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20年分の想いと恋愛観 その④

妊娠が発覚してからも
彼女はいつも通り。

ただ、いつもよりすごく穏やかな表情を見せるようになったと思った。


ずっと「お母さん」になるのが夢で
まだほとんど実感はないけどとお腹を擦りながら

確かに命が宿ったことに喜びを感じていると
言っていた。

その時の僕はまだ
父になる、夫になる。ということの意味を受け止めきれずに居たんだと思う。


はっきりと

「不安」

しかない状況に心と体のバランスが取れずに居た。


学校に行く→バイトへ行く→帰宅
の毎日の流れの中でも

ずっとずっと頭の片隅に彼女の幸せそうな顔と
これから先への不安が
不自然なバランスで横たわっていた。

そんな時だった。



何がきっかけだったかは思い出せない。
ただ、根底にあったのは不安から逃れたかったんだと思う。

些細な言い合いだったとは思う。
覚えているのは少しだけ泣いていた彼女の表情と


何度振り返っても拭えない
自分の発した言葉。

お腹の子どうするねん。

どうするって何?
どうかしようと思っているのか…

と後に何度も自分の事を責めるが


この時はその言葉の大きさににまだ気付けなかった。

部屋から出ていった彼女を追いかけれないほど
不安に押し潰されてしまった自分の弱さ。
そしてまた次の日には普通に連絡が来ると
甘く思っていたこと。

今となっては取り返しがつかないけれど

僕は彼女の手を離してしまったんだ。


それから2週間程度連絡がなく
どうするか…どうしようか…と
何も動けずにいた。


そんな時、バイト先に父から電話が掛かってくる。

〇〇さんのご両親がいらっしゃてる。
早急に帰ってきなさい。

と。

すぐに家に向かった。途中、何度も吐いた事だけは覚えてる。


家に着くと彼女の両親とうちの父親、父親の後妻が待っていた。

事の経緯を彼女のお母さんから話され
どうしたいのかと尋ねられた。


高校も卒業していない、職もない
そんな僕に彼女と子供を守ります。
とは
無責任すぎて言い出せなかった。


精一杯の言葉で
彼女の隣に居たい。一緒に居たいです。
と伝えるのがやっとだった。


この日すぐに何も結論が出るはずもなく
話し合いは終わった。

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