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第45回:ラマダンは楽しい

2023年3月29日掲載

今月22日からラマダンが始まりました。ラマダンとはイスラム暦第9月のことです。日本では断食のイメージが強いのですが、多くのムスリム(イスラム教徒)は「1年で最も楽しいイベント」だと言います一体どういうことなのでしょうか。そこで今回は日本でもちょっとした動きがあったラマダンについて考察します。

■ラマダンは毎日がお祭り

ラマダンではイスラム教の五行のうちの一つである断食をする期間であることは知られています。世界中のムスリムはこの期間中苦行にも見える断食に耐え、神への信仰心を強めます。日本人の中には一日中飲まず食わずで一体どう過ごしているのだろうかと思われる方もいるかもしれません。しかし実態は、もちろん完全に絶食しているわけではありません。実際断食するのは夜明けから日没まで。食事はその直前と直後、つまり日が昇る前に朝食をとり、日没後に夕食をとります。

特に夕食はイフタールと言い、友人を自宅へ招いたりモスクに集まったりして大勢で食事を楽しみます。東南アジアや中東諸国ではこうしたニーズをとらえたサービスが普及しており、ホテルでのイフタールやレストランの特別メニューが人気になっています。ちょど日本のお正月のような雰囲気になります。

■知られざるラマダンツーリズム

かつては自国で家族や友人と過ごすことが慣例だったラマダンですが、今では海外へ渡航して「異国でのラマダンを経験してみたい」といったニーズが増えています。

東南アジアや中東諸国ではイフタールは「ラマダンテント」と呼ばれる大規模な会場で盛大に開かれたり、街中を露店が埋め尽くしたりとまさにお祭り騒ぎになります。自国とは異なる雰囲気で、辛い断食期間を終えた異国の同胞とともに祝うのは格別だと言います。

食べ歩くのもよし、高級ホテルで舌鼓を打つのもよしということで、各国はインバウンド客へも積極的にプロモーションしています。私が知る限り日本でこうしたニーズを捉えている事業者はおらず、サービスも提供されていません。日本はムスリムにも人気の渡航先であるので、今後ラマダンに対応したサービスが展開されることを期待したいと思います。

■日本も「ラマダン」に注目し始めた。

弊社が運営しているインバウンドメディア「Food Diversity Today」では、食の多様性(フードダイバーシティ)対応に関する情報を発信しています。その中で、例年にはないちょっとした変化がありました。ラマダンに関する記事へのアクセスが急増したのです。

図は3月第4週の記事別アクセス数比率です。上位10記事の1位は「2023年のラマダンはいつから?」という記事でしたが、同記事が上位10記事に占めるシェアは53.8%、実に半数以上に至りました。実は近年ラマダンに関する記事へのアクセス数は増加傾向にあったのですが、今年は特に増えています。中でも注目すべきは日本人によるアクセスです。これまでは日本でのラマダンについての英語記事へのアクセス数が多かったのですが、今年は日本語記事へのアクセスが増えています。つまり、ラマダンについて関心を強めている日本人が増えていることが伺え、察するに対応を求められている日本人、例えば留学生や就業者を迎える立場である人たちがアクセスしているのではないかと考えられます。

現にインドネシアからの日本在留者は8万3,000人(2022年6月現在)で、前年比39.0%増に至っています。現地のリクルートエージェントによると、日本は他国に比べ相対的に賃金は安い傾向にあるものの、安全であるということから就業先として人気があるとのこと。しかし一方で懸念は宗教に対する理解とイスラム教に対する偏見、そして食事だと述べていました。これらはグローバルな一般知識ですが、アクセスが増えているのはようやく学び始めた日本人が増えているからかもしれません。ラマダンを機会にダイバーシティへの対応が進むことを期待したいと思います。


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