思い出せない

僕は記憶が薄い。
記憶力が弱いわけではないが、思い出が残りにくい。
人の話は些細な事でも案外覚えてる。
暗記能力にも多少自信がある。
けど、自分の、感情を伴う記憶があまりない。
例えば最近楽しかった事、悲しかった事、ムカついた事、面白かった事など、今これを書きながらも何一つ思い出せない。

毎日、職場と家の往復だ。家でやることと言えば、家事とカワウソの動画を見るくらい。
淡々と、代わり映えのない毎日を過ごしている。
モーニングルーティンどころか、エブリタイムルーティンだ。
その上はっきりとした趣味もなく、何か目標があるわけでもない。

しかし一番問題だと思うのは頭の中だ。
僕の頭の中は疑問や考察、ああすれば良かったかな、こう言えば良かったな、といった反省や後悔、周りの目を気にする自意識過剰、つまり考え事で大半が占められている。
自分の意見や自分の気持ちを全く意識していない。
だから、自分がどう思ったか、どう感じたかを覚えていないのだろう。
一瞬で通り過ぎる感情を、考え事をしているうちに掴みそこねているのだろう。

これによって何が困るかと言えば、一つはコミュニケーションだ。
僕は喋りベタで、聞きに徹するかコミュニケーション自体を避ける。
会話が盛り下がる前に、つまらない冗談を言ったりふざけたり作り笑いで逃げる。
そしてまたコミュニケーションを避ける。
見事な悪循環だ。

原因は返す能力、質問力、話をふくらませる連想能力などの低さはもちろんだが、エピソードトークのなさも大きそうだ。
世間話を聞いたり話したりが好きなのは感情型だが、あいにく僕の周りには感情型が多い。
だからこそ、僕にはエピソードが必要だ。

もう一つは、日々の充実度に関わってきそうだ。
例えば一週間の過ごし方を聞いたとき、月曜から金曜は仕事で、土曜は家にいて日曜は少し出掛けた。と、ただ出来事を並べる人よりも、
あの日はあんな事があって、こんな事をして、こう思って、次の日はこんな事をして、とても楽しくて…と出来事と感情が詰まっている人の方が聞いている人も、思い出している本人も面白いし、やっぱりそこから色々な話にも広げられそうだし、なんとなくだがこっちの人の方が日々が充実していそうだ。

思考型みたいな文章を書くが、僕は感情型だ。
人との関わりが大切だし、感情も大切だ。
人を避けて、淡々と時間を過ごすロボットのような毎日には気が滅入る。
単調な毎日だからこそ、自分でどうにかするしかない。
感情が動く瞬間を見逃さぬよう、目を凝らし耳を澄まして、人間らしく生きよう。
そう思った。

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