脳科学的アプローチ(Wbasic)

今回はダブルベーシックをいう概念を脳科学的アプローチから解説していきたいと思います。

私は思考する個(自分)思考しない個(自分)を分けて考えることが現象や行動を理解するうえで最適と考えます。これは、貴方は二人いて二重人格者なんですよというわけではありません。貴方の体は一つであるし心も一つでしょう。しかし私たちはやらなくてはいけないことを行動に移せなかったり、自身では否定的な事柄を選択してしまったりと、矛盾することがあるのではないでしょうか。それは、思考する個が、思考しない個を上手コントロールできないからで、上手にコントロールできるようになれば習慣として不快なく行うことができるようになります。

つまり、何か上手くいかないことは貴方が悪いのではなく、不器用というだけなのです。思考しない個は、無意識に貴方の体を常に動かしてくれています。これは心臓を動かしたり呼吸をしたりと、意識しなくても自動的に行われます。最も意識しなければ呼吸ができないとしたら人は一晩で眠りについたと同時に本当の眠りにつくいてしまいますが。このように、人間も遺伝子的には他の動物と同じでDNAの莫大なデータをもとに行動を決められて生きています。しかし、環境変化のスピードに適応するために人という種は他の動物よりも脳を肥大化させ、イレギュラーなことにも対処できるように創られたのが思考する個なのです。ここで、チンパンジーやサルなどの人間に近い種族を引き合いに出してしまうとわかりにくいので、昆虫の話をさせていただきます。

ジガバチという昆虫は地面に穴を掘って、青虫をその穴に持ってきて卵を産んで巣穴に蓋をしていきます。子どもはその青虫を食べて育つ。このような仕組みで子どもを育てるのですが、ジガバチは穴を掘ってから、掘った巣穴に青虫を直接もって帰りません。必ず五十センチぐらい手前に青虫を置いて巣の中を調べます。クモに占領されてないかとか、異変がないかを調べてから青虫を持って入るわけです。かなり慎重ですよね。そこで、ちょっと手前にある青虫を動かしておくと、ジガバチは一生懸命探して「ああ、あった、あった」と安心して持ってくる。そのまま穴に持って入るかと思いきや、ジガバチはまた五十センチぐらいのところに置いて巣穴を調べに行くんです。青虫をその都度動かせば、かわいそうなことに永遠にジガバチはこの作業を繰り返します。

このように昆虫は完全段階的システムで動いています。これは思考しない個を極端に表したのですが、人も基本的には生命危機がない場合同じようなことがあるのではないでしょうか。もし、3M先が断崖絶壁でこのまま歩いていくと危険だったとしても昆虫のような種は何の抵抗もせず落下するでしょう。人間が高いところに立った時に足がすくむのも、蛇のような生き物に先天的に恐怖するのも遺伝的プログラムだといいます。思考しない個は生命活動を言わば自動的に行ってくれる存在なのです。

では思考する個とは何でしょう?

それはみなさんの自我ともいえる、こころです。

こころは思考するための装置です。あなたがあなたと自覚するために必要な概念です。意識やこころを定義しようとしても今はまだ明瞭な解はないので、そこを議論しても不毛だと思います。私たちは自由意志ですべてを行っていて思い通りに生きていると感じています。ですが、少なからず昆虫と同じようにある種のルーチンワークによって行動しています。

アメリカの生物学者ベンジャミン・リベットは、人が何か意図したときに、0.35秒前に脳は活動を始めているという事実を発見しました。そうなると人の自由意志はどうなってしまうのかを考え、出した答えが

「人間の自由意志は0.35秒間にある」ということでした。

なぜなら、脳が活動を始めてから行為を実行するまでの0.35秒間(経過時間)に、行為を中止する「自由意志」があるのだからと。このように脳科学的アプローチによると、最初から様々なことは段階的行動として仕組みができていて(思考しない個)それを現実の危機など必要に応じて思考する個が、思考しない個をコントロールすることで人は成り立っているということがわかります。

では思考する個が思考しない個をコントロールするというのはどういうことなんでしょうか。これは有名なマシュマロ実験を通して説明したいと思います。

つづく


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