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女ひとり家を買う

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まずは物件を買う。難所は多い。だが進め。女ひとり、両脇に犬と猫を抱えて。
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女 ひとり 家を買う①

女 ひとり 家を買う①

「物件はタイミングだ」

 昔の偉い人も言ったかもしれないが、とりあえず物件を購入した大体の人がそう口にしている。

 私はそれを全く信じていなかった。

 だって何年も何年も探して。それでも欲しい物件が見つからない。年齢の桁は超えてないけど、踏み台くらいは登ってしまったというのに。
 とは言え、私ことTwitterネーム「ジョー」サイドにも問題はあった。欲しい物件が漠然としていたのだ。

 突然

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女 ひとり 家を買う②

女 ひとり 家を買う②

 私は幼少よりなかなかに複雑な環境に身を置いてきた。もっとも生来ポジティブであるが故に「死ぬ事以外はかすり傷」と命の危険がなく生きてこれただけでも充分幸せであると感じている。
 私の事情を知る友人からは「自伝を書けば売れそう」と言われるが、私の子供時代の思い出は宗教にハマった母親に無理やり学校を休まされて信者達の集団生活に一人で修行として放り込まれた日々なので残念ながら売れないだろう。クソ長え変な

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女 ひとり 家を買う③

女 ひとり 家を買う③

 室内の空気はカラッとしていた。

 雪がほとんどない地方の季節的には当然と思われるかもしれないが、私がそう感じた理由は後程記載する。

 玄関で靴を脱ぎアマ新が用意してくれたスリッパを履いて、中に入る。玄関の段差がかなりある。もし購入となれば、犬の為に一段何か用意した方がいいだろう。
 内装は「和室」「和室」「和室」「和室」和室のオンパレード。
 そう、この物件は一般的に『古民家』と呼ばれるそれ

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女 ひとり 家を買う④

女 ひとり 家を買う④

「あの大きな岩、あそこまでが敷地だと聞いています」

 オラ先が指さしたのは川に向かって突き出した白い岩だった。林と接している大きな岩だ。遠目では分かりにくいが、おそらく川に降りることが出来るだろう位置にある。もし実際降りる事が出来れば、犬は楽しい夏を過ごすことが出来るだろう。
 夏の水辺には蛇がいる?今の我が家の周辺は気温が上がると一日一回は「ウェーーイ!✨」と道路を斜めに滑っていくマムシを見る

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女 ひとり 家を買う⑤

女 ひとり 家を買う⑤

 希望者が多く手を挙げている物件だからか、それとも別の理由があるのか。一度も「いかがですか?」といった意思を確認する言葉を口にしなかったオラ先は、私が購入したいと伝えると一瞬だけ驚いた顔をして、すぐにまた営業マンの顔になった。

「今日はお時間はありますか?」
「休みなので大丈夫です」
「確実に、購入されると?」
「売主さんが売ってくださるのなら」

 私とオラ先とのやりとりをアマ新がドキドキしな

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女 ひとり 家を買う⑥

女 ひとり 家を買う⑥

 銀行へローンの相談に行く日の朝、ジョー家では大事件が起こっていた。
 この事件に関しては家を買う事とあながち無関係でもない為そのうち話をしなければならないが、今はまだその時ではない。
 事件が起きた、とだけ記しておく。

 アマ新、オラ先との待ち合わせの時間は13時を予定していた。
 それなりに身なりを整え、家を出る。物件を見に行った時は足元が土かもしれない事を考え、ぼろいスニーカーとぼろい服で

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女 ひとり 家を買う⑦

女 ひとり 家を買う⑦

 銀行に必要なのは『信用』と『安定』だ。返せなくなる可能性のある高給な人間より、薄給でも確実に返せる見通しのある人間が優遇される。
 なので先に言っておくと私は高給取りではないし、偉い人でもない。むしろヒラもヒラ、末端ではないがヒラに入る。毎日社会の歯車として、コロナ禍の中クルクル必死に車輪を回している。とっとこ走るよジョー太郎。オラオラオラオラ!!
 なお後日、職場でイケオジすぎる上役に会った時

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女 ひとり 家を買う⑧

女 ひとり 家を買う⑧

 私は非常に忘れっぽいので、今回の件で必要な物や事を思い付いたらその場でスマホのメモ帳にリストとして書き残すようにしている。重要な手続きもあれば、買う予定の物品もある。その中の一つにベッドがあった。
 現在使用しているベッドはダブルサイズだが、実の所私とお餅(犬)とネコリアン(猫)が揃って寝るとかなり手狭なのである。犬は大きさ的にダブルの殆どの面積を占めるので私の寝るスペースがなくなるのは当たり前

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女 ひとり 家を買う⑨

女 ひとり 家を買う⑨

 忘備録がてら書き始めたこのnoteを読んで面白いと感じて下さってる方がいらっしゃる。ありがたいことです。
 物件の引き渡しまで書いた後は、リフォーム編、DIY編、源流水で暮らす👩‍🦰🐕🐈編にのんびり入っていく予定ですのでよろしくお願いします。
 それはそうと、私の隣でスヤスヤ眠る愛らしいお餅を見てくれ。

 ネコリアンロケットは家中を駆け回った後、一旦水を飲みに来てからまた遊びに行ったの

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女 ひとり 家を買う〜小話前編〜

女 ひとり 家を買う〜小話前編〜

 私のオタク知識によると、『走馬灯とは、生き残る為の手段を探して脳がフルバーストで働き、必死になって今までの人生経験を掘り起こしている状態』らしい。本当かどうかは知らない。だが説得力はある。

 月のない夜だった。
 私は幸いにも目が良いので、半月以上なら開けた視界を手に入れる事が出来る。
 でも、その日はわずかな月すら出ていなかった。

「オギャァァ!!」

 赤ちゃんとなった私、ベイビージョー

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女 ひとり 家を買う〜小話後編〜

女 ひとり 家を買う〜小話後編〜

 帰宅途中立ち寄ったスーパーで、牛挽肉が半額だった。ウキウキと購入し、帰宅後犬の散歩を済ませ畑へと向かう。
 畑は雑草やツタが生い茂り土もすっかり硬くなった私有地を、私が一人でせっせと開拓し一から作り上げたものだ。
 この日の目的は大根。秋に種を撒き、間引きがてら大根菜を収穫していた。今、冷たい冬の風にさらされ並んだ大根達は丸々と成長している。冬野菜は良い。虫害を気にしなくていいと言うのは最高であ

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女 ひとり 家を買う⑩

女 ひとり 家を買う⑩

 その日のネコリアンロケットは午前3時に発射された。30分程軌道に乗り、布団に着地し少し寝た後また発射されていった。
 私は転がされていくボールの音を聞きながら、「一緒に昼寝したからか…」と前日の自分の行動を少し悔やんだりなどした。ネコリアンはまだ1歳にもなっていない。おそらくあと何年かは健やかに発射される事だろう。
 でもそれで良いのだと思う。犬も幼い頃は非常にケチャケチャしていた。今のように部

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女 ひとり 家を買う11

女 ひとり 家を買う11

 ぴえん🥺
 ぴえん🥺

 でも人間とは、人生とはそんなもの。
 それでは聴いてください。
 ネコリアンの歌(作詞作曲ジョー)

 ウナナナーン
 ウナナナーン
 ウナウナウナウナ〜ン

 ウナナナーン
 ウナナナーン
 ウナウナウナ ウナン!

 この歌、一日50回くらい歌っている。
 
 さて三社での相見積もりを予定している私は、気持ちを切り替えて次なる業者を探す事にした。もちろんその合間

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女 ひとり 家を買う12

女 ひとり 家を買う12

 最近の悩みは、新居のベッドのサイズをクイーンにするかキングにするかである。
 今朝ネコリアンロケットが発射されるまで、私は「絶対に動かない」という強い意志を感じる犬と猫に左右を挟まれクロールの途中みたいな形で寝ていた。おかげで肩がバキバキになっている。
 私より重い犬はともかく、3.5キロしかない猫まで不動を貫くのはいかがなものか。なんで動かないの、猫ちゃぁん?
 ちょっとでも寄せようとすると「

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