インハウスになってみて

 インハウスになってみて、しばらく経ったので、感想をまとめます。

仕事の内容面

 前職(※ 街弁一般の話ではなく、私がいた事務所での経験という意味合いを強調するために、前職といいます)で、個人の方に専門家としてアドバイスするとき、合理性や分かりやすさといったアドバイスの内容よりも、立ち振る舞いや話し方といった方法面が重要視されることが多く、「こんなの弁護士じゃなくてもいいし、コールセンターとやっていること同じではないか。自分としては、法的なこと、事実認定をもっと考えたい。」とストレスをためていました。
 今では、法的なこと、事実認定の検討が増えたので、とても満足していて、仕事に充実感があります。基本的には、担当部署が矢面に立ってくれることで、人への対応に時間を割く時間よりも、法的なこと、事実認定の検討に時間をとれるようになったのが大きいと思います。
 そうとはいっても、やはり、「頼りになる」「信頼できる」「相談しやすい」といった要素は、インハウスであっても不可欠だと思うので、前職の経験を生かして、立ち振る舞いや話し方には気を配っています。また、クレーム処理においては、同席することもありますし、弁護士であれば、立ち振る舞いや話し方といったスキルは必ず必要になると感じています。

「個人の依頼者」と「担当者」で変わらないこと

 インハウスは、顧問弁護士とは違って、担当者と直に接することになるので、いわば依頼者ともいえるべき人がいることになります。担当者が頭を抱えていることにアドバイスすることになるので、とても感謝していただけます。私の所属している組織は、いい人が多いので特にそのように感じます。
 そのため、インハウスだからといって、街弁の醍醐味の一つでもある依頼者からの感謝という要素はなくならないように感じています。(※ 私は、感謝されることよりも、仕事の内容のおもしろさのほうを重要視するタイプですが……それでも、感謝されて悪い気はしないのは確かです。)

「個人の依頼者」と「担当者」で変わること その1

 既に書いた事とも重なるのですが、やはり、個人の依頼者は感情のもつれが強く、紛争を解決するためには、法的なアドバイスよりも感情面をひとまず落ち着ける必要があります。そのため、アドバイスの内容よりも方法に力を割く必要があります。これに対して、「担当者」は基本的には感情のもつれがなく、合理的なアドバイス、筋道だったアドバイスをすれば納得してくれます。そのため、ストレスが大幅に減ったと感じています。

「依頼者」と「担当者」で変わること その2

 今感じている、「個人の依頼者」と「担当者」の違いは、「担当者」は、自分の利益を実現できるわけではなく、かつ、「できれば仕事でめんどくさいことはやりたくない」という意識があるのが通常であることから、法的問題に対して、抜本的な改善提案や大きな動きをとることが難しいと感じています。
 この点では歯がゆさを感じており、今後の課題と感じているところです。多分、仕事の進め方、組織の動かし方を学ぶ必要がありますね。

管理職の在り方

 いわゆるボス弁は、法律家としての能力が高かったとしても、必ずしも人を束ねる能力が高いわけではないと思います。いくら書面を書けたとしても磨かれるわけではないものですし。
 しかし、管理職の人は、組織にずっといたこともあって、人をいかにして束ねるか、たとえば、「部下に不満がたまっているときにどうするか」「部内の雰囲気をどのようにしてよくしていくか」といったスキルが身についてるとはたから見ていて思います。
 インハウスになってからは、日々の業務の中で、人を束ねることの大変さや対処の方法を直に感じることができますし(それは前職でも感じるべきであったともいえますが)、違う部署の管理職とも接することができるので、いろんな手法を見ることができます。

終わりに

 私はインハウスになって、仕事にやりがいを感じるようになり、ストレスも大きく減りました。しかも、収入も250万ちかくあがったので言うことなしです。
 ただ、今のままインハウスとしてずっと生きていくのもどこかしら現実味がないというか、それでいいのか?という気持ちがあります。できれば、数年後には弁護士に戻ってみたいという気持ちもあり……まあそれはじっくり考えればいいことですね。
 仕事、頑張っていきたいと思います。

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