映画「孤狼の血LEVEL2」における役者たちがヤクザ映画を演じる喜びについて

コンプライアンスがうるさくなった今の日本で、ここまで過激な暴力やくざ映画が作れるのは凄い。監督・出演者・スタッフたちのヤクザ映画への熱い思いが伝わってくる。まさに現代版『仁義なき戦い』である。白石和彌監督は、深作欣二の後継者か。それにしても広島弁は、ヤクザ映画の標準語になってしまったほどよく似合う。広島の人たちにとっては複雑かもしれないが、台詞に迫力が出る。

1作目の『孤老の血』は、マル暴刑事の役所広司がとにかくカッコ良かった。迫力満点で、どっちがヤクザか分からないほど。その役所広司と相棒を組んでいた若き刑事、松坂桃李が今度はマル暴刑事として主役に。その死んだ役所広司の警察内部の弱み、秘密情報を記した手帳を引き継ぎながら、広島の暴力団に取り入り、抗争を治めていた。そこへ、狂気の暴力ヤクザ男の鈴木亮平が刑務所から出所してきたことで物語が始まる。

この鈴木亮平の問答無用、組織への忖度無しのとてつもない狂気に引っ張られる形で、暴力殺人事件が次々と起き、再びヤクザ抗争に火がつく。とくに目つぶし場面は強烈で、思わず目を背けてしまう。鈴木亮平はテレビドラマ『TOKYO MER~走る緊急救命室~』の理想に燃える善意の医者からガラッと変わって、眉毛をそり、死神に憑りつかれた狂気の男を演じている。

ヤクザの面々も『仁義なき戦い』の菅原文太、松方弘樹、金子信雄、渡瀬恒彦、梅宮辰夫、内田朝雄たちの強面の面々から比べるとやや小粒になった感じはするが、1作目の石橋蓮司、江口洋介、ピエール瀧、竹野内豊らは死んでいなくなり、斎藤工、吉田鋼太郎、寺島進、宇梶剛士、渋川清彦、毎熊克哉などが強面男たちを演じている。こういう暴力的な集団劇、ヤクザ映画が面白いのは、暴力シーンが特に見たいわけではなく、それぞれの役者たちが嬉々として演じているところが面白いのだ。それぞれの見せ場を歌舞伎の見得のように迫力ある顔とアクションで演じている。今回は、集団劇というよりどちらかというと松坂桃李と鈴木亮平の一騎打ちの様相だ。スケープゴートとなるのは、村上虹郎だ。日本で居場所を見つけられず、言葉も話せない母国の韓国で母を求める旅への夢を利用する日本人刑事の卑劣さが描かれる。悲劇の姉役に西野七瀬(頑張っているが、色気の演出はナシ)、松坂桃李の相棒となる中村梅雀がいい味を出している。

暴力場面の狂気と組織内の争い、騙し騙され、そういう生き馬の目を抜く社会の中でどう生き延びていくのか、子供の頃の在日の貧しく過酷な家族の物語も描かれるが、人情噺やホロッとさせる場面など特になく、徹底したエンタメ暴力アクション映画となっているところが潔い。

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