【命乞いする蜘蛛】682文字 ⑥
ここは5階にあるオフィスフロアの小部屋。会社の書類保管庫として使用されている。アルミ製のラックに青いファイルが隙間なく積まれ、昼間でも薄暗い。
入口のドアから二階堂が入ってきた。
倉庫の奥へ進み天井を見上げる。蜘蛛の巣。タランチュラのような蜘蛛が息を殺してこちらを見ている。二階堂は蜘蛛に話し掛けた。
「お前、先週桜の下にいたやつだろ?」
「なんでわかんの?お前見えるの?」
「見えるよ」
蜘蛛は引力に任せてボトっと落ちた。人間のような黒い影に変化した。右腕はロープのよ