世の中優しい人がたくさんいるんだな
今日も気温が上がり、仕事を終えて歩く道もまだまだ暑かった。
サッサと歩くと乗れるけど、少しゆっくりすると電車を1本分遅くなる。
だからいつも終わるとなるべく早く着替えて職場を出ると、サッサと歩く。
足早に歩いておよそ10分強。
今日もいつものようにサッサと歩き、駅の隣の商業施設の時計を見て、何とか乗れそうだなと安心した。
その時。
まるで物語みたいだけど、本当にその時だ。
電動自転車の後ろのシートに、子供を抱き上げて乗せようとしたお母さん。
音を立てて自転車が倒れてしまった。
荷物も乗ってるし、これは大変。
電車なんか遅れたっていいや。
大丈夫ですか?
そばにいた他の大人も数人駆け寄る。
あ!
前の座席に下の子が乗っていて、一緒に倒れてしまってる。
お母さんが慌てて救出すると、大きな声で泣き出した。
口の中を切ってしまったか、かなり出血している。
何人かがポケットティッシュを差し出す。
首から上の出血は多いもの。
小さな口からどんどん溢れてくる。
救急車呼びましょうかと声をかける人。
口をゆすいでくださいと水を買ってきた人。
私は何も出来ないけどこれは必要でしょうとごみ袋を差し出す人。
実はラグビーでメディカルトレーナーの研修を受けたことがある私。
喉に血が入ってしまうから下を向かせてあげてくださいと言うことが出来た。
行きつけの小児科に連絡してみますとお母さん。
歯科か口腔外科に行きなさいと言われたんですけど。
すくそこに、自分が行っている歯医者があるので聞いてきますと走り出した人。
上の子は呆然と立ち尽くしている。
そりゃそうだ、弟は口からボトボト血を流しているし知らない大人が何人も寄ってくるし。
大丈夫だよと声をかける。
怪我をした子は泣き止まない。
多分大丈夫、これだけしっかり泣いてるし見かけより酷くはないだろう。
歯医者に行ってくれた人が走ってきた。
すぐ見てくれるそうです。
歯医者はロータリーの向かい側らしい。
荷物を持ちますよ。
私は自転車のハンドルにかけてある荷物を持つ。
自転車を押してくれる人。
上の子の手を引いてあげる人。
お母さんはまだ泣いている子を抱いて歯医者へ歩く。
良心的な歯医者さんで、外に出て待っていてくれた。
これだけ泣いていれば大丈夫、保険証は後でいいですからどうぞ。
患者さんはかなり待っていた。
もちろん誰も文句なんか言わない。
よかったですね、それではお大事に。
本当にありがとうございます。
我々3人はそこで退散。
もちろん電車は2本後になったけど。
あんなにたくさんの人が何か出来ることはと手を差しのべた。
皆優しい。
世の中いい人たくさんいるんだな。
と、嬉しくなった。
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