『不動産権利調整入門編 2』

前回、弊社が誰もが行う業務の質を高め報酬に繋げている事を伝えたが、弊社の事例を紹介する。

別居している夫婦の妻からの依頼で、妻が相続した自宅から引っ越しており、資金に困窮しているので自宅を売りたいが、自宅には夫が住んでおり、夫との離婚調停は不調に終わっているケースだった。

通常の仲介業務でこのような事例で、特に「離婚調停が不調」などと聞けば、紛争に介入した非弁活動で「触らぬ神に祟りなし」と敬遠するだろうが、大きく異なる。

この様な事例では不動産業者は離婚協議への介入はできない。しかし、単純に「売却するので引っ越していただけませんか?」と住んでいる夫に伝え、その合意を得れば良いのだ。ここで注意することは先の通り離婚協議へ介入することである。

よって、依頼者からの受託時には、離婚にこだわらない。という大前提を理解して頂く。そのうえで、夫への対応として妻の希望を伝達し、売却までのスケジュールなどのコントロールをすれば良いのである。

この辺りの対応は慣れるまでは、弁護士等に状況を伝え非弁活動にならないように指導を受ける必要があるので、顧問弁護士との連携が重要で、担当する者が直接弁護士の指導を受け経験を積むことが重要だ。弁護士の指導を受けずに勝手な法解釈のまま業務を進めてゆくと、知らぬ間に非弁活動になっていることがある。

また、管理職がそもそも解っていない時が多いので、権利調整コンサルを進める場合は経営陣が先頭に立ち弁護士の指導を受ける必要がある。

ここで、気になるのが「夫が、ハイ解りました」と退去するのか?という事だ。しかし、よく考えてもらいたい。仲介業務において最も重要なのが売り主の信頼を得て媒介をもらう事だ。特に大企業でもない弱小の宅建業者が全くの他人からの信頼を得て、媒介を任されるのだからこそ、このケースでいえば夫からの信頼を得る可能性が高いといえる。

一言でいえば、看板の信用でなく営業パーソン本人を信用しているケースが多いからだ。

今回のケースでは最終的に夫と妻の間で退去費用について合意がなされ、妻は自宅を売却することができた。この経緯において重要なのは、「説得」しないことである。

ひたすら双方の考えや事実を書面や時系列表を活用しながら客観的に纏め、その内容を丁寧に伝達する。そして、その結果、相手が感じた感情を傾聴し受け止めてゆくだけだ。営業という視点からみると、相手の考えを変えて誘導するように言葉巧みに誘導することが重要と考える人も居るが全く異なる。

感情の縺れが存在する場合、当事者は沸き立った感情を誰かに受け止めてもらえば、その後は冷静となり合理的な考えるようになるのだ。10人10色ではあるがその環境をしっかり整えれば、どのようにすれば自分にとって最善なのかを理解するだけの能力は多くの人が持っている。一言でいえば「寄り添う」だけで良い。「説得」する必要などないのだ。この視点を持つことができれば、権利調整コンサルは誰でもおこなうことができ、弱小の宅建業者であっても報酬に繋げることが可能だ。

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