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備忘録〜地方公共団体の機関から住民の権利まで〜

◉地方公共団体の機関

○議会

(1)議会の地位

 憲法93条1項は、地方公共団体には、法律の定めるところにより、その議事機関として議会を設置することとしている。これを受けて、地方自治法89条も、地方公共団体に議会を設置することとしている。地方公共団体の議会は、国で言うところの国会と同様の役割を果たしている。もっとも、国会が国権の最高機関であるのと異なり、地方公共団体の議会は、地方公共団体の最高機関でなく、長と対等の地位を有することになる。これは、地方公共団体の議会の議員も長も、共に住民により直接選挙される点で、国会議員のみが国民により直接選挙される国の場合とは異なるから。

(2)委員会制度

 議会には、通常、本会議と委員会がある。本会議は、議員全員で構成される議会の意思決定機関。これに対して、委員会は、一定の分野を集中的に審議するために、一部の議員で構成される合議制の機関である。本会議の他に委員会が置かれるのは、一部の議員が集中的に審議してその結果を本会議に報告した方が、たくさんの案件をスムーズに処理できるから。委員会には①常任委員会=その部門に関する調査や議案・陳情の審査などを行う常設の委員会、②議会委員会=議会の運営・会議規則に関する事項や議長の指紋に関する事項などを調査する常設の委員会、③特別委員会=議会の議決により付議された事件を審査する特別の必要がある場合に設置される委員会、の3種類があるが、いずれも置くかどうかは議会の自由とされている。

○執行機関

 地方自治法における執行機関とは、地方公共団体の事務を管理・執行する機関であって、自ら地方公共団体の意思を決定し外部に表示する権限を有するものを言い、行政組織法における行政庁の概念に類似する。地方公共団体には、執行機関として、法律の定めるところにより、長と行政委員会(行政委員)が置かれる。

(1)長

 都道府県の長は都道府県知事、市町村の長は市町村長である。いずれも、住民の直接選挙で選任され、任期は4年。長は、議会への議案の提出、予算の調製(=作成)及び執行、地方税の賦課徴収などの権限を有している。

(2)行政委員会(行政委員)=長から独立した地位と権限を有する執行機関であり、長への権力の集中を防止するために設けられたもの。複数の人間で構成される合議制の機関の場合は行政委員会、一人の人間で構成される独任制の機関の場合は行政委員と呼ばれる。行政委員会の例としては教育委員会、行政委員の例としては監査委員が挙げられる。

○議会と長の関係

 地方公共団体では、議会の議員も長も、共に住民により直接選挙されることから、首長主義が採用されていると言える。この首長主義のもとでは、議会遠さが互いに牽制しあって職務を行うことが期待される。例えば、議会と朝の間に意見の対立が生じた場合、長は、議会の議決や選挙を拒否して、サイドの議決を求めることができる。これを長の拒否権と言う。また、議会は長に対する不信任決議をすることができ、これに対して、長は議会を解散することができる。この点で、議会内閣制と同様の仕組みが採用されている。

○地域自治区

 近時、市町村合併が進み市町村の区域が広くなったことから、市町村の政治に住民の意見が反映されづらくなってきた。そこで、地方自治法の平成16年改正により、地方公共団体の区域をいくつかのブロックに分け、その地域のことはその地域の住民たちで決定することができると言う地域自治区の制度が導入された。なお、地域自治区には、簡単な窓口業務などを行う事務所を置かなければならず、また、地域自治区の事務に関して市町村長などから諮問を受ける地域協議会を置かなければならない。

◉住民の権利

○住民

 市町村の区域内に住所を有するものは、当該市町村及びこれを包括する都道府県の住民となる。その食い域内に住所を有していれば、自然人であるか法人であるかを問わず、また、国籍・年齢なども問われない。

○選挙

(1)選挙権=選挙において投票する権利のこと。議会の議員及び長の選挙権を持っているのは、日本国民たる年齢満18年以上のもので、引き続き3ヶ月以上その市区町村の区域内に住所を有するもの。平成28年6月19日より、選挙権年齢が満20歳位以上から満18歳以上に引き下げられている。

(2)被選挙権=公職に立候補する権利のこと。

○直接請求

 住民にとって身近な地方の政治は、国の政治よりも住民に大きな影響を及ぼす。そこで、地方自治法は、住民による監視と参加を可能にするため、地方の政治を直接コントロールすることができる制度を認めている。これを直接請求という。直接請求には、①条例の制定改廃(=改正・廃止)請求、②事務監査請求、③議会の解散請求、④議員・長・主要公務員の解職請求(リコール)の4種類がある。直接請求は、その地方公共団体の有権者の一定割合の署名を集め、この署名を請求先に提出することによってなされる。

○住民監査請求・住民訴訟

 住民は、直接請求の一種である事務監査請求をすることにより、地方公共団体の一般事務や財務会計の処理が適正に行われているかをチェックしてもらうことができる。もっとも、事務監査請求をするためには、選挙権を有するものの総数の50分の1以上の署名を集めなければならず、ややハードルが高い。そこで、地方自治法は、特に不正が行われやすい財務会計状の行為については、住民一人でも監査請求をすることができるとしている。これを住民監査請求という。さらに住民監査請求による監査の結果に不満がある場合には、裁判所に対して訴訟を提起することもできる。これを住民訴訟という。

○公の施設=地方公共団体が住民の福祉を増進する目的で住民に利用させるための施設のこと。住民は、公の施設の利用権を持っているため、地方公共団体は、正当な理由がない限り、住民が公の施設を利用することを拒んではならず、また、住民が公の施設を利用することについて、不当な差別的取扱いをしてはならない。なお、公の施設の設置・管理に関する事項は、法律又はこれに基づく精霊に特別の定めがあるものを除く他、条例で定めなければならない。

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