グリットの条件とは

随分とまえに「GRIT(グリット)」という言葉が巷で聞かれるようになった。これはアンジェラ・ダックワースというペンシルベニア大学心理学教授の執筆した本が基になっていると思われます。

結論から言えば「頑張れば何でもできるよ、あなたも頑張って!」のように聞こえる書籍だ。そして才能ではなく頑張り=努力すらもスキルでそのスキルを身につければあなたも一流になれる。この書籍を読んだ方にはこのように励まされた人も多いのではないかと思います。

しかし,、私はこのグリット(やりぬく力)の能力にはいくつかのポイントを押さえなくてはならないと思っています。

まずはじめにグリットには発動条件がある。

発動条件:情熱と粘り強さ

著書のなかでA・ダックワースは、情熱と粘り強さを合わせ持った人がグリットが強かったと書いています。

上記の2点を身につけていなければならない。これは当たり前のことではあるが、ゴールまでたどり着けないとそもそも順位は出ない。つまりマラソンでいえば完走しなくてはいけないわけです。途中棄権はタイムの記録すらのこらない。そのためにはとりあえず完走を目指す。まさにグリット=やり抜く力、つまりは完走すること。そのために必要なのは情熱と粘り強さということになるのです。

童話「ウサギとカメ」ではウサギは昼寝をします。その間、カメは必死に地道に一歩一歩ゴールへと向かい最終的にはウサギより早くゴールにたどり着きました。同じように才能に差があっても地道にゴールへ向かい完走する力が必要だと説いています。情熱は、完走するための燃料になります。粘り強さとは、棄権をせずに完走する意志ではないでしょうか。

ここで私は言葉を変換します。情熱=燃料、粘り強さ=走行不能にならないエンジン。あなたという車が目指すレースで完走するためには、まず燃料と走行不能にならないエンジンが必要です。

毎年フランスで行われるダカールラリーをご存じでしょうか。世界一過酷なレースと言われるこのレースは、出場者の5割以上が棄権することも珍しくない競技です。そのため、このレースを完走した人たちは皆、勝者と呼ばれ、最終日のレースはビクトリーランと呼ばれるそうです。

このレースと同じく私たちは、どの業界でも少なからず、日々棄権者を出しながら、新たなプレイヤーを受け入れ、業界は新陳代謝を繰り返し維持しているのではないでしょうか。そして、このなかで走り続けなくてはならないです。

例年1月1日(前年の12月末に始まることもある)にフランスの首都・パリからスタートし、スペインのバルセロナからアフリカ大陸に渡り、セネガルの首都・ダカールまでのおよそ12000 kmを走ることで知られていたが、2009年からは南米アルゼンチンの首都ブエノスアイレスからチリを回る周回コースに、2012年からはペルーを加えた3カ国を通るルートとなった。また2019年はペルー、2020年はサウジアラビアのそれぞれ1カ国のみとなっている。
かつてのヨーロッパ-アフリカ大陸時代は、途中ほとんど集落や救護施設のないサハラ砂漠を縦断する過酷な競技なため、出場者の5割以上がリタイアする大会も珍しくなく、アフリカ大陸時代は年によっては死者が発生することもあった。競技区間には、西サハラなど政治的に不安定な国が入っていることも「世界一過酷」と呼ばれる由縁であった。それ故、「全ての完走者が勝者である」という言葉が出場者全員の共通の認識となっており、最終日のレースは「ビクトリーラン」と呼ばれている。 

         出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

才能とは何か。それはハイスペックということ。他にはない性能を有している証です。しかし、どんな高性能なマシンも燃料がなければガス欠では走らないし、砂を巻き込んで止まってしまうほどデリケートなエンジンでは完走すらままならない。おわかりの通り、才能(性能)だけでは完走できないのです。

では燃料と走行不能にならないタフなエンジンは、どこで手にすればよいのでしょうか。ではまず燃料から探してみましょう。普通、ガソリンであればガソリンスタンドに行き、お金を支払えば買えます。しかし、グリットに必要な燃料はここでは販売していません。ではどこにあるかと言えばそれはあなたの中にある。そういう他ありません。なぜなら、燃料にはラベルが貼ってありそこには「私が好きなこと専用」と書かれています。

つまり、他人である私があなたの燃料を探すことは不可能なのです。これはあなたが自分と向き合い探さなくてはいけないことなのです。A・ダックワースは著書のなかでメガ成功者のほとんどの人が次の言葉を必ず発言したとして、

この仕事が大好きだ。僕は本当にラッキーだ、今日も仕事ができると思うと嬉しいんだ」

と彼らは金銭面や待遇が良いからではなく、心の底からその仕事を愛していることを感じたそうです。あまりに抽象的な概念なので明確な答えになっていないように感じますが、自分を信じ抜くためにはこの【好き】という概念は核にあり、それを無視することはできません。

あなたも何かに夢中になり、その何かが自然と上達したことはありませんか。例えば、歌を歌うことや、走ることであったり、もしかしたら実験により何かを発明したりと。私たちは無心で好きと感じるものでなくては頑張れないようにデザインされています。もし、嫌いなものを克服したいのであれば、まずはじめに嫌いなものを好きになる作業から始める方が効率が良い。

ざっくりですが燃料は見つかりました。では走行不能にならないタフなエンジンを自身のマシンに搭載するためにはなにが必要になるでしょうか。

それは、楽観的になれることです。誰もが諦める時に原因になるのは絶望によるストレスです。もうこれ以上は成果がでない、自分のやっていることに成果は得られず意味を感じなくなってしまい、その喪失感から逃れるために諦めるのです。

少し話がそれますが、ギャンブルに勝つにはどうしたらいいかという究極の技があります。それは、負けてもそのレートの倍のレートでかけ続けるというものです。どんなに難しかろうが必ずいつかは勝つことができます。もちろん、手持ちのチップがなくなってしまえば無理という現実はありますが理論的には100%勝てます。

これと同じように、成功するまでやり続けることで成功することは可能です。それはもしかしたら死後になってしまうかもしれません。しかし、そのように日々努力をして成功している人が山のようにいます。また、成功者はすくなからず、日々努力し続けているものです。

大丈夫、うまくいくことが確定している前提なら、人は頑張れるのです。では、うまくいくと思うためにはどうしたらようのでしょうか。ここには脳が関与しているとしかいいようがありません。私たちの世界を構成しているのが脳で、あなたの世界を構成しているのはあなたの脳です。わるい事が起こりそうだと思うと悪いことがおこり、良いことが起こりそうだと思うと良いことが起こる。

このうまくいくと思うことが定着した状態が成長思考で、うまくいかないと思うことが定着した状態を固定思考と呼ぶとしましよう。成長思考の人はどんなトラブルがあってもこれは途中経過でこのあと良くなると考える。これが楽観主義の根幹にあり成功しやすい。一方、固定思考の人はトラブルを絶望的に捉えこれでおしまいだと思い投げ出してしまう。投げ出してしまうことで成長が止まり成功に結び付かない。

本当に脳の回路のせいなのかと疑う人がいるかもしれません。アメリカのスティーブ・マイヤーは神経生物学を通してこう語っています。

「嫌な経験に対して反応する脳の領域はたくさんある。たとえば扁桃体だ。それどころか、全体がストレスに反応する辺縁領域もある。こうした辺縁系の構造は、前頭前皮質などの上位の脳の領域によって制御されている。だから、頭のなかで何かを判断したり、考えや意見が浮かんだりすると前頭前皮質の抑制構造が活性化して、メッセージを送る。我々は脳の神経回路には可塑性があると考えている。したがって、まだ若いときに大きな逆境を経験して、それを乗り越えた場合、それ以降にまた逆境が訪れると、対処のしかたが変わってくる。ただし、それは非常に大きな逆境を経験した場合に限られる。ちょっと困った程度では、脳に変化はおこらない」

このマイヤー博士のいう非常に大きな逆境を乗り越えることが成長思考になるトリガーなのだとしたら、わたしたちは意図的につらい環境の中で何かをなし遂げる経験をしなくてはならないことになる。

しかし、そもそも大きな逆境を乗り越えるためにグリットは必要なのではないか。たまごが先かニワトリが先かになってしまっているように感じる。しかし、脳の一部の可塑性によって事態の対処の変化が起こるのだとしたら、大いに価値はある。それは、可能性があることの証明であなたができないことはない証明にもなる。

                              つづく


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