諸君、私は違法お兄さんが好きだ。
……といきなり言われても何のことかさっぱりであろう。
これは使っている人があまり多くないオタク用語の一つであり、あまり一般的な嗜好ではないからだ。具体的に言うとpixiv百科にこの単語の記事が存在しないくらいの知名度である。
というわけで違法お兄さんの語義解説と具体例を示す記事である。
違法お兄さんとは?
さて、まずは違法お兄さんの語義についてサクッと解説したいところだが、正確に説明しようとなると、やや煩雑な前提の紹介からになってしまう。オタク文化の一般的な語彙に明るい人は「そんなん知ってるよ」と思うかも知れないがここでは一応丁寧に前提から解説することにする。
まず、「合法ロリ」という用語はご存じだろうか。これは実年齢が幼女ではないのに容姿が幼い女の子にしか見えないキャラクターの事を指す。
内情は極端に見た目が幼い成人女性であったり、好んで幼女の姿を取っている長寿の人外であったりと様々だが、いずれも共通している事として
見た目は幼女だが大人なのでえっちな事しても合法(※同意は得ましょう)
……という点が挙げられる。なのでその属性を端的に示すものとして合法ロリという単語が存在する。
そして合法ロリが存在するからには「合法ショタ」も存在し、こちらは見た目は少年だが中身は大人、というものになる。男女が変わっただけでほぼ同質の概念と言えよう。
そしてここからが本題、この合法ショタの要素を反転させたものがお待ちかねの違法お兄さんだ。
つまり容姿が少年の大人の逆、
容姿は大人だが精神や実年齢が未成熟な子供
という男性キャラクターの事である。広義では見た目の年齢に精神の成熟が追い付いていない、という条件を満たしていれば実年齢が何百歳を超えていようが違法お兄さんと呼称して良いとされている。私が決めた。
これらのキャラはパッと見大人に見えるが、実質子供のようなものと言える。故に手を出したら違法!お兄さんだけど違法!という事で「違法お兄さん」である。聞こえが悪い。実際この記事を書こうと思って違法お兄さんでググったら別のあんまり良くないネットミームが引っかかったので問題のある呼称ではあるのだが、もうこれで馴染んでしまったのでそのまま通そうと思う。だって非合法お兄さんにしたって聞こえが悪い事には変わりないし……。
まあざっくりと
見た目は青年、中身は幼子 = 違法お兄さん
こんな感じで理解して貰えれば良いだろう。
ちなみにこれの女性版は普通に違法お姉さんという表記になると思う。そっちが性癖と言う人はぜひ違法お姉さんでも記事を書いてくれ。
違法お兄さんの何が良いのか
さて違法お兄さんの定義を解説したところで何故それが好きなのか? どこがそんなに良いのか? という部分を語りたいと思う。
先に説明した合法ロリや合法ショタは、幼い容姿のキャラクターが好きだけど、子供にえっちな事をする罪悪感や罪は負いたくない……という需要の元創出されたキャラクター属性だ。その上で見た目子供なのに中身が大人なそのギャップが良いとか、単にのじゃロリが好きなので合法ロリを好きになりやすいとか色々あるだろう。何にせよロリコン・ショタコンの延長線上にある性癖だ。
かく言う私もロリやショタは大好きなのだが、合法○○では萌えられないのである。何故か。
それは私が好きな「幼さ」が精神の幼さだからである。
もちろん幼い容姿そのものも好きなのだが、それ以上に精神が幼いかどうかが重いウェイトを占めて来る。言うなれば内面特化のロリショタコンなのだ。未成熟で幼い精神性を愛しているのである。
一旦整理しよう。
私がグッとくるのは右側の円の中の属性だけである。
で、もっと突き詰めて何故「精神だけが容姿に見合わず幼い状態」に特別強く魅力を感じるかというと、それは私が「足りていないもの・状態」全般に対する萌えがあるからだ。
ロリやショタの精神構造が幼いのは当たり前である。その「大人に満たない」という状態はもちろん魅力的だが、それはある意味「子供としては十分に足りている」と言える。
しかし違法お兄さんはどうだろうか?
違法お兄さんは精神性が子供だ。これはまず大人に満たないという事で1足りないポイントである。更に、違法お兄さんは見た目は大人なのに中身が幼子である。容姿などの外見的な条件に対して、中身が更に「足りていない」。つまりただ幼い子供以上に「足りてない」ポイントを獲得する事が出来るわけである。これはおいしい! このギャップ指数の高さこそが違法お兄さん最大の醍醐味だ。
幼い情緒はまだ完成していないからこそ、周囲の影響を受けてどんどん変化していく事が出来る。そして未成熟だからこそ間違い、衝突し、自他を傷付けやすい。その不完全性と変化に富んだ様、変化の過程を見る事ができるのが精神的な幼さの魅力である。
違法お兄さんは容姿とのギャップでその未完成さを更に強調する事が出来る、素晴らしい属性なのだ。
ぱっと見は青年でありながら、その短い・乏しい人生経験により情緒が若干幼いままで止まってるキャラが人間と関わっていく中で不可逆の変化をしていくの尊いなあ……という性癖である。変化の過程は好きだけど完全に大人になっちゃったら趣味からは外れる難儀な側面もあるがそれはまた別の機会に。
違法お兄さん(狭義)に該当するキャラクター
ここからは違法お兄さんの定義に実際に該当する、私の好きなキャラクターで具体例を示していく。まずはより厳密な定義の上での「違法お兄さん」のキャラクターからだ。ここでは「実年齢は幼子」「容姿は少年~青年」のキャラクターに絞って紹介する。この2つの条件を満たす関係上、人造生命体的な属性のキャラが多くなりがちだ。
ティトス(マギ)
彼は私が人生で初めて接触した「違法お兄さん」概念の存在だ。見た目年齢は10代半ば程度の少年に見えるが、実際の年齢は1歳ほど。不老の魔女が自分の分身として作った人造の生命という設定のキャラクターだ。しかし制作者である彼女とは別の自我を有している。
寿命と人生経験の短い存在ならではの悩みと成長が作中でありありと描かれるキャラで、違法お兄さんで見たいシチュの多くを網羅している。素晴らしい。
詳細は省くがコミック版19巻184夜のエピソードが本当に本当に最高のそれなので是非読んで欲しい。マルガの方が、ずっと大人なんだった。
ジーク(Fate/Apocrypha)
見た目年齢は10代半ば~後半ほどに見える。実年齢は堂々の0歳。とある魔術儀式のために、魔力を生み出すだけの生体電池として生み出されたホムンクルスの少年で、ある偶然が無ければそのまま死ぬ運命にあった。
人生経験が更地の所から人間の優しさや醜さに触れて変化・成長していく様子が作中でいっぱい描かれる。主人公なので出番も多くて最高。
コラボ出張のようなものに当たるFGOでも、ほのぼのシナリオでその違法お兄さん性を発揮しまくっている。幼くてかわいい。
違法お兄さん(広義)に該当するキャラクター
続いて広義の違法お兄さんに当たるキャラクターである。こちらは「情緒が外見に対して未成熟な」「少年~青年の容姿をしたキャラクター」で実年齢は問わない。結果として年齢3桁行ってそうな人外キャラばかりが並んでいる。でも私が違法お兄さんと思ったらそれは違法お兄さんなのだ。
オーエン(魔法使いの約束)
何百年も生きている魔法使い。しかしある戦いの後遺症により、不定期に幼く優しい人格になってしまう――というキャラなのだが、後遺症の人格(通称:傷人格)ではない方の人格でも情緒がハチャメチャに幼い。
何なら作中でも子供っぽいなどと言われる始末である。体感としては傷の方が大人に構って貰いたい盛りの5歳児程度の情緒、通常時が周りにいじわるしたい盛りでワガママな10歳児程度の情緒、という感じだ。(※個人の感想です) どっちからも違法お兄さん成分を摂取できる。たまらん。
まほやくは彼に限らず「人生経験が偏っているせいで人格がまだらに幼いまま取り返しの付かない年齢になってしまった」ニアピン違法お兄さんのキャラが割と多い作品だ。違法お兄さん的な属性に魅力を感じるならば、やって損はないだろう。
アザゼル(メギド72)
実年齢は不明。悪魔なので何十歳~から何百歳くらいまで考えられる。極めて閉鎖的な組織で洗脳教育を受けて育った過去があり、実質少年兵。戦闘の技術以外の事をほとんど知らず、主人公一行に保護される形で仲間となった。
作中では大きな赤子とも形容され、幼女と共に読み書きを教わる下りも存在する。いかつい見た目ながらに子供のように周囲に見守られながら世界の事を知っていく様を違法お兄さんと言わずしてなんと言おうか!
彼の友人にあたるアクィエルも典型的だが、メギドには見た目に対して情緒がやたら幼い「違法お兄さんニアピンキャラ」がめちゃくちゃ多い。程度はキャラによって違うため、今回は最も顕著な例としてアザゼルを紹介したが、他のキャラも大変良い違法お兄さんポイントを発揮してくれる。メギドはいいぞ。
厳密には違うかも知れないけど同種の萌えを感じるキャラクター
最後に違法お兄さんと言うほど容姿と精神年齢に乖離があるわけではないが、私が勝手に「実質違法お兄さんみたいなもん」として萌えていたキャラも一応紹介しておこうと思う。というかさせて下さい。こういうキャラがツボなんです。
ベレト(FE風花雪月)
いきなり該当シーンのスクショから初めてしまって申し訳ない。こういう事である。
……意味が分からないと思うので説明しよう。彼は傭兵上がりの士官学校教師である。傭兵としても教師としても優秀な彼だが、自分の年齢も、この世界で常識とされている宗教の事も、あんまりよく分かっていない。何なら年下のはずの生徒の方がその辺の知識はしっかりしている事もある。
名うての傭兵として知られる大人の男が自分の年齢すら把握してないこのいびつさ! 外見に対して内面が足りないまま成立してしまっているこの感じは非常に違法お兄さん萌えに近い属性である。ナイス。
嘴平伊之助(鬼滅の刃)
最近完結した大人気漫画のキャラである彼も、ニアピン違法お兄さんと呼べる属性を所持している。彼は猪に育てられた少年で、人間と関わった経験が極端に少ない。そのため実年齢に対して言動がちょっと幼い(?)のである。
物語序盤の彼は強い相手と戦うことしか頭になく、他の人間の感情などもあまりよく分かっていない。しかし作中で多くのキャラクターと関わる内に、だんだん人の優しさや他人を思いやる事などを理解していくのだ。ド・ネタバレなので詳細は省くが、終盤で彼が「斬れねえ」と言うシーンは彼の情緒の変化をありありと感じさせて堪らない名場面である。
この不可逆の変化と成長はまさしく私が違法お兄さんに求めるシチュエーションに他ならない。容姿年齢と精神年齢のギャップこそ大きくないが、十分に違法お兄さん萌えを満たしてくれるキャラになっている。
最後に
ここまで違法お兄さん存在とその魅力、実例について色々と紹介して来た。いかに私がこの属性に対して執念じみた愛を持っているか、少しでも分かってくれたら、そしてあわよくばこれを読んだ貴方も違法お兄さんを好きになってくれたら幸いである。
そして中にはこういう人もいたかも知れない「あれ、ここに書いてないけど違法お兄さんっぽいキャラ、知ってるぞ」と。そんな貴方は、是非この記事のコメント欄にそのキャラの名前を書き残して行って欲しい。
この違法お兄さんという呼称が一般的でないように、この属性を形容するオタクの中で一般的な語彙という物は存在しない。そのためツンデレやヤンデレ、ツインテールなどのようにタグや単語を用いて同じ属性のキャラを簡単に探し当てる事が出来ないのだ。
なので、人づての情報はとっても貴重である。是非とも私にまだ見ぬ「違法お兄さん」を教えて欲しい。よろしく頼む。読んでくれてありがとう。
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