『不動産権利調整実践編⑮』

権利調整コンサルに欠かせない3つの技術(2)心理思考力について前回から解説しており、今回は人間が持つ「6つの行動原理」だ。この原理は、アメリカの社会心理学者であるロバート・B・チャルディーニ氏が提唱している。同氏の著書「影響力の武器」(日本語訳:誠信書房)によれば、①返報性②希少性③権威④コミットメントと一貫性⑤好意⑥社会的証明の6つの行動原理(パターン)があり、それらについて端的概要的に紹介したい。
①「返報性」日本の文化ともいえる、お中元やお歳暮そして接待の意図である。相手が想定している事以上の対応や情報を提供し、相手方に「恩」を感じさせ、その「恩」を返したい(協力したい)という気持ちを無意識に持たせることである。無料セミナーや試供品によって、購入を促す手法である。
②「希少性」限られたものほど価値があるという錯覚を利用し、相手方がその商品を欲しくなるように誘導することである。女性ならば「限定品」の表示で思わず購入したという人も少なくないはずだ。また、その希少な情報が、本当に価値があるかないか判断しないうちに、貴方だけ。という言葉で行動してしまうと、騙されることもある。
③「権威」肩書や経験などの‘権威‘を持つ人に対して信頼を置いてしまうという事だ、まさにCMにでるスポーツ選手や芸能人の実績を利用して宣伝する手法である。
④「コミットメントと一貫性」誰しも約束は守ろうとする気持ちを持っている。数年前に流行した高額パーソナルトレーニングジムについてもこの言葉が使われた。また、要求する行動の難易度が上がってもその方向性が変わらなければ行動を変えず継続する傾向にある。⑤「好意」自身が好意をもっている人の依頼は対応するが、そうでない人の依頼は対応しない。という単純な事である。逆に恋は盲目的な行動になってしまう。この好意は最も重要な項目なので、次回、詳細に解説したい。
⑥「社会的証明」社会活動を行う上で、周囲の行動に合わせる事を多くの人は望んでいる。「みんながやっているから」「多くに人が」「普通は」というキーワードが使われることも多い。とくに多くの人から支持されていることが、社会的な信頼を生み出すことがある。
こららの、行動原理についても、ダイバーシティという新たな社会的概念が浸透するにつれ、現場では簡単に通用しなくなっていると感じる。特に「権威」については権威者の不祥事事件が増加するにつれて、表面的な権威だけで信用されることは少ない、特に不動産業者は過去の様々なイメージが残っているため、簡単には信用されないが、真摯な対応をすることで、いわゆるギャップ効果が生じ、大きな信用を得ることも可能だ。上記の原理を理解し、現場での対応を無意識でなく意識的な対応へと変えることで、その効果を体感できる。しかし、これらの行動原理を悪用することもできるが、その技術をどのように使うかは、権利調整コンサルの倫理感にかかかっていることは言うまでもない。

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