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『伝染るんです。①』(文庫版) P8右〜十代、愛の食欲〜

 愛しているから。愛しているから、十代だから、無尽蔵に唾液が出せる。あなたが欲しいわけじゃない。私はあなたの体の中に留まっていたい。食欲。排泄物として世に送り出されるとしても。一時的にあなたの体の一部になれるのなら。気持ちいい。だって十代だから。十代の私の体の一部が、あなたの十代の体の一時期を駆け巡って、あなたの骨となり、肉となり、心の弾みとなって、瑞々しい女体が放つ感化の光に磨きを掛けて、男たちをしどろもどろの餓鬼にする。快感。私たちのこの十代は、実は無限に長い。あなたは知らない。私はあなたという存在の内部で、あなたの一部として無限に溶ける。肉体は精神との繋がりが強く、精神は肉体に宿るらしい。あなたの中の私の一部はあなたの精神の拠り所になって、あなたの十代に使役される。無限の使役。無限の奴隷。無限のあなたと無限の快感。愛しているから。十代のあなたを。食欲みたいな気分で。だって十代だから。

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