山本和彦『倒産処理法入門』第4版 ♯1

 やっぱり,新型コロナウィルスで破産が増えるだろうから,選択科目でもやってなかった破産法をお勉強しとこうということで,修習中に買うだけ買って読んでなかった倒産法の本を読んだ。
 通読用の本としては一番メジャーなのかな?
 今日は,法人破産のところを読んだ。
 雰囲気的には,潮見先生の民法(全)とか山口・青本的な感じで,解釈論ゴリゴリではなくて制度の仕組み・概要がわかるといった感じ。最近では有斐閣ストゥディアがいいというツイートも見かけた。

副読本

 正直,私はケースメソッド大好き人間なので,淡々とした通読用の本は結構つらいものがある。そこで,サブ的に『事例に学ぶ債務整理入門』も使用。

 法人破産の手続の流れとしては,(ヒアリング⇒申立て準備⇒受任通知⇒債権者対応⇒)申立て⇒開始決定⇒破産債権の届け出・調査・確定+破産財団の管理・換価⇒配当⇒破産手続き終結という感じ。
 カッコ内の部分はまさに弁護士業務で知らなければならないところだが,倒産処理法入門には記述がない。事例に学ぶ~で補足する必要がある。たとえば,申し立ての準備については,以下の記述がある。

預貯金については,受任通知後に引き落としがかかると偏波弁済となり得るので,引落としがある口座は残高をゼロにするか,解約しておくことが考えられる。また,債務者が借り入れをしている金融機関の口座に残金があると,金融機関がその残高と貸付金を相殺するので,こちらも残高をゼロにしておくことが考えられる。

 法律相談というのは,たいてい逆算的なアドバイス―偏波弁済にならないように説明することが大事になる。あとは,依頼者の生活面のアドバイス―相殺されて生活資金が枯渇しないようにおろしとこうねというものだったり。

(代表者個人が所有している)不動産については,売却せずに破産管財人に引き継ぐことも考えられるが,申立て費用や引っ越し費用の捻出などのため,事前に売却することも考えられる。売却する場合には,相当額以上での売却が必要なので査定書等を事前にとり,評価額を確認する必要がある。売却した後,後日破産管財人に収支の説明ができるよう一覧表を作成しておくと便宜である。

 債権者対応のところなんかは,生々しい。

受任通知を発送すると……仕入れ先の業者からは,電話に出た事務局に怒鳴っている様子であった。事務局も慣れたもので,一応聞いているようで実際には聞いていない。相手方が怒鳴り疲れたころに,「感情的にはわかるけれど,法律上仕方ないのです」ということを繰り返し伝え,後は債権調査票を出す方向に誘導している。冷静に対応できる事務局がいると弁護士は楽である。

言葉遣いになれない

 法律の勉強あるあるだが,「破産債権」「破産財団」「財団債権」等,言葉遣いがまぎらわしい。
 多分,ポイントは,まず債務者の資産(破産財団)と負債(破産債権+財団債権)でわける⇒財団債権にあたると優先的な弁済をうけられる⇒財団債権にあたるかをちゃんと理解するということだろう。
 完全な自学自習だと,基本書のどこがポイントかよくわからなくていかんね。

新型コロナウィルスによる破産

飛行機のファーストクラスをイメージしたコンパクトホテルの運用を手掛けるファーストキャビン(東京・千代田)が2020年4月24日、東京地方裁判所に破産を申請した。インバウンド特需を狙った競合の新規参入による過当競争にさらされ、2018年3月期の最終損益は2億3700万円の赤字に落ち込むなど、経営は苦戦を強いられていた。そこに、新型コロナウイルス感染症の拡大が追い打ちをかけた。
同社社長岸田氏「宿泊客が急減したのは3月からで、同月は27%に落ち込みました。ファーストキャビンの宿泊料は通常4000~6000円に設定しています。3月は施設によっては3000円を下回る料金を提示して稼働率の維持に努めました。3月20~22日の3連休ごろまでは世間の危機感も薄く、ビジネスマンの出張需要もあったのです。しかし、緊急事態宣言発令の噂が広がり始めたころから状況が変わりました。感染者数の増加が連日報道され、感染者が出た企業名などが伝えられました。私は「施設で感染者が出るリスク」を危惧しました。ファーストキャビンは簡易宿所であり、ビジネスホテルのような完全個室ではありません。宿泊者にはマスクを配布し、検温をするなどの対応を取りましたが、ラウンジやシャワーブースなど共用設備があるため、一般的なホテルよりも密に近くなる可能性が高かったのです。

 ファーストキャビンは,ちょっと高級なカプセルホテルという感じで,内装もきれいだし,個人の居室スペースもふつうのカプセルホテルと違って天井が高い(=前かがみで立てるぐらい)ので,私もよく利用していたから「えっー」と思った。
 確かに,洗面所,トイレ,浴場等他の宿泊者と共有するところが多いので,新型コロナウィルスによる影響は大きいだろう。しかし,まぁもともと赤字経営になっていたことからすると時間の問題だったのかもしれない。

 中小企業の事業承継等も下火になって廃業や倒産の方向に進んでいくと考えられるが,どうなってしまうことやら…

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