『不動産権利調整実践編 ⑨』

権利調整コンサルに欠かせない3つの技術(1)デッサン力、洞察編3、今回は「欲」についてお伝えする。

権利調整コンサルを実践するにあたり、人間の欲についての理解は欠かせない。いわゆる本能の欲で食欲や性欲などの他に仏教などの欲など様々な欲があるが、今回は、マーケティングで利用される「マズローの五段階欲求説(所説あります)」を紹介したい。マズローはアメリカの心理学者であり人間心理学を世に知らしめた学者である。そのマズローが提唱する説によれば、下から上に1「生理的欲求」2「安全欲求」3「社会的欲求」4「承認欲求」5「自己実現欲求」という段階によって人間の欲求が在り、一つ下の欲求が(ある程度)充足されると次の段階の欲求を満たそうとする基本的な心理的な行動を示している。

1「生理的欲求」とは他の動物も持つ本能的な「食欲」や「性欲」などであるが、人間の場合は他の動物とことなり更なる欲求を満たそうとします。

2「安全欲求」他の動物の他の動物からの攻撃を避けるために多少の行動は見られますが、人間とは異なり病気や事故を回避するような行動は見られません、人間は予防や治療するために行動します。

3「社会的欲求」集団への帰属や家族友人などの他の者から受け入れられたい欲求を満たそうとします。

4「承認欲求」地位や名声を求める行為や他者から認められたいと願う行為です。

最近流行りの言葉ですので耳にすることも多いと思います。5「自己実現欲求」まさに読んだとおり、自己の可能性の探求や、自己啓発する行為です。
これらの欲求を理解しておくことで、ある程度、権利調整を行う相手の欲求レベルを理解しながら対応することが可能となります。

例えば、安全欲求を求めていることが解れば、安全安心を前面に出して、会話を組み立てることができます。

とはいえ、安全欲求を求めているからといっても、次の社会的欲求をまったく求めない。という事はありません。以前は、これらの欲求は全て充足されて、初めて次の段階へと進むと考えられていましたが、昨今はこの説も見直されてきました(所説あります)。

よって、この例でいえば、安心安全と社会との関係性も含めた会話を組み立てることでより精度の高い訴求ができるようになります。

いわゆる立ち退き(弊社では「転居依頼」)業務においても、対象建物が老朽化しており、安全欲求が満たされないような危険な物件であれば、「安全欲求」を主に刺激しながら、入居者が生活している地域から離れないように「社会的欲求」を配慮すること、そして建物の明渡に協力して頂くことで得られる「承認欲求」に気づかせることで、相手方からスムーズな合意を得ることが可能となります。

逆に、よくある失敗事例では、金銭ではなく自身の面子や周辺への影響力を求めるケースにおいて、不用意に金銭解決を図ろうとすると、「銭金の問題じゃない」という反発をうけ、話合いに応じなくなることなどもありますので、相手の欲望をしっかりと理解して、権利調整コンサルを実践することが、トラブルがなく結果的に、生産性、合理性の面で良い結果となります。

次回は権利調整を行うにあたり相手方の心の内面奥深くに位置する「信念」について解説します。

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