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備忘録〜取消訴訟から当事者訴訟まで〜

◉取消訴訟

○取消訴訟の種類

(1)取消訴訟の種類

 行政事件訴訟には様々なものがあるが、実際に提起される行政事件訴訟のほとんどがこの取消訴訟である。取消訴訟には、処分取消訴訟=行政庁の処分そのほか公権力の行使に当たる行為の取り消しを求める訴訟、と裁決取消訴訟=審査請求・異議申立てその他の不服申立てに対する行政庁の裁決・決定その他の行為の取り消しを求める訴訟、の2種類がある。

(2)処分取消訴訟と裁決取消訴訟の関係

①原処分主義=処分に不服があるものが審査請をしたものの、これを認めない裁決がなされた場合、元々の処分の違法を主張して処分取消訴訟で争うことも、審査請求を認めない裁決の違法を主張して裁決取消訴訟で争うことおできる。もっとも、原処分の違法を主張して裁決取消訴訟で争うことはできない。このような主張を認めると、裁判所が原処分と裁決のどちらについて心理・判断すれば良いか混乱してしまうから。そこで、原処分の違法を主張して争いたいのであれば、原処分の取消訴訟を提起しなければならないということになる。

②裁決主義=行政取消訴訟法以外の個別の法律により、処分に不服があるものが審査請求をしたものの、これを認めない裁決がなされた場合には、裁決取消訴訟のみ提起することができるとされている場合がある。このような場合には、原処分の違法についても裁決取消訴訟で争うことになる。

○取消訴訟の訴訟要件

 取消訴訟が提起された場合、まず、訴訟要件(=訴訟を提起するために満たさなければならない条件)を満たしているか調査する。これは、違法な訴訟を排除することによって、裁判を開いたり相手方を裁判所に出頭させたりする時間と労力の無駄を省くため。

◆取消訴訟の訴訟要件=①行政庁の処分または裁決が存在すること(処分性)、②訴訟を提起する資格を有していること(原告適格)、③訴訟を提起する実益があること(訴えの利益)、④相手方を間違えずに訴訟を提起していること(被告適格)、⑤管轄(=裁判所の間での裁判の分担の定め)する裁判所に対して訴訟を提起していること(裁判管轄)、⑥法定の期間内に訴訟を提起していること(出訴期間)、⑦法律に行って審査請求に対する差行けるを経た後でなければ訴訟を提起することができないとされている場合に、これを経ること(審査請求前置)、このうち1つでもかけている場合は、取消訴訟を提起することができない。

○取消訴訟の審理

(1)審理の対象

 取消訴訟においては、処分の違法性のみが審理の対象となる。なお、行政不服申立てにおいては、処分の違法性にみならず、処分の不当性(処分が公益に適合しないものであるかどうか)も審理の対象となる。

(2)心理手続

 取消訴訟においていかなる事実を主張するか、また、主張された事実についていかなる証拠を収集するかについては、当事者に任せるべきとされている。これを弁論主義をいう。

○取消訴訟の判決

 取消訴訟は、原告(=訴えを提起したい人)がその訴えを取り下げた場合などを除き、裁判所がなした判決によって終了することになる。

(1)判決の種類

 取消訴訟の判決には、①却下判決=取消訴訟の訴訟要件が欠けており不適法であるとして、審理を拒絶する判決、②認容判決=取り消しを求める請求に理由がある(処分・裁決が違法である)として、処分・裁決を取り消す判決、③棄却判決=取り消しを求める請求に理由がない(処分・裁決が適法である)として、請求を退ける判決、の3種類がある。なお、②認容判決と③棄却判決を合わせて本案判決=審理の結果を表明する判決、という。処分・裁決が違法である場合、認容判決がなされるのが通常だが、処分を取り消すことにより公の利益に著しい障害が生じる時は、棄却判決をすることもできる。これを事情判決という。

(2)判決の効力

 取消訴訟の認容判決(取消判決)が確定すると、①既判力=訴訟において判決が確定した場合に、当事者及び裁判所が、その訴訟の対象とんっ多事項について、異なる主張・判断をすることができなくなるという効力、②形成力=処分・裁決の効力を処分・裁決がなされた当時に遡って消滅させる効力、③拘束力=行政庁に対し、処分・裁決を違法とした判断を尊重し、取消判決の趣旨に従って行動することを義務付ける効力、といった3つの効力が生じる。

✳︎取消訴訟以外の行政事件訴訟

無効等確認訴訟=処分・裁決の存否またはその効力の有無の確認を求める訴訟、不作為の違法確認訴訟=行政庁が法令に基づく申請に対して、相当の期間内になんらかの処分・裁決をすべきであるにもかかわらず、これをしないことにつき違法の確認を求める訴訟、義務付け訴訟=行政庁に対して一定の処分・裁決すべき胸を命ずることを求める訴訟、差し止め訴訟=行政庁が一定の処分・裁決をすべきでないのに、これがなされようとしている場合に、行政庁がその処分・裁決をしてはならない旨を命ずることを求める訴訟、当事者訴訟=権利グムの主体が対応な立場で法律関係について争う訴訟、民衆訴訟=国または公共団体の機関の法規に適合しない行為の是正を求める訴訟で、選挙人たる資格その他事故の法律上の利益に関わらない資格で提起するもの、機関訴訟=国または公共団体の機関相互間における権限の存否またはその行使に関する紛争についての訴訟

◉当事者訴訟

○当事者訴訟とは何か

(1)当事者訴訟とは何か

 当事者訴訟とは、権利義務の主体が対等な立場で法律関係について争う訴訟のこと。取消訴訟は、行政庁が上の立場から国民に足してなした処分。裁決という行為自体を直接に争う訴訟であるのに対し、当事者訴訟は、行政主体などと国民が対等な立場で法律関係について争う訴訟。

(2)当事者訴訟の種類

 当事者訴訟には、形式的当事者訴訟と実質的当事者訴訟の2種類がある。

○形式的当事者訴訟=形式的当事者訴訟とは、当事者間の法律関係を確認しまたは形成する処分・裁決に関する訴訟で、法令の規定によりその法律関係の当事者の一方を被告とするもののこと。これは、処分・裁決の効力を争う点で実質的には取消訴訟であるものの、立法政策上、当事者訴訟の形式をとるべきとされたもの。

○実質的当事者訴訟=公法上の法律関係に関する確認の訴えその他の公法上の法律関係に関する訴訟のこと。従って、行政主体と一般国民との間における対等当事者としての法律関係に関する訴訟であっても、私法上の法律関係に関する訴訟は、実質的当事者訴訟ではなく民事訴訟となる。

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