2024年1月に見た映画の話

作品本編の内容にも言及しますのでご注意ください。


『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』

 ある有力氏族の長の死をきっかけに哭倉村に足を踏み入れた水木は妻を探す鬼太郎の父と出会い、そこで起こる奇怪な事件に巻き込まれていく…。その黒幕は死んだと思われた一族の長だったわけだが、舞台は昭和31年戦後復興の真っただ中。日本を復興させるぞというギラギラした熱意がどこかで転換し、日本を私が導くんだという歪んだ欲望になったことで悲劇が起こってしまった。結果元凶は人間ということになるんだけど、裏打ちのある悪という感じがしてそこは好みだった。
 妖怪の存在を初めて目にした水木に「片目を閉じたくらいがちょうど良い」と語る鬼太郎の父ことゲゲ郎が、ラスト人間の世に解き放たれようとする凶骨を抑え込もうとする場面で「お前(水木)の未来を見てみたくなった」と叫ぶんだけど、普段顔にかかっている前髪がぶわっとなって両目が見えるようになってるの良き~。
 最後時代が現代に戻り、凶骨と化したトキちゃんに世の中はまだ貧しいと語る目玉親父の言葉が切ない…。いじめやブラック企業など社会風刺を描いてきた令和アニメ版鬼太郎を総括したセリフにもなっていて、アニメの延長線上にある劇場版だったんだと感じた。

『ゴールデンカムイ』

 やっぱり不安よな、漫画原作の実写映画化は。そんな不安を払しょくしてくれたのが冒頭日露戦争で大立ち回りをする杉本演じる山崎賢人さんの「俺は不死身の杉本だ!」のシャウト。シャウトというより吠えるって感じで迫力あってドスが効いててよかった。
 あれだけ長い原作をどこまで映像化するか気になったが、第七師団から杉本を救出するまで。杉本がどうしてそこまで金塊に執着するのかをラストシーンに持ってくる再構成の仕方も完成度高いなと思った。
 ご飯食べるところはギャグシーンで、シリアスがベースで映画館という場所的雰囲気もあって素直に笑いづらいところだけど、金カム語るうえで外せない要素だと思うのでやってくれてよかった。

『カラオケ行こ!』

 思い出し笑いポイントが多すぎて危険。最初から雰囲気がコメディ調だと映画館でも気軽に笑えるのでいいなあ。
 中学生の聡実くんが歌ヘタなヤクザたちに容赦ないツッコミを浴びせていくのが痛快。ヘタと切り捨てられながらも紅を歌い続ける狂児さんかわいい。この狂児さん演じる綾野剛さんがすごくよくて、ダウナーな雰囲気でお茶目。いないだろ、こんなヤーさん…。
 歌ヘタなヤクザが何とか危機を乗り越えようとする話だけど、実は聡実くんも変声期を迎えて合唱部でのソプラノパートが思うように歌えなくなったという悩みを抱えている。コンクールでも成績が振るわないところ、あまりやる気のない顧問がその場しのぎで言った「ラブが足りなかった」という言葉が後半重要になってくる。技術は足りなくても思いっきり気持ちを込めて歌う聡実くんに涙。二人の心の距離の縮まり方も見ていてすごく好きだった。

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