検索すれば出てくる。

公判についてはまた別の記事で…

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