女 ひとり 家を買う〜リフォーム超奮闘編④〜
なんと今回は二本立て、しかも画像盛りだくさん版です。
なぜ二本立てかは最後に分かる仕様。
犬を揉みながら書いてます。ちょっとでも動くと「どこいくの!?」となる甘えん坊タイムな犬。ネコリアンは先程私の上を飛んでどっか行きました。チリンチリンと首につけた鈴の音だけが頼り。あれがなかったら家の中にいるネコリアンを見つけられる自信がない。
さて、私を乗せたフック船長の船はおおむね順調に進んでいた。
途中「資材の入荷待ちです」とかはあったりしたけど、このご時世なので仕方がない。トイレも不足しているらしいが、幸か不幸か我が新居は簡易水洗なので普通に在庫があった。
私は休みの度にせっせとお菓子を用意しては作業員さん達へ差し入れをし、トンカントンカン音がする新居を犬と共に眺めていた。
「……広いですね」
「広くなりましたね〜!」
離れの解体が終わって細かい部分の打ち合わせに来た私とフック船長の会話である。
およそ6坪の離れと1坪の農作業用倉庫(物件情報に牛小屋と書かれていたやつ)。登った事はないけど離れは屋根裏的な二階が造られていたので高さも結構あった。それが全て取っ払われた状態を前に私とフック船長は感嘆の声を漏らしていた。
いやぁ、広いなぁ。
そりゃ東京ドームとかよりは全然狭いけど。私が一人で管理しながら生活していく分には充分過ぎるほどだ。果樹を植えて、畑を作って、犬が遊べる場もあって、その上でピザ窯も作れる。この辺の庭造りは、引っ越ししてからのんびりやっていく予定です。です。
「船長なら、どこにピザ窯作ります?」
「僕ですか?う〜ん!ここ…、いや、ここ…!!ここですね!」
そこにしよう。
さりげなくプロから見たベストな位置を探る企み。
この日決めたのは台所と水回りの廊下の床の柄だった。あと土間の壁と屋根の見本を預かって後日連絡する流れ。
季節は桜を見送り、新緑の風の頃になっていた。
新居は一見すると離れがなくなっただけの状態に見えたが、床には木材が置かれ、一面養生も張られており、耐震工事をした箇所には何やらボードが貼られていた。
「そういえばジョーさん、耐震部以外の壁はご自身で塗られるとおっしゃってましたね」
「はい。漆喰を塗る予定です」
実際は壁どころではない。
予算の都合により私は、
・壁の漆喰化
・柱の色替え
・網戸張り替え
・犬猫の脱走対策扉&壁製作
・フスマ
・台所
・天井
・洗面所
・トイレ(タンク以外の内装)
を自力で仕上げなければならないのである。ウェーイ!
「DIYお好きなんですね✨」
「手元に10億円あればやってないです」
「あ、はい。ではオススメの漆喰を紹介します」
フック船長は私のDIY相談に真摯に答えてくれた。ちょっと高いけどメンテ無しで汚れにくいという種類の漆喰を買い、道具も揃えた。ていうかコテとバケツを貸してくれた。なんて良い人だ。
ちなみに私はもちろん、今までの人生で漆喰とか塗った事ない。なので「ウマクヌレ〜ル」みたいな簡単なやつにしようかと思ってたんだけど、せっかくなので船長が一番オススメするやつにした。届いてから知ったんだけど、自分で混ぜるタイプだった。うぐぐ。
「床の養生はどうされます?」
「ビニールシートを全面にするつもりです」
「……でしたら、今のうちに塗られますか?しばらくは土間の建設になりますから内装出来ますよ?」
「いいんですか!?」
私は拝むようにして、その提案に飛びついた。養生の手間というのは、やった人なら分かると思うけど時間もお金もかかる。そこをカット出来るのは、非常にありがたい。
船長の好意に甘える形で、作業員さん達に混じってDIYに取り掛かる事になった。
とは言っても、リフォームの工程の都合もあるので出来るのは壁と柱のみだ。
私は『砂壁に簡単に漆喰を塗る方法』を調べ、材料を揃えた。
以下である。
あく止めシーラー 15kg
容器 複数
ハケ 複数
ローラー(いらなかった…)
細かい部分用の養生テープ 3個
使い捨てのビニール手袋 50枚入り一箱
軍手 10組
漆喰 20kg
後で捨ててもいい服 一揃い
そして柱用に安全性の高い塗料を探し、赤ちゃんのオモチャにも使える系のものを購入した。
下地となるシーラーは晴れの日に漆喰は雨の日に、という予定を立てて荷物を新居に運び込んだ。
順序としては柱を塗ってからシーラーを塗り、そして漆喰で仕上げていく。
柱は墨色。基本濃い色味が好きなのだ。
覚えてらっしゃるだろうか。
家を買うnoteの最初らへんで私が想像していた内装。大正浪漫。
亜麻仁油の塗料をクイックルワイパーのドライタイプみたいなのに付けて、モリモリ塗っていく。塗った後の布などを放置すると発火する恐れがあります、とか書いてて怖い。塗り終わったら水に浸けて捨てよう。
よいしょ。
よいしょ。
終わる気がしねぇ。
よいしょ。
よいしょ。
右腕の痛みと引き換えに大体塗り終えた。
次はシーラーだ。
ドロッとした液体で固まるとビニールみたいになる。これを塗っておかないと砂壁からアクが滲んで漆喰が凄く汚くなる。漆喰でなくても砂壁に何か塗る時はあった方がいいと思う。透明と白色があり、漆喰を塗る私は白を選んだ。
余談だが、アサヒペンさんから出てる砂壁用の塗料はシーラーなしでも大丈夫だった。私は調度品との兼ね合いもあって一部に聚楽色を使用したけど、朱とかめちゃくちゃ可愛いです。
で、シーラーを二度塗りしていく。
よいしょ。
よいしょ。
一軒分の壁やべえな……。
よいしょ。
よいしょ。
左腕も逝った。
よいしょ。
よいしょ。
ぬ、塗り終わった…シーラー……。
文章で書くとあっという間だけど、休みの日に出向いて毎回7〜8時間かけてます。塗料のにおいがあるので犬は連れて行かない。
シーラーを塗り終わったら、雨の日を見計らい漆喰作業だ。長い道のりであった。そして蓋を開けて、そこで始めて「これ混ぜないと駄目なやつでは…!?」と気付く。厚めのゴミ袋を2枚重ねて腕に巻いて、ゴリゴリ混ぜる。機械とかないし!30分くらいずっと混ぜていた。腕はもうボロボロだ。だがこれから大仕事が待っている。
「そぉい!!」
ペイッと漆喰を容器に乗せて、コテですくって伸ばしていく。伸ばして……、コテ、むっっず!!!せっかく借りたのに、むっっず!!!!
食器洗いのスポンジでいこう!!最終的に良い感じになればいいのだ!
よいしょ。
よいしょ。
飴を食べながら、よいしょ。
みんなは飴は舐めるタイプですか?
私は口に入れた瞬間に噛み砕きます。ガリガリバキバキ。
無心でやる。
よいしょ。
よいしょ。
頑張れ、私。
理想のお家を造るのだ。
通い続け、塗り続け。
よいしょ。
よい、しょ。
「ぬ、塗り…終わった…漆喰……」
次は漆喰以外の所のペイントが待っている。
わぁぁぁぁぁぁぁぁぁ〜〜!!!!
よいしょ。
よいしょ。
寝室を藍色で塗っていく。
よいしょ。
よいしょ。
「ぬ、塗り終わった……」
次は梁だ。柿渋を塗る。
天井は同じく柿渋だが、タイムアウト(リフォームの工事予定)が迫ってきたとの事で後にした。
「いやぁ〜!頑張りましたね〜!!」
フック船長が褒めてくれる。やめてほしい。プロの目から見たら杜撰の一言だろうから、あまり見ないでほしい。
「あとは内装を仕上げて、完了検査をして、その後ガスを設置して完成となります」
「養生のおかげで助かりました。本当にありがとうございます」
さすがの私もヘトヘトになっていた。
だがまだまだやる事はあるし、内装を仕上げてもらっている間に今度は裏庭に畑を作る作業をしなければならない。
頑張れ、私。
🐕🐈🐕🐈
季節はさらに進み、初夏の日差しを感じる様になっていた。
家を買うと決め、売主さんと銀行で売買契約を交わしたあの日から、ちょうど一年。
同じ日に。
「こちらが最終見積もりと請求書になります」
私はフック船長から完成の書類を受け取っていた。
正確に言うと、受け取った直後に一番大事な犬猫脱走防止用の引き戸がなくなっていることに気付いて翌日付け直して貰ったんだけど。まぁ、その辺はTwitterに書いてたと思うので割愛します。
「お支払いの方はすぐに手配いたします」
「よろしくお願いします。しかし本当に良い家です。良かったですね」
「ありがとうございます。屋根の方も出来れば数年以内に軽い物に替えたいので、その時も是非お願いします」
「こちらこそ。シロアリのチェックもしたいので、また定期点検に伺わせていただきます」
ありがとうフック船長。内装リフォーム、耐震、不動産売買、シロアリ、屋根、全部出来るのマジ半端ねえな。犬も撫でてくれたし。
家の事で何かあったらこの先ここにお願いしよう。
フック船長や作業員の方達を見送った後の新居で、私は深呼吸した。
真新しい建材の香りがする。
さぁ、DIYの続きをしよう。
台所。
脱走防止戸。
網戸。
フスマ。
あの日、思い描いた未来の自分。
その答え合わせをする時が、来たのだ。
次回リフォーム超奮闘編最終回。
『帰りたかった自分の家』
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