ステップアップ 憲法 ♯1 御幸聖樹『検閲と事前抑制』

 法学教室5月号は憲法の特集。
 「事前抑制」は理解できているようでできていない概念…というか,「内容規制」を理解できている人もすくないと思う。憲法学はそのあたりの定義づけをきっちりやっていない気がする。

 判例は,(ⅰ)事前規制,(ⅱ)事前規制たる側面を有するものという二つの概念をつかっている。

まず(ⅰ)事前規制そのものとは,判例によると,「事前に発表そのものを一切禁止する」規制,すなわち「発表の機会が全面的に奪われてしまう」規制であり,このような規制は「思想の自由市場への登場を禁止する事前抑制そのもの」とされる。判例によると,裁判所による出版物の頒布等の事前差し止めがこれに当たる。そして,このような規制は「厳格かつ明確な要件のもとにおいてのみ許容されうる」
これに対して,(ⅱ)「事前規制たる側面を有するもの」とは,判例によると,「思想の自由市場への登場自体を禁ずるものではない」規制とされる。判例によると,税関検査や教科書検定などがこれに当たる。そして,このような規制は失われる利益と得られる利益の比較衡量によって合憲性が判断されている。

 へぇーと思った。初耳。確か,平成30年度の司法試験は表現の自由の問題が出たと思うが,よく合格できたな…

 そういえば,「たとえば,『青少年に有害な本として事前に行政が指定した書籍を青少年に販売した場合,その業者には刑事罰が科される』という規制ができた場合,それは事前抑制でしょうか?」という質問がされて,クラスの大半が事前抑制と答えたところ,「それは違います。事前抑制の具体例は許可制の場合です。手続き的規制がされている場合には事前抑制となります」と学部時代に指導された。

 その先生には内容規制についても教わって,すごくためになった。

 人の行為は,①思想⇒➁表現⇒③行為という段階があって,①思想段階では他者の自由を侵害することはありえないので絶対保障。➁表現自体は名誉毀損・プライバシー侵害等を除いて,原則として他人の自由を侵害しない。しかし,教唆や扇動的表現は,他人の自由を侵害する危険がある。③行為の段階では他人の自由との衝突があるので,行為は制約の対象となる。
 内容規制とは,当該メッセージの伝達効果に着目した規制をいうものであって,上の図式にあてはめると,➁の段階である。現実的かつ明白の危険とは,➁表現者が「人を殺せ」と言った場合に⇒③表現受領者が「人を殺す」行為に出る危険性が現実的かつ明白であることを求めるものである。

 要旨,こんな感じの話だったと思うが,めっちゃなるほどーと思った。

 やっぱり憲法が一番おもしろい。実務つまんない…

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