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2021年のベスト・アルバム10枚

まさかね、居酒屋で飲めない日々がこんなに続く東京というのは生まれて初めてで、昨年も何かかも特別な年だったのに今年もそれ以上のスペシャルな年になるとはね。でも悪いことばかりでもなく我が東京ヤクルトスワローズはリーグ優勝を決め、さらに大熱戦となったシリーズを制して日本一に。未来においてはそっちで記憶される2021年ということにしたい。もっとも連覇とかVなんちゃらとかそういう記憶に上書きされるのならそれはそれでかまわない。年間ベストとは関係ないけどリーグ終盤にスワローズ応援で作成して、結果的に日本一記念になったプレイリストをここにもリンクしておこう。

で、さて2021年の年間ベストディスクは、こんな感じ

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【01】Paul McCartney / McCartney III + McCartney III Imagined
【02】CRAZY KEN BAND / 好きなんだよ
【03】Daniel Lanois / Heavy Sun
【04】Aaron Frazer / Introducing...
【05】Silk Sonic(Bruno Mars, Anderson Paak) / An Evening With Silk Sonic
【06】INO hidefumi / In Dreams
【07】Joy Crookes / Skin
【08】Pino Palladino & Blake Mills / Notes With Attachments
【09】挾間美帆 / Imaginary Visions (feat. Danish Radio Big Band)
【10】Dave Koz and Cory Wong / The Golden Hour


【01】Paul McCartney / McCartney III

昨年12月18日にリリースされたアルバムなので今年のベストに入れていいでしょう。今年出た『IMAGINED』との合わせ技ということにしてもいい。
とにかく1曲目のこの「Long Tailed Winter Bird」という曲が好き過ぎて。


基本的にチャーミングなギターリフが繰り返されてちょっとだけ声が入ってとそれだけの曲なんだけど、これがもうたまらなくいい感じで何度でもリピートできちゃうという。この1年の私のテーマ曲みたいになってました。

あと『IMAGINED』もアンダーソン・パーク、ブラッド・オレンジ、クルアンビンなど、私のツボを突きまくる絶妙なコラボが多くて最高。『レコード・コレクターズ』8月号の記事(安田謙一)に「もしも、ポールが彼らとバンドを組んだとして、彼の作った曲、すなわち『Ⅲ』収録曲をデモとして、『イマジンド』の形に膨らませた、という風に妄想することも楽しい。」という記述があって、早速そう思い込んで聴いてみたが、確かに楽し過ぎる。


【02】CRAZY KEN BAND / 好きなんだよ


2021年はカバーアルバムの当たり年。前年からのコロナ禍の影響もあるのかどうかはわかりませんがカバー大好きな私としては嬉しい限り。
ただし2021年のベストアルバムにカバー盤がズラリと並ぶというのもどうかなと、いや別にそんなことどうでもいいんでしょうけど、自分としてはなんかそれもどうかなということで。今年出たカバー名盤のことは別に書くことにして、ここではこのCKB盤を代表してエントリー。だって、好きなんだよ、だしね。


ライブも超良かったよ!

【03】Daniel Lanois / Heavy Sun


ラノワ自身によると「古典的なゴスペルと現代的なエレクトロニクスの融合」とのことだが、私が感じたのは何曲かに顕著でそれ以外からも香るレゲエ要素とダブアルバム感。思えば10年『Black Dub』は表題通りに、その他のソロ作、プロデュース作にもラノワの作品には常にダブ感はあった気がする。ラノワの代名詞でもある「独特な音響」はアンビエンス、残響音や反響音を含めた音空間そのものがコントロール下にあるような音像を指しているのだろうが、それっていわゆるダブと同様のものなんじゃないかと、あらためて感じるアルバムだった。音楽は鳴っている音だけでできているんじゃないし、レコード(CDも配信も)には音楽だけが記録されているわけじゃない、でも鳴っているもの感じられるものすべてがサウンドなんだぜ、みたいなそういうのがダブで、ダニエル・ラノワはそう名乗っていないし認知されてもいないけれど、キング・タビーやリー・ペリーと同じくダブの第一人者だと、私は思っている。

【04】Aaron Frazer / Introducing...

シルクソニックと大いに迷ってこっちを1つ上にしました。特に理由はなくどちらも最高に愛聴している2021ソウル名盤なんですけどね。でもこのアーロン・フレイザーも次のアンダーソン・パークも共にドラマー(兼シンガー)っていうのはなんか意味があるのかな、ただの偶然か。

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『POPEYE』8月号の音楽特集「まずはこのミュージシャン、聴いてみてよ!」でもクルアンビンやSmerz等と共にフィーチャー。良い特集で良い記事でした。


あとバンド( Durand Jones & The Indications )の新譜も今年はリリース。こちらももちろんナイス美メロのトロトロソウル盤で良き。

【05】Silk Sonic(Bruno Mars, Anderson Paak) / An Evening With Silk Sonic

今年の大本命。私が推さなくても世界中が推してるが、いやまて私にも推させろ。私はなんでも聴くし聴き散らかして深めもせずに次から次へと手を出す質の悪い雑食系リスナーだが、それでも「原点」(野村の教えで言うところの外角低め。ノムさんRIP)は70s初期のロック/ソウル/ファンクだったりして、そのアウトローにズバッとストレートなサウンドを当代きっての人気者と当代きっての才人がタッグを組んで新譜としてリリースするってんだから、これはあれだ、盆と正月とハロウィーンだ。2月にグラミー授賞式で披露してから、アルバムまではちょい時間がかかったけど(その間に↑を聴いてた。だから順位としてはこの順番。でもいいんだそんなことはどうだって)、期待を1ミリも損なわない作品が届いて超満足。ブーツィー・コリンズ(シルクソニックの命名者なんだって!)とサンダーキャットまでトッピングだなんて、ハンセン&ブロディの超獣コンビにロード・ウォリアーズが合体したようなもんじゃねえか、最高じゃない理由がないよ、もう。


【06】INO hidefumi / In Dreams


初聴きの時からガビーンときた一枚。きっかけは昨年配信でよく聴いたピチカート・ワンをやっぱり盤でも持っていたいなと思いCD買ってクレジットで猪野秀史を名前を見つけ新譜が出ていたから聴いてみたという感じだったと思うが、どうだったかな。
サウンドはシティポップと通じる部分もあるけど、一つ一つの音に審美眼が感じられて手触りはSSW系。密室感もありながら意外と抜けがよく聴こえるのは鍵盤楽器プレーヤーとして腕の部分があるからですかね。

ちなみに「ボーカルが細野晴臣そっくり」という評には納得できずにちょい憤慨もしていたのだが、↑みたいな出来事があり、自ら評の正しさを示してしまったという。余談だがSNSやネット記事を見て脊髄反射してしまうことは私もよくあるにはあるが、リアクションは落ち着いてからにしましょうねという教訓も得た。「えーーー、そうか???」という意見ほど意外と正しいこともある。

【07】Joy Crookes / Skin


シーンとしての南ロンドンはあまりピンときてないというか熱心に追いかけてはいないけれど、実はかなり好みなんだろうなという予感はあって、今年はこのシンガーを気に入ったり。エイミー・ワインハウスが引き合いに出されているのにも納得感あるが、シャーデー的なしっとり感もある(ルックスからの連想?それもある)。サウンドのレトロ志向ということではシルクソニックとの共通点と違いを両方感じる。USとUKの違いもそうだろうけど、それ以上に超大物と新人という違いの方が大きいか。マニアックな音楽ファンから好まれる要素が沢山あるシンガーでありつつ、今は意外と誰が大ブレイクするかわからないから(ブラッドオレンジとかもマニア向けだと思ってた)、このジョイ・クルークスがビッグになる未来も超あると思う。


【08】Pino Palladino & Blake Mills / Notes With Attachments



ディアンジェロ&ザ・ヴァンガードのリズム隊、ピノ・パラディーノ+クリス・ディヴに、プレイヤー&プロデューサーとして大活躍中のブレイク・ミルズ、さらに今をときめくサム・ゲンデル(今年だけでどれだけリリースがあったんだという)等を加えたメンツが揃った豪華盤。という感じなのに内容に派手派手しさは皆無で、ジャンルで言えばジャズということになるのだろうけど、これはジャズです、みたいな感じでも全然なく。スムースに聴き流せるタイプの音楽ではないので聴き手はそれなりに選ぶだろうが、かといって小難しいアート志向というタイプとも違い、良い意味でひっかかりのある音色や時折出てくる人懐っこいメロディに耳を傾けていると心地良く時間が流れるので、聴いてて楽しいアルバムではある。

【09】挾間美帆 / Imaginary Visions (feat. Danish Radio Big Band)

この作品に関しては私が杜撰な説明をするよりも優れたネット記事があるので、どんなアルバムかはそちらをご参照ください。
挾間美帆『Imaginary Visions』歴史あるデンマーク・ラジオ・ビッグ・バンドとの新作を、Edition Recordsからリリース!
▶挾間美帆の新作と「ラージ・アンサンブルの歴史」を一気に解説
▶DRビッグバンド入門

というわけでビッグバンドジャズです。ビッグバンドって「ああジャズだなあ」と思わせてくれるスタイルでもあり、「ああジャズね」と雰囲気だけで判断しがちなスタイルでもあり。特にロックを入り口に音楽を聴くようになってジャズにも触手を伸ばしてきたタイプの音楽ファンにはなかなか取っつき辛いというイメージもあるかと思います。ですがまず私が一発でハマった本アルバムの1曲目を聴いてみてくださいよ、お客さん。



冒頭のベースが先行してからドラムが入る瞬間とか満を持して管楽器がメロディを奏でる瞬間とか、さらには後半のディストーションギターソロ!と分かりやすい聴きどころ満載で、超上がります。
「伝統を現代に」(by立川談志)の2021年最良のバージョンがこのアルバムかと。


【10】Dave Koz and Cory Wong / The Golden Hour


昨年はクルアンビンばかり聴いてたけど(まだ聴いてるけど)、今年はヴルフペックばかり聴いてた。バンド作もギタリストであるコリー・ウォン作も並行してガンガン聴いてたけど2021新譜としてはこれか。サックス奏者デイヴ・コーズとコリー・ウォンとの共演作。デイヴ・コーズがLAのジャズ/フュージョン寄りのミュージシャンということで、確かに朗々とメロディを吹くサックスはそんな感じだけど、コリー・ウォンのギターがファンキーな彩を......というかそもそも70sフュージョンはファンク要素も色濃いので単なるフュージョンとも言えるか。ただし同時に超かっこいいフュージョンなわけですが。ここら辺りのサウンドは70年代のテレビドラマやアニメの劇伴として大野克夫や大野雄二が(太陽にほえろとルパン三世ね)演っていた音楽で耳馴染みなので、ノスタルジー心も揺らします。『太陽にほえろ』のリメイク作ってヴルフペックにサウンドトラック担当してもらったら最高だよねと妄想したりとか。

ブライアン・ウィルソンとカエターノ・ヴェローゾは聴き込みが足りないので来年の候補かな。どちらも素晴らしいんだけどね。

あと毎年思うことだが、年間ベストって「今年特によく聴いたアルバム」と「今年出会ってこの先もずっと聴くであろうアルバム」のどちらをより優先させるべきかは悩むところ。結局は別にどちらが正解ということでもなく、良い塩梅に落ち着くということだけなんですが。さて今年のこれはどんな塩梅だろう。いかがでしょうか、来年の俺、10年後の俺。


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