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備忘録〜時効から物件総論まで〜

◉時効

○時効とは何か
 時効とは、真の権利関係とは異なる事実状態が長期間継続した場合に、この事実状態に即して新たな権利関係を作り出す制度である。事実上権利者であるかのような状態を継続する人に権利を取得させるものを取得時効、権利を行使しない状態を継続する人の権利を消滅させるものを消滅時効という。

○時効の効力
(1)発生時期
 時効の効力は、その起算日に遡って発生する。
(2)時効の援用
 時効の援用とは、時効の利益を受ける旨の意思表示(=自分が欲している効果を外部に表示すること)のこと。時効の完成に必要な期間が経過しても、直ちに時効の効力が発生することになるわけではなく、当事者が援用しなければ時効の効力は発生しない。この趣旨は、時効の利益を受けることを潔しとしないと当事者の意思を考慮する点にある。
(3)時効の利益の放棄
 時効の利益の放棄とは、時効の援用と反対に、時効の利益を受けない旨の意思表示をすること。時効の利益は、あらかじめ放棄することができない。この趣旨は、高利貸しなどによって無理やり時効の利益を放棄させられることを防止する点にある。

○時効の中断・停止
(1)時効の中断
 時効の中断とは、時効期間が振り出しに戻る(ゼロになる)こと。この時期の中断が生じる事由には、①請求(=裁判所が関与する形で権利を主張すること)、②差押え・仮押さえ・仮処分(=権利を強制的に実現すること(差押え)、または権利を保全するために暫定的な措置をとること(仮押さえ・仮処分))、③承認(=権利の存在を知っている旨を表示すること)の3種類がある。
(2)時効の停止
 時効の停止とは、天災などにより債権者が権利を行使することができない状態になった場合に、時効の進行が一時的にストップすること。

○取得時効
 取得時効には、所有権(=自分の持っているものを自由に使用・収益・処分する権利)の取得時効と、所有権以外の財産権の取得時効の2種類がある。
(1)所有権の取得時効
 所有権の取得時効の要件は、①所有の意思を持って、②平穏に、かつ、公然と、③他人の物を占有し、④時効期間を経過したこと。④は占有を始めた時に他人のものであることを過失なく知らなかった場合(善意無過失)は10年間、それ以外の場合は20年間。民法上の「善意」とは知らないことを、「悪意」とは知っていることを意味し、日常使われる「善意」「悪意」とは意味が違う点に注意。
(2)所有権以外の財産権の取得時効
 所有権以外の財産権の取得時効の要件は、①自己のためにする意思を持って、②平穏に、かつ、公然と、③他人の財産権を行使し、④時効期間を経過したこと。時効期間については、所有権の取得時効の場合と同様に、善意無過失の場合は10年、それ以外の場合は20年。

○消滅時効
 消滅時効は、権利を行使することができる時から進行する。例えば、お金を貸して1年後に返してもらう約束をした場合、お金を貸した時ではなく、お金を貸した1年後から消滅時効が進行する。債権=10年、債権・所有権以外の財産権=20年、所有権=消滅時効にかからない。

◉物権総論

○物権とは何か
(1)一物一権主義
 物権とは、土地や建物などの一定のものを支配して利益を受ける権利のこと。この物権は、同一のものについて同一内容の物権は複数成立しないという排他性を有している。これを一物一権主義という。
(2)物権法定主義
 物権は排他性を有するとても強い権利のため、国民が勝手に物件を作ってしまうと混乱が生じる。そこで、物権は法律に定めるものの他は創設できないとされている。これを物権法定主義という。
(3)物権の種類
 物権は、現実にものを支配しているという事実状態(占有)に基づく権利である占有権と、占有を適法なものとする権利である本権に大きく分けることができる。本権は、自分の持っているものを自由に使用・収益・処分する権利である所有権と、使用・収益・処分のうちいずれかが制限されている制限物件に分けることができる。制限物権は、他人の持っているものを使用・収益する権利(処分債権の担保のために処分する権利(しよう・収益権限が制限されている)である担保物権に分けることができる。

○物権的請求権
 物権的請求権とは、物権の円満な支配状態が妨害されまたは妨害される恐れがある場合に、その物権を持っている人が妨害の排除または予防のために、一定の行為をすることまたはしないことを請求しうる権利のこと。物権的請求権には、①返還請求権(=目的物の占有を喪失した場合に、法律上の正当な根拠なくしてものを占有する人に対して、その返還を請求する権利)、②妨害排除請求権(=物権内容の実現に妨害がある場合に、妨害をしている人に対して、その妨害の排除を請求する権利)、③妨害予防請求権(=物件に対する妨害が将来発生する危険がある場合に、それを防止しうる地位にある人に対して、その帽子を請求する権利)の3種類がある。

○物件変動
(1)物件変動総論
①物件変動とは何か
 物件変動とは、物権の発生・変更・消滅のこと。例えば、AがBに対して自分の所有する土地を売ったことによって、土地の所有権がAからBに移転した場合など。
②物権変動の成立要件
 物権変動は、当事者の意思表示のみによって効力が生じ、その成立要件として他の形式(登記・引渡しなど)は要求されない。これを意思主義という。契約による物権変動の場合、特約(=法律の規定と異なる内容の当事者間における約束)がない限り、契約が成立した時点で物権変動が生じる。
(2)不動産物権変動
 民法は、不動産に関する物権の得喪(=取得・喪失のこと)及び変更は、その登記(=一定の事項を広く社会に工事するために公開された帳簿に記載すること)、土地を買ったものを主張することができないとしている。不動産物権変動の対抗要件(=成立した一定の事項を第三者などに対して主張するための要件)は登記である。
(3)動産物権変動
①対抗要件
 動産(例:宝石や絵画など)の物権変動の場合、対抗要件となるのは引渡しである。動産は不動産と異なり取引が頻繁に行われるため、登記のような方法をとることは技術的に困難なため。引渡しには、①現実の引渡し(=現実になされる引渡し)、②簡易の引渡し(=譲受人が既に目的物を所持している場合に、占有権移転の合意のみによってなされる引渡し)、③占有改定(=譲受人が目的物の所持を継続する場合に、譲受人が譲渡人を介して代理占有する旨の合意によって占有権を移転する方法)、④指図による占有移転(=関節占有者が第三者との合意及び直接占有者への指図によって、直接占有者に所持させたまま第三者に占有者を移転する方法)の4種類がある。
②即時取得
 ①取引行為によって、②平穏に、かつ公然と、③動産の占有を始めたものは、④取引行為の相手方が無権利者であることを過失なく知らなかった時は、その動産の権利を取得することができるとされている。これを即時取得という。

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