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芝麻信用と未来の展望

昨今の社会情勢から中国が一帯一路を掲げ、世界の覇権を握ろうと躍起になっていますが、その国内ですべての国民が使用しているわけではないがアリババが運営する芝麻信用(ジーマ信用またはセサミクレジット)というものがあります。

これは目には見えない信用をスコア化したものだが、正の側面としては正直者の善人が得をして、嘘つきの悪人が損をする。負の側面としては、スコア化された人々は監視社会を生きることとなり、プライバシーが著しく侵害される。このように認識している人が多いと思います。善人の救済のようでもあるし悪人の抑止のためでもある。

今回はそんな芝麻信用を通して未来の経済を俯瞰してみようと思います。

1 芝麻信用の概要
芝麻信用はアリババグループのアント・フィナンシャルサービス傘下の独立した信用サービス機構であり、2015年1月に中国人民銀行が個人信用スコアサービスの開業準備を認めた8社のうちの1社である。芝麻信用はクラウドコンピューティングと機械学習、AIなどの先端技術によって個人や企業の信用状況に対して評価を行っており、クレジットカード、消費者金融、融資・リース、担保ローン、ホテル、不動産、レンタカー、旅行、結婚恋愛、学生サービス、公共事業などに信用調査サービスを提供している。
2 信用評価の仕組み
芝麻信用の信用点数化は5つの領域に分けて行われている。これは、①身分特質(社会的地位・身分、年齢・学歴・職業など)、②履行能力(過去の支払い状況や資産など)、③信用歴史(クレジット・取引履歴など)、④人脈
関係(交友関係及び相手の身分、信用状況など)、⑤行為偏好(消費の特徴や振り込みなど)――である。上記の5つの領域について個々人の点数を算出し、総合点数で格付けている。信用の高低は点数によって5段階に区別される。点数は最低で350点、最高で950点となる。350~550を「信用較差」(やや劣る)、550~600を「信用中等」(まずまず)、600~650を「信用良好」(好ましい)、650~700を「信用優秀」(優れる)、700~950
を「信用極好」(極めて良い)と分類している。一般的な消費者はおよそ600点台である。

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引用:総務省平成30年度版情報通信白書


経済成長を加速するためには金融市場を活性化させる必要がありますが、もともとクレジットカードシステム(信用を数値化するシステム)を持たない中国にとって、様々な人に銀行が融資をするのはリスクがあります。日本であればクレジットカードを作る際に、個人の情報を信用情報機構を利用し査定の合否によって行われますが、中国ではそれがないためにアメリカのクレジットの判定基準であるクレジットスコア(信用偏差値)を元に構築されたものが芝麻信用のようです。

中国人の海外でのマナー問題や、国民性である負けを認めてはいけない精神は、真っ当に生きるより利益優先に生きる方が得という考えを生み出し、融資側が融資した後で回収できない事態をしばしば発生させました。そのため、大規模な企業などは融資が円滑に進んでも、中小零細には信用がなく融資されにくいという現状があったそうです。その循環不全を解消するために、朱鎔基(時の首相)は関係省庁に研究グループの設立を命じ、ここに中国の社会信用システム構築が始まりました。(正確には一中国市民が首相に陳情しこの結果首相が動いたそうです。)

つまり当時は、農民や学生など個別に融資をするためのクレジットシステムがなかったので、そのために作られたようです。そう考えれば、現在言われている監視社会のイメージからズレますね。そして、参考にしたといわれるアメリカでは「FICOスコア」に代表されるクレジット・スコアは広く普及しています。この「FICOスコア」のバリエーションのひとつに「FICOスコアXD」というものがあり、クレジットカードを持っていない人にもスコアを与える目的で作られ、携帯電話料金や公共料金の支払い履歴などに基づいて信用を評価しているといいます。

これが芝麻信用のモデルになったといわれます。ではなぜこのような形が必要だったのでしょうか

それは、査定するための個人のクレジットヒストリー(使用履歴や返済履歴)そのものを持っていない国民が大多数だったことにあります。査定をするための情報がないのだからその個人を査定できるはずがない。情報が取得できず審査できないのでクレジットカードを持たない人にも適応できるFICOスコアDXのような仕組みが採用されたと推測できます。

芝麻信用は、まず決済サービスのアリペイに加入し、その決済履歴などを元にスコア化されます。アリペイのユーザー数は2018年9月時点で7億人程度だといわれています。その中で任意で申し込みをして芝麻信用を利用する仕組みになっているそうです。アリペイのユーザーから50%が芝麻信用に申し込んだと仮定してそのユーザー数は3.5億人になります。日本の人口の約3倍はあるので驚きですが、中国の人口は14憶人といわれているのでそのユーザーは4人に1人の割合で25%程になりますね。つまり、中国国民の半分にも満たないことになります。

私たちの何となく知っている情報だと半ば強制的に国民が加入させられていてスコア化されているように感じますがここにもズレがありますね。(正確に情報を仕入れている人も多くいるとは思います)あくまでもこれはサービスの一環で任意によるものです。アリババからすれば優良な顧客を優遇し劣悪な顧客を退けるまたは抑止するためのサービスといっても良いのではないでしょうか。

日本人は「輪を以って貴しとなす」のように集団の輪を大事にし協調性を尊重してきました。それが、集団バイアスや村八分のように負の一面も生み出したことは間違いではありませんが、社会生活の中、各個人が勝手気ままに振る舞い人に迷惑を顧みない人ばかりになれば、安全で安定な社会を築くことは、難しいのはいうまでもありません。また、そのような社会はコストは非常に高く経済的ではないのです。

この芝麻信用を応用して、地方政府による住民の信用度の点数化が行われました。先駆的な事例が、江蘇省徐州市睢寧県で、同県は2010年に「大衆信用管理試行弁法」を施行し、14歳以上の全市民に対するスコアリングサービスを導入しました。また2018年6月、中国都市信用建設ハイレベルフォーラムでは、山東省威海市栄成市による信用スコア制度が表彰されました。

このように不完全ながらもこの試みは、民から地方政府へと流れ、水量が増してきている気がします。実際に地方政府が行っている信用スコアの制度や信頼度は疑問が残りますが、情報化社会のインフラが整備されたときに、中国のトップがこのツールを使い社会を整備する可能性は少なからずあります。そうなれば中国に住むすべての人がその制度に加入することを余儀なくされ、報道などで危惧されている監視社会になる可能性はあります。しかし、その未来は数年で訪れるほど楽な道のりではなさそうです。

また、アフリカのように発展途上の通信インフラが整っていない一部の国では、日本で最近始まった5Gが、すでに基地局が設けられ生活に使用されているようです。ではなぜ発展途上の国で最新の通信設備があるのでしょうか。それは、日本のように1から電柱を建て電線を繋ぎ有線で通信網を整備するよりも、基地局から電波を飛ばしてスマホで電波を受ける方が、国のインフラにかけるコストが断然に安いそうです。先進国の後を追う発展途上国は良くも悪くも遅れをとっているので、このような逆転劇が起こるのだと考えられます。またそれを支援している人たちの思惑も少なからずありそうです。

どうやら過去から現在をみても人は、得するまたは楽な方に流れていきます。家族総出で植えていた稲を、コンバインが代行し、カルガモが食べていた害虫を、農薬が代行し、農薬を撒いていた人間が、ドローンが代行しています。農業の主役は機械になりつつあります。また工業をみれば、手描きしていた設計図をCADが代行し、一つ一つ作っていた工業製品がレーンを渡り量産化され、特殊で量産ができなかったものが3Dプリンターによって製作できる時代になりました。

発展途上国が先進国に追いつき世界がフラットになった世界では多くの既存の価値は失われ当たり前が変わっていくでしょう。そんな社会では今私たちが持っている概念自体が通用しない恐れがあります。これは怖いことではなく当然なことで、人から機械へ機械から新たな何かへと産業の主役が変化して巡っているからです。

全てを電子決済で行い個人を極限までデータ化することで効率化された未来は吉と出るか凶と出るかは未来を待つとしましょう。私たちが口にしている情報は甘いものと言われ食べてみたら辛く、辛いものと言われ食べたものが甘いこともあります。情報は鮮度と正確さを大事にしたいものです。

                               おわり

参考文献

DGlab. 「中国の社会信用システムの真実 前編 ~「信用スコア」構築の歴史~」.
DGlab. 「中国の社会信用システムの真実 後編~「失信被執行人」リストとは何か~」

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