『不動産権利調整実践編 ②』

弊社では、相続、離婚、貸地底地、貸主借主などで、不安定となった人間関係を原因として流動化できない負動産を適正化させる権利調整コンサルを行うにあたり、なぜ紛争が起きるのかを理解し紛争が行らないように行動する。

「調停のプロセス、紛争解決に向けた実践的戦略」(クリストファー・W・ムーアー著、レビン小林約・編、出版、日本加除出版株式会社)によれば、紛争が生じる5つの要因は、(1)激しい感情。(2)当事者の一方または複数が相手や紛争中のイシューに対して抱いている誤解やステレオタイプ(3)正当性への疑問(4)信頼の欠如(5)乏しいコミュニケーション。とある。弊社ではこれらの対策を行うことで不安定な人間関係を安定させるように徹底して務める。

具体的な対策としては(1)感情の共感と理解。(2)思考方法を理解し適正な情報を思考方法に沿って明示する(3)疑問に対する傾聴と疑問要因の把握、そして透明性のある情報開示(4)過去の不信事実の把握と理解および心理状況を考慮したうえの事実の伝達(5)質の高いコミュニケーションの継続。である。そして最も重要なのが、「信頼」である。

信頼とは、過去の実績による信用を基礎として未来を託すことである。一朝一夕に信頼は得られない。全ての行動がコミュニケーションであり、共感と理解そして相手の思考方法等の特性を把握しなければならない。これらはPDCAの組織活動では対応できない。昭和から平成初期であれば担当者の「経験測」や「勘」といった抽象的な感覚が認められていたが、それ以降、最近までは、PDCAに沿った活動が求められているからだ。

権利調整コンサルについては、OODA(ウーダ)ループが適している。ここ数年の変化が激しい時代におけるマネジメント方法として注目を浴びている。Observe(観察)→Orient(方向づけ)→Decide(決心)→Act(実行)という手順を高速で繰り返す(ループ)手法だ。これは軍事作戦の一つで、特にゲリラ戦やテロリストなど、相手が何をしてくるか想定できない時に有効で、湾岸戦争の際に効果を発揮した手法である。

先が見えない(計画が立てられない)状況下で、機動性をもって対応する際に求められるこの手法は、人間の思考や感情を事前に把握することは出来ないことが前提の権利調整コンサルに最も適している。

現場で得た相手の情報をきっかけに、現場担当者がOODAループを実行し、その場で課題を解決してゆく。これは、現場の実務者に権限を委譲しなければ不可能となる。

権利調整コンサルを業務として推進するには、経営者が、現場担当者に多くの権限を委譲しなければならない。逆に権限移譲できない組織では権利調整コンサルは不可能といえる。だからこそ、中小企業が生き残るための活路となる。計画を立てている間に状況は刻一刻と変化する。

判断に時間が掛かれば相手の感情が変化し答えが変わる。感情を落ち着かせる為に時間をかけることもあるが、相手が抱く信用は、対峙する者の権限や覚悟によって大きく変化する。具体的に断言し対話しながら課題を解決してゆくことが紛争要因を生じさせない第一歩である。

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