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フリーランスを起用する際の注意点(シリーズ:企業によるフリーランス起用のアレコレ③)

かつて「フリーランスの営業職」に関するメディアの編集長をしていた経験があり、「企業がフリーランスを起用する際の様々な情報」についてそれなりに知っています。

先日ある方から「その話、詳しく聞きたい」と言われ、「そんな情報にも興味を持ってくれる人がいるんだな」と驚いた経験から、ブログでシリーズ化してまとめてみようと思いました。

シリーズの第3回(今回)は、フリーランスを起用する際の注意点をテーマにしました。

第2回はこちらから読めます。

「即戦力になる」は幻想

人材を紹介するサービス等でよく「即戦力人材」といった言葉が用いられているのをみかけます。フリーランスを起用する文脈においても「即戦力」という単語は使われます。

確かに、知見や知識、技術、経験があるという意味では、未経験者をゼロから育てるのとはわけが違いますから、ジョインしてから戦力になるまでの時間は短いでしょう。しかし、即戦力になる(ジョインした次の日からバリバリ働ける、ジョインした月からガッツリ成果を出せる etc)というのは幻影です。

ジョインするということは、クライアント社のカルチャーを吸収してそこに合わせた行動ができるようになるということで、これにはそれなりの時間は必要ですし(人によってその長さに違いはありますが)、カルチャーに馴染めずに活躍できず終わってしまう可能性だってゼロではありません。

そういう意味では、ジョイン後1か月程度はカルチャーを内面化する期間として考え、成果を期待するのはそれ以降というふうに考えるのがいいでしょう。

ひとつ例を紹介しながら申し上げます。ライターの業務を行っているフリーランスにおいては、ライティングスキルをご提供するということはどのクライアントに対しても共通しています。でも、どういう文章を書くことが喜ばれるのか(エッセーのような軽妙な文章なのか、学術書のような重厚な文章なのか等)はクライアントによって違います。まさに「お好み」が異なるのです。そのお好みの加減を見極めるのに少し時間がかかり、何度かNGテイクの文章を提出する場合もあるでしょう。

ある大手企業で勤務していた方は、その企業で何度も社内表彰を受けるほどの優秀なワーカーでした。その方は「この会社でこれだけ賞をもらったんだから、自分はフリーになってもどこでもやっていける」と思って独立をしたそうですが、その方は「独立に失敗した」と言っていました。曰く「独立前の大手のやり方しか知らなくて、顧客のやり方に馴染めなかった。馴染まなきゃいけないということすら知らなかった…」と言っていました。フリーランスのワーカーにとって必須のスキルのひとつは、いかに早く顧客のお好みに合わせられるようになるかです。

スキルのあるフリーランスほど、フルコミットはしない

フリーランスのワーカーは複数の案件を同時進行でこなします。例えば「報酬額の大きい案件1本と、報酬額の中くらいまたは小さい案件を数本」という考え方で対応したりします。1つの案件にフルコミット(=1日8時間×週5日働く)することは、できるフリーランスであればあるほど、ありません。それが、その会社で従業員として働く人とフリーランスの働き方の違いです。

「うちの案件にフルコミットしてよ!」と言いたくなる気持ちは分かりますが、その募集の仕方ではできるフリーランスはまず来ないと思われ、フルコミットさせるならば雇用で採れる人を探したほうがいいでしょう。優秀なフリーランスに仕事を頼みたければ、複数案件の同時進行を許容するということが必要です。

スキルのあるフリーランスほど、クライアントを見ている

商品・サービスはワーカー側に、お金はクライアント側に、あります。それを交換するのが業務委託契約です。日本の商習慣として、お金を持っていて仕事を発注する側が偉いという無意識の構造になりがちですが、フリーランスに仕事を頼む場合には、業務委託契約を通じて対等なパートナー関係を築くのであると考えることが必要です。

スキルのあるフリーランスほど引く手あまたなため、ひとつの案件が切れても次の案件が舞い込みます。「このお客さん、お付き合いするのが大変そうだな」と思われると契約を断られてしまうことがあります。

長らく付き合うことで確実に頼れるパートナーとなれる

上記の通り、フリーランスは即戦力ではないかもしれませんが、長く付き合うことで確実に頼れるパートナーとなります。まずは働き方や業務の範囲を決めるところから相談して、少しずつ関係性を築いてみてください。

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