『不動産権利調整入門編 7』

権利調整コンサルの報酬について解説したい。

まず、業務の要件を定める必要があるが、私は、権利調整コンサルは、不動産に限定しているため、不動産コンサルティング業務の一環と考えている。

「不動産コンサルティング研修テキスト」(発行、公益社団法人不動産流通近代化センター)に示されている概要を紹介する。業務の「内容要件」としては、A:宅建業務からの分離・独立。B:他業務の受託前提の排除。C:新たな付加価値が必要とあり、「手続き要件」としては、A:事前説明。B:契約締結。C:成果物の書面化とある。

よって、これらの要件を整えて業務を行っている。特に重要なのは、業務を進めていると、媒介業務と混合してくるケースがあるので注意が必要だ。実務の中では、依頼者の気持ちが変わることも多く、コンサルティング業務から連続して媒介へ進み、結果的に、上記の要件を整えないことが有る。

なので、手続き要件の、事前説明、契約締結が重要となる。また、成果物の書面化についても、電話一本ですむことであっても、誤解や認識変化によるトラブルが無いように解り易い書面化の必要がある。このような、作業は煩雑なため避ける気持ちも理解できるが、これらの作業は作業費として請求することが報酬に繋がる。

例えば(立ち退き業務でなく)転居依頼業務によって紛争が生じず入居者が全員転居したことにより、利用用途の制限が拡大されるという付加価値の提供につながるため、その報酬額を定めれば良いのだ。

ところが、法定報酬だけを基準として活動していると、見積もりが算出できないという課題が生じてしまうケースが多い、法定報酬が定められている業界が特殊であり、多くの他業者は他者と比較したうえで、自己判断で決定している。私も同様だった。

そのなかで報酬を得る為に考えた手法は、仲介業務においても、全ての業務を一回可視化することで、その業務の実態を把握することだった。

いつ、どこで、何を、何時間かかって行ったのかを履歴で残し、各作業に自身の人件費を乗じれば、報酬額が算出できる。

司法書士や工事業者から頂く見積もりを参考に、実費に付加価値の報酬を合わせ、総報酬額を決定し見積もりを作成してゆく。

これは試行錯誤しながら経験するしかない。しかし、このような作業を続けていると仲介手数料を頂く際に、お客様にどれだけの付加価値を与えられてているのか?という疑問が生じる。そして消費者は仲介手数料を納得して支払っているのか?という疑問につながる。

多くの消費者に質問すると、消費者は納得して仲介手数料を支払っていないのが現実だった。この現実に気づけたことが大きな成果だった。

このように消費者から支持されない報酬は必ず是正されてゆくのが経済活動である。これは不当に報酬を頂いているという事だけではない。お客様が得た付加価値を可視化させて理解させていないケースもある。A

Iの進化によって10年後に無くなる仕事に、不動産仲介業があげられている。それは、単なる情報提供や案内だけではAIに敵わない時代が迫っているからだ。だからこそ、権利調整コンサルという法定報酬が適用されない業務を行い、お客様から報酬を頂く価値について考えてみてはいかがだろうか。

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