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なんとなく、引き寄せられた美術館


早めにバイトをあがった日。
気になっていた神社に足を延ばした。

近くに海があったりと、あまりに綺麗な場所だから少し周りをぶらぶらしてたら、
そこは、美術館の前で、お客様を待っていらした可愛いおばあさんに声をかけられた。
おばあさんが目の前にある海に浮かぶ鳥居の話をしてくれた。
美術館の中に綺麗な写真がある
と、誘われたものの
キャッシュレスが私は当たり前になってしまっていた私は入館料500円がなかった。

それでもいいから、と入口近くにある美しい一枚を見せてくれた。
とても神秘性を感じる写真だった。
この美術館も、このおばあさんも気になったから、社交辞令みたいに交わされた言葉を心の中で温めた。
その日は、今度、伺います。
と、小さな約束をして別れた。


そして、オススメらしい鳥居をみにすぐ側の海に行った。
海が目の前に広がり、私と同じように海にある鳥居を観にきたお客さんが何人もいた。
強い潮の香りと波の音、どこまでも広がっているような海。
自由を感じて凄く落ち着いた。
目の前に広がる自然がただただ心に沁みた。


思い立ったが吉日。
数日後、約束を果たそうとその美術館に行った。
やっぱり可愛いおばあさんがいらして、館内は私1人だった。
小さな美術館に飾られた作品も、雰囲気もとても素敵だった。
この館内の広さ、狭さ?もちょうどよかった。
私が行ったことのある美術館は広くて、私のワクワクはずっと落ち着かない。
広い館内を歩くのはちょっと疲れてしまうし、通りすぎたら、またと戻る気力がなくなることもしばしば。
それと比べると、部屋は3部屋ほどで、1人でゆっくり目の前の作品を眺められてよかった。
気になったら、戻ってまたみなおす。
館内に流れる時間の速度も落ち着いた。
オルゴールが奏でるメロディも心地よかった。
最初の方、おばあさんは、たくさんたくさん説明をしてくれて、だいたい言い終わるとそっと離れた。


1番大きな部屋は玄関から真っ直ぐで階段を降りると目の前に大きな金の額縁からみえる。
この作品こそがこの美術館のウリだ。
ここだけは、写真撮影もOK。
海にたつ鳥居。
その日は、雨予報にもかかわらず、この時は晴れ間が出ていてとても美しい作品だった。

時折玄関の方をみると、おばあさんが外をみて座っていた。
何だか映画のワンシーンみたいだったな。

私は美術について詳しいわけでも
とても興味がある方ではないけど、
全てがとてもよかった。
おばあさんまでもがこの美術館を心地よく感じる大事な1人の要素になっていた。

気づいたら1時間以上滞在していた。
この美術館にあるノートに、私は前の人に倣って筆ペンで名前を書いてみた。

9月×日 ◯◯県 楪 若葉

初めてだ。この名前を誰かがみるだろう、ノートに書いてみた。
1つ自覚が生まれる気がした。


帰り際に、館内に作品が展示された画家の絵のカードを買った。

「来月から展示する作品が変わるんです。また来てね」

また小さく約束をしてしまった☺️
とても気に入ってしまったから、また、必ず行く。
願わくばずっとずっとこの美術館はあの場にあっていて欲しいし、また、おばあさんに会いに行きたいなって心が喜ぶ日でした。




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