見出し画像

備忘録〜不利益処分から行政不服審査総則まで〜

◉不利益処分

○不利益処分とは=行政庁が、法令に基づき、特定の者を名宛人として、直接に、これに義務を課し、またはその権利を制限する処分のこと。ただし、申請により求められた許認可等を拒否する処分(申請拒否処分)は、申請者の権利を制限する処分であるにもかかわらず、不利益処分に当たらないとされている。なぜなら、申請拒否処分は、「申請に対する処分」の規定により処理されるため。

○処分基準

 不利益処分をするかどうかを行政庁の自由に委ねると、不公平な処分がなされる恐れがあるため、審査基準の場合と同様に、不利益処分をするかどうかまたはどのような不利益処分とするかについてその法令の定めに従って判断するために必要とされる基準(処分基準)を定め、これを公にしておく方が望ましいように思える。しかし、処分基準の場合、不利益処分がなされる違反事例が明らかになることで、反対に許される右岸事例も明らかになってしまい、帰って違反行為を助長する恐れがある。行政庁は、処分基準を定め、かつ、これを公にしておくよう努めなければならないとされ、処分基準の設定・公開については、審査基準の場合と異なり、努力義務にとどめられている。

○理由の提示

 行政庁は、不利益処分をする場合は、その名宛人に対し、同時に、当該処分の理由を示さなければならないとされている。これは、行政庁の判断を慎重にさせるとともに、不利益処分の名宛人がのちにその不利益処分を不服として争う場合の情報を提供するため。

○意見陳述手続

 申請拒否処分の場合、申請者は申請が認められないという消極的な不利益があるに過ぎないが、不利益処分の場合、名宛人の積極的な不利益を受けることにあるため、名宛人の言い分を聞き、防御の機会を与えることが必要であると言える。そこで、行政庁は、不利益処分をしようとする場合には、当該不利益処分の名宛人について、意見陳述のための手続きを執らなければなければならないとされている。意見陳述のための手続きは、処分が与える不利益の程度に応じて、2つに分かれている。まず、不利益の程度が重い不利益処分をする場合、名宛人が期日に出頭して意見を述べるという裁判のような手厚い手続き(聴聞)が執られている。これに対して、不利益の程度が軽い不利益処分をする場合、名宛人が書面に言い分を書いて提出し行政庁がこれに目を通すというシンプルな手続き(弁明の機会の付与)が執られる。

(1)聴聞

 まず、行政庁は、不利益処分の名宛人に対して、予定される不利益処分の内容などを書面で通知する。これは、名宛人が期日に出頭して意見を述べるための準備をさせるもの。次に、通知を受けた名宛人は、期日に指定された場所に出頭して、主宰者(=弔問の運営を行う人)の下で審理を受ける。主宰者は、裁判のような役割を果たすことになる。審理が終わると、主宰者は、弔問の経過を記載した聴聞調書と、自分の意見を記載した報告書を作成し、行政庁に提出する。そして行政庁は、この聴聞調書や報告書に記載されたことを十分に参酌して、不利益処分をするかどうかの決定をする。

(2)弁明の機会の付与

 弁明の機会の付与においても、弔問の場合と同様、行政庁は、不利益処分の名宛人に対して、予定される不利益処分の内容などを書面で通知する。次に、通知を受けた名宛人は、言い分を記載した書面(弁明書)を行政庁に提出する。行政庁は、提出された弁明書を参考にしつつ、不利益処分をするかどうかの決定をする。

◉行政不服審査総則

○行政救済法の全体像

 国や地方公共団体の行政作用により国民の権利が侵害された場合に、国民の救済を図る方法には、①行政作用それ自体について争い、その行政作用をなかったことにしてもらう争訟による救済と、②行政作用それ自体について争わないものの、行政作用によって生じた損害を金銭で穴埋めしてもらう金銭による救済の2つがある。

(1)争訟による救済

 争訟による救済には、行政機関自身に対して救済を求める行政不服申し立てと、裁判所に対して救済を求める行政事件争訟という2つの制度がある。そして、行政不服申立ての手続については行政不服審査法が、行政事件訴訟の手続については行政事件訴訟法がそれぞれ規定する。この2つの制度は、法律に特別の規定がなければ、好きな方を選択することができる(自由選択主義)。

(2)金銭による救済

 金銭による救済には、違法な行政作用により生じた損害を金銭で穴埋めしてもらう国家賠償と、適法な行政作用により生じた損失を金銭で穴埋めしてもらう損失補償という2つの制度がある。なお、国家賠償については、国家賠償法という法律が規定しているが、損失補償については、損失補償法というものは存在せず、個別の法律が規定している。

○行政不服審査法の目的

 行政不服審査法の目的規定は、行政手続法と異なり、「②目的」→「③究極の目的」と言った規定の仕方をせず、「②目的」を2つあげるという形式をとっている。行政不服審査法の目的は、国民の権利利益の救済と行政の適正な運営の確保の2つである。

○不服申立ての類型

(1)審査請求

 行政不服審査法は、不服申立ての類型を原則として審査請求に一本化している。審査請求には、①処分についての審査請求(=「処分」とは、行政庁の処分そのほか公権力の行使に当たる行為のこと。行政庁の処分に不服があるものは、当該処分についての審査請求をすることができる。)と、不作為についての審査請求(=「不作為」とは、法令に基づく申請に対してなんらの処分をもしないこと。法令に基づき行政庁に対して処分についての申請をした者は、当該申請から相当の期間が経過したにもかかわらず、行政庁の不作為がある場合には、当該不作為についての審査請求をすることができる)の2つがある。

(2)再調査の請求

 行政庁の処分につき処分庁(=処分をした行政庁)以外の行政庁に対して審査請求をすることができる場合において、法律に再調査の請求をすることができる胸の定めがあるときは、当該処分に不服がある者は、処分庁に対して再調査の請求をすることができる。国税に関する処分など大量に行われる処分の認定の当否を処分庁自身が見直す必要が大きい類型について、例外的に認められたもの。再調査の請求をするかどうかは自由に選択することができる。

(3)再審査請求

 行政庁の処分につき法律に再審査請求をすることができる旨の定めがある場合には、当該処分についての審査請求の裁決(=審査請求を受けた審査庁がなした判断)に不服がある者は、際審査請求をすることができる。審査請求の裁決に不服がある場合、さらに行政上の不服申し立てをするよりも、行政事件訴訟により裁判所に救済を求めた方が適切なため、際審査請求は、法律に特別の定めがある場合に限り、例外的に認められている。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?