護岸工事とツバメ達

ツバメが集団で夏を過ごすねぐらで有名な場所が、近隣の河川敷にいくつかあるなんて知らなかった。

春になると軒下の巣に飛来して子育てをする。
うちにもツバメが来てくれないかなぁと毎春思っているが、カラスが来るなど危険があるところには巣は作らないと聞いて、無理なのかなぁと残念で、毎年ツバメが忙しく出入りする家を羨ましく思って見ている。

子ツバメにせっせと餌を運ぶ親ツバメの飛び方は、宙を滑って身を翻すかと思えば、低くスピーディーに目の前を過ぎていく。
実にカッコいい。
それが、私がプロ野球のヤクルトスワローズファンである理由ではないが。

でもあのツバメの一家、子ツバメが巣立つと皆どこかへ去っていく。
その頃は初夏で、ツバメが渡っていくのは秋であるはず。
それまで一体どこで過ごしているのだろうと、ぼんやり考えることはあった。

家族単位で子育てをしたツバメ一家、実は渡っていくために、体力や飛ぶ能力を高め、より多くの餌を食べるために集団行動をしていると知った時には驚いた。

河川敷のヨシやオギの群生は海原を思わせ、夏の風に波打つ様は雄大で、感動的でもある。
実はツバメ達は、夕方になるとその大海原に帰って眠るのだ。

初めて“ツバメのお帰り”に出会った日、私は自転車で土手を走っていた。
ふと夕暮れ近付く空を見上げた時、思わず自転車を降り立ちすくむしかなかった。

ツバメ達は何百もの群れになり近付いてくる。
そして一度何事もないかの様に通り過ぎ、再び折り返し、通り過ぎ。
大空を何度か行き交ううちに、次の群れか帰ってきて、同じように通り過ぎ…
気が付くと先の群れの姿は群生の海原に、静かに姿を消していたのである。

それが次々とやってくる。
群れの大きさに差はあっても、同じ様に繰り返す。
力の弱いものが互いの動きで身を守っているのだろうか。
ゆっくりやってくる夏の夜が、次第に夕日に染まり始めていた事にも気付かずに、ただただ見入ってしまった。

ふと見ると折り畳み椅子と缶ビールを持ち込んで、静かに見守っている数人のグループが居た。
家が近ければ、私も仲間に入れて貰いたかった。

あのツバメ達が秋に渡りに旅立っていく姿はどうなのだろう!
やはり早朝に一斉に出発していくのだろうか、想いを馳せる。

現在、度重なる台風の被害を防ぐために、河川敷のあちこちに巨大な重機が入り込み、護岸工事をしている。
一昨年前の台風では、私も初めて避難勧告発令により、一晩避難する体験をした。

護岸工事も大切である。

しかしあれだけきれいに砂利やブロックを入れた河川敷に、ツバメが安心して夏を過ごせるヨシやオギの大海原が戻るのはいつになるだろう。

それより、一度諦めた場所に彼等は戻ってきてくれるのだろうか。

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