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備忘録〜国家賠償法から地方公共団体の種類まで〜

◉国家賠償法
◯国家賠償法の全体像
(1)国家賠償制度成立の経緯
 大日本帝国憲法の下では、国家は過ちを犯さないと考えられており、国や地方公共団体の違法な行為により損害が発生したとしても、国民は損害賠償請求をすることはできないとされていた(国家無答責の原則)。もっとも、これではあまりに国民にとって不利益なため、日本国憲法は、17条という条文をおいて国や地方公共団体に対する損害賠償請求(国家賠償請求)を認め、これを受けて国家賠償法という法律が作られた。これにより、国家賠償制度が確立することとなった。
(2)国家賠償法の仕組み
 国家賠償法は、6条しかない法律。そして、人(公務員)の行為により生じた損害については1条が、物(公物)により生じた損害については2条が、それぞれ国家賠償請求を認めている。これにより、国や地方公共団体の違法な行為によって生じた損害については、大体の場合、金銭で穴埋めすることができる。なお、3〜6条は1条の場合と2条の場合に共通して適用されるルールを定めている。
◯国家賠償法1条
(1)要件
 国家賠償法1条1項は、①国または公共団体の②公権力の行使に当たる③公務員が、④その職務を行うについて、⑤故意(=わざと)又は過失(=不注意)によって、⑥違法に⑦他人に損害を加えたときは、国や公共団体がこれを賠償する責任を負うとしている。つまり、①〜⑦の条件をすべて満たした場合、国家賠償請求が認められる。なお、②公権力の行使とは、国や公共団体の活動から、純粋な指定経済作用と2条の対象となる公の営造物の設置・管理を除いた全てのものを意味すると広く捉えられている。
(2)免責自由
 国家賠償法1条1項には、使用者責任のような免責自由が規定されていない。したがって、国又は公共団体は、公務員の選任及びその公務員の監督について相当の注意をしていたとしても、国家賠償法1条1項に基づく損害賠償責任を負う。
(3)損害賠償責任の性質
 国家賠償法1条1項は、本来、賠償責任を負うべきなのは違法な行為をした公務員であるものの、公務員個人に支払い能力がないこともあるため、国や公共団体が公務員に代わって賠償責任を負担することを定めたものと考えられる(代位責任説)。もっとも、損害を与えた公務員が完全に保護されるというのもおかしな話で、公務員に故意又は重大な過失があった時には、国や公共団体は、公務員に対して、損害を賠償するにかかった費用の支払いを請求することができる(求償権)。
◯国家賠償法2条

 国家賠償法2条1項は、①道路・河川その他の公の公営物の、②設置または管理に瑕疵があったため、③他人に損害を生じたときは、国や公共団体がこれを賠償する責任を負うとしている。つまり、①〜③の条件を全て満たした場合、国家賠償請求が認められる。①公の公営物とは、好物と同じ意味であり、国や公共団体などの行政主体が、直接公共の目的のために使用させている有体物のこと。また、②瑕疵とは、通常備えていなければならない安全性を欠いていることを言う。なお、国家賠償法1条1項では、公務員の故意または過失が国家賠償請求の条件とされていたが、国家賠償法2条1項では、公物を設置・管理する公務員の故意または過失が条件とされていない。このように、故意または過失が条件とされていない損壊賠償責任のことを無過失責任という。

○国家賠償法3〜6条

(1)賠償責任者

 国家賠償法1条の場合、公務員を選任・監督している国や公共団体が、国家賠償法の2条の場合、公の営造物を設置・管理している国や公共団体が、それぞれ国家賠償責任を負うのが通常である。どこが公務員を選任・監督しているか、どこが公の営造物を設置・管理しているかが不明確な場合もあり、誰に対しても国家賠償請求をして良いかわからないという事態もあり得る。そこで、国家賠償法3条は、公務員の選任・監督または公の営造物の設置・管理にあたるものと公務員の給与負担者・公の営造物の費用負担者が異なる時は、給与負担者・費用負担者もまた損害賠償責任を負うこととして、請求先を広げている。

(2)他の法律の適用

 国家賠償責任については、国家賠償法に規定がない事項については民法の規定が適用されるが、(4条)、民放以外の他の法律に別段の規定がある場合は、その規定が適用される。つまり、①民放以外の他の法律→②国家賠償法→③民放の順で法律が適用されることになる。

(3)相互保証主義

 国家賠償法6条は、ある外国人の母国において日本人が被害者になったら国家賠償制度により救済される場合に限り、その外国人に日本の国家賠償法による救済を認めることとしている。これを相互保証主義という。

✳︎損失補償=国家賠償は、違法な行政作用により生じた損害を金銭で穴埋めしてもらう制度であるのに対し、損失補償は、適法な行政作用により生じた損失を金銭で穴埋めしてもらう制度。

◉地方公共団体の種類

○地方自治とは何か

 地方自治とは、国から独立した地方公共団体が、地方における政治を地域住民の意思に基づいて自主的に行うこと。日本国憲法は、第8章において地方自治を憲法上の制度として保証している。日本国憲法92条は、地方公共団体の組織及び運営に関する事項は、地方自治の本旨に基づいて、法律で定めることとしている。これを受けて地方自治の仕組みについて詳しく規定した法律が、地方自治法である。地方自治とは、①住民自治=地方における政治が住民の意思に基づいて行われること、②団体自治=地被王における政治が国から独立した団体に委ねられ、団体自らの意思と責任のもとで行われること、の2つを意味している。

○地方公共団体の種類

(1)普通地方公共団体=都道府県と市町村のこと。市町村は、基礎的な地方公共団体であり、その区域において住民に最も身近な団体として事務を行う。これに対して、都道府県は、市町村を内部ぬ含んでいるため、市町村に対する援助・連絡調整など広域的な観点から事務を行う。地方分権の推進のため、住民に身近な行政はできる限り住民にとっても身近な死に委ねるべきことから、都道府県が処理すべき事務であっても、一定の規模を有する死であれば処理することができるとされている。これを大都市に関する特例という。特例が認められている大都市には、①指定都市=政令で指定する人口50万人以上の市、②中核市=政令で指定する人口20万人以上の市、の2種類がある。

(2)特別地方公共団体=普通地方公共団体だけでは十分に処理できない事務を処理するために、特別に設置された地方公共団体のこと。特別地方公共団体には、①特別区=東京23区のことであり、実質的には市町村と同様の地方公共団体のこと、②地方公共団体の組合=複数の地方公共団体が事務を共同で処理するために設置する団体のこと。組合は、一部事務組合=普通地方公共団体(市町村、都道府県)及び特別区がその事務の一部を共同して処理するために設置する団体、広域連合=広域にわたる総合的な計画を作成し、必要な連絡調整を図ったり、事務の一部を広域にわたり総合的・計画的に処理するために設置する団体、の2種類に分類される。③財産区=市町村または特別区の一部が財産を有している場合に、その管理や処分を目的として設置される団体のこと。の3種類がある。

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