記事に「#ネタバレ」タグがついています
記事の中で映画、ゲーム、漫画などのネタバレが含まれているかもしれません。気になるかたは注意してお読みください。
見出し画像

むつー卓の魅力をざっくりと語りたい

昨今YouTubeで見られるようになった『TRPG配信』。クトゥルフ神話TRPGをはじめ、さまざまなルール、さまざまなシナリオのTRPG配信が行われています。

そこで今回フォーカスしたいのが、ゲーム実況者兼TRPG配信者『むつー』さんがKP(キーパー、ゲームの進行役)として行うTRPG配信『むつー卓』です。

筆者はTRPGのリプレイ動画(TRPGをプレイした映像や音声にイラストなどを付けた動画の総称)は時々見ていましたが、TRPG配信というものをしっかり見るようになったきっかけはむつー卓でした。元は好きな配信者が参加するという理由で見ていましたが、むつー卓はかなり初心者プレイヤーや視聴者に対し分かりやすい配信のやり方になっていると思ったのです。今回はそれを自分なりにまとめ、お話ししていきます。

今回お話しする内容は、以下TRPGのシナリオのネタバレ、むつーさんのメンバー限定配信の内容(主に感想戦の内容)を含みます。ご留意の上閲覧ください。
・狂気山脈〜邪神の山嶺〜(まだら牛様作)
・誰がロックを殺すのか(角刈りジョニー様作)
・邂逅(むつー様作)
・Bye-Bye Summer Days(あべべん様作)

また、下記からは敬称を略させていただきます。ご了承ください。


1 豊富なスチル

むつー卓が他のTRPGセッションと大きく違うところを上げるなら、やはり豊富なスチル(動きのない静止画。ここでは一枚絵という意味とする)や立ち絵でしょう。

『狂気山脈〜邪神の山嶺〜』では山を登るために行うクライミングロールの際に、各PC(プレイキャラクター)やKPC(キーパープレイキャラクター。ゲームで言うところのNPC)が山肌を登るイラストが挟まります。視聴者はもちろん、プレイヤーもここでかなり盛り上がっています。毎回書き下ろしなのでとても豪華ですね。

初めてスチルが出たセッション。KPCの立ち絵もここが初出し。

ロックバンドを演じるシナリオ『誰がロックを殺すのか』ではキャライラストやスチルの他に、バンドロゴを作成しています。これがあることで、プレイヤーはかなりバンドやキャラクターに対して愛着を持つようになっています。視聴者目線でも、このバンドがまるで実在するかのようなワクワク感を持つことができます。(セッションによってはグッズ化もしているので、より印象に残りやすいと思います。)

むつー卓誰ロク第三陣。ラババンとステッカーが販売されていた。

スチルによって湧き上がる感情や熱量は計り知れません。
上記の『誰がロックを殺すのか』では終盤の戦闘シーンにスチルが挟まるのですが、このスチルに関してむつーさんは「汗」をいっぱい描くように絵師さんに頼んでいるそうです。
実際に見ていただけるとわかるのですが、どのスチルも皆必死な顔で楽器をかき鳴らし汗を流しています。熱い雰囲気が画面越しでも届いてくるようです。

誰ロク第一陣。このセッションはキャラクター一人一人にスチルが用意されていた。豪華。

上記のように、スチルがあることでその場の様子が可視化され、想像に任せるよりもはっきりと雰囲気が伝わります。それによってプレイヤーだけでなく、視聴者の感情も昂るのです。もちろんプレイヤーの言葉から視聴者がその様子を想像することの良さもありますが、真正面から伝えられたモノはかなりその場の空気を感じられます。

2 ロールプレイがエグい

エグいです(2回目)

エグいと言っても悪い意味ではありません。没入感があるロールプレイ、とでも言いましょうか。シナリオの世界を引き立たせるKPCをさらに魅力的にするのがむつーさんのロールプレイだと思います。

むつーさんのロールプレイを聞いていても、声自体がガラッと変わった!という印象はあまりありません。KPとしての声とKPCとしての声、多少違いはあれど目を瞑って聞けばむつーさんだとすぐ認識できるでしょう。
しかし、まとっている雰囲気が違うのです。特に女性、子供を演じている時はガラッと変わります。
これはプレイヤーからよく言われることなのですが、「女性KPC好きになっちゃった、惚れた」という感想が出るくらい聞いてて違和感がないのです。声は並の男性よりも低めのはずなのに。立ち絵などを使い想像力で補っているにしても、好きになるまで虜にするのはなかなかできないことでしょう。
実際に筆者もむつーさん演じる女性KPCに恋をしてばかりなのでとてもわかります。

キーパリングには人によって違いはありますが、むつーさんは存分にロールプレイをするKPなので KPCものびのびと生きているように感じます。

むつーさん作のTRPGシナリオ『邂逅(かいこう)』では、PCに親しいKPCを作成します。現在までの配信の一部を抜粋すると、兄弟姉妹、恋人、家族などなど…さまざまな年齢、性別、関係のKPCがいます。その中でそれぞれの家庭の描写が挟まりますが、そのシーンは恐らくシナリオの半分を担うほど長い時間存在します。それをキーパリングしつつ演じます。すごい。

むつー卓邂逅第四陣。初の女性プレイヤー。この二人を愛してほしい。

演じ分けと言えば『Bye-Bye Summer Days(バイバイサマーデイズ)』は外せないでしょう。
このシナリオは他シナリオに比べてもKPCの人数が多く、性別や性格、年齢もバラバラです。それをむつーさんは一人で演じ分けます。コメントで「むつーさんって何人いるんですか?」と聞かれるほど視聴者から見てもわかりやすい演じ分けなので、立ち絵と相まってとても見入ってしまいます。

リアル高校生達が駆け抜ける一夏の物語。リアタイした時はエモくて心臓鳴りっぱなしだった。

ロールプレイとは少しズレるような気もしますが、個人的に好きな『#オレンジ山脈』にて起きたお話をします。

!セッション後半のネタバレあり!




きっかけはキャラクターの一人、道桐拓(みちきりひらく、PL.星乃歌カズ)の発言でした。彼はハンドアウト(シナリオ側から指定されている設定のようなもの)の目的の他に「彼女を探しに行く」という隠れた目的を持っていました。それを聞いた視聴者はとても驚きました。「何それ聞いてない!」と。
しかし驚いたのは視聴者だけではありません。KPのむつーさんも驚いていました。なぜならこの彼女の話は表に出ていないキャラクター設定の中にも書かれていなかったからです。そしてそれから数時間後、イベントが挟まります。一切用意されていない道桐拓の彼女のイベントが。
むつーさんはこのイベントをアドリブで乗り切りました。数分間の彼女の独白。とても急遽考えたクオリティには思えませんでした。

切り替えからのアドリブが凄まじかったです。このロールの柔軟さもまた、むつー卓の良さなのかもしれません。

3 毎回解説が入る

むつー卓は他卓に比べてもTRPGの経験が全くない、もしくはほとんどない初心者が参加することがあります。初心者が参加するセッションには自然とTRPGを知らない、見たことのない視聴者がついてくるモノです。

配信の冒頭を見ていただければわかりますが、むつーさんは視聴者向けに『クトゥルフ神話TRPGとは?』という基礎の基礎をお話ししてくれます。何も知らない状態で見ても「こんな感じなんだ」とイメージが付きやすくなります。
それ以外にも、SAN値チェックや不定の狂気についての解説も挟まります。なかなかTRPGに触れていないと何が何だかわからないモノばかりですが、「成功したらこうなります」「失敗するとヤバい量(SAN値が)減ります」などと視聴者、PLに伝えてくれるのでドキドキ感の共有にもなります。伝えてくれるからこそわからないで見るより面白く感じられますし、SAN値チェックの際KPから伝えられる「祈ってください」と言う言葉に重みが出てくるのです。

4 すごく褒めてくれる

これは割と配信上どの卓でもありがちですが、それでもオススメしたいのでさせてください。

ダイスを振るたびむつーさんはめちゃくちゃ反応してくれます。成功した時には「えらい!」「すごい!」「素晴らしい!」と褒めてくれます。失敗した時にはプレイヤーと一緒に悔しがってくれます。見てて気持ちいいくらいに感情を出してくれるので、こっちも釣られてしまうくらいです。

KPは『敵』ではなく『味方』とはよく言いますが、本当に一緒に物語を紡いでいくようで見ていてとても楽しいです。

4.5 神として全力で戦う

上記で味方と話しておいてなんですが、蛇足としてKPむつーの好きな所の一つに『邪神のロールになるとテンションが上がり殺意が剥き出しになる所』を上げたいと思います。
誰ロク第四陣『#声が良い誰ロク』にて、邪神の攻撃ロールの際いきいきとし始めたのには笑ってしまいました。感想戦でプレイヤーに「ウキウキで戦闘する」「声の上がり方がわかりやすい」「ダメージロールで一日の栄養素獲得してる」と言われた時もまた笑いました。これが鬼!悪魔!むつー!と言われる所以でしょうか。

この朝最高!!!ロールめちゃくちゃすごかった。映画を見てるみたいだった。エモすぎ。

5 配信頻度が多い(時がある)

むつーさんのTRPG配信の頻度は「1か100か」と言われており、その100のパターンになると本当に短いです。

2019年年末に初陣を切ったシナリオ『沼男(スワンプマン)は誰だ?』ですが、第一陣の『我々の奇妙な日常』から第二陣の『ワイテ沼』までの間はたった一週間弱しか空いていません。このシナリオはかなり引きずる内容だったので、視聴者はまだ余韻が抜け切っていない中でワイテ沼を視聴することとなりました。そして案の定沼底に沈んでいきました。

リアルINT高めの初心者四人がまっすぐぶつかった物語。きっと彼らは本当にこの世界に生きていた。

しかしこれは、次なる地獄の序章に過ぎませんでした。
件の地獄は第五陣『ゲーム実況者沼』と第六陣『ほしむす沼』。なんとこの二つ、同時告知されたのです。しかも放送と放送の間はニ日。スパンが短すぎます。

笑って泣けるとてもいいセッション。PLによるライブドローイング付き。

時は過ぎ、夏。
再び告知がされました。『ワイサマいち』『ワイサマに』というBye-Bye Summer Daysのセッション二本です。(なおこちらも同時告知)

このセッションを皮きりに、8週間連続でTRPGの配信が行われました。どういうことなの。 KP本人は「大体火星より(※)だから回すカロリー低い」と言っていましたが、約二ヶ月毎週TRPGのKPする事はカロリー高くないんでしょうか…?

いろんなシナリオ、いろんなプレイヤーのロールを短期間で見られるのは贅沢なことですが、シリアスシナリオやエモエモ展開が来た場合視聴者の心が持たなくなることもしばしば。
どうか体調にだけは気をつけて毎週配信してほしいです。

※…火星より
コウノスケ様作のクトゥルフ神話TRPGシナリオ。平均配信時間が3〜4時間だが、濃密なコズミックホラーシナリオとなっている。


6 まとめ

ここまで見ていただきありがとうございました。
こう言ったものを書くのは初めてなので拙い部分もあったと思います。それでもこの場を使ってむつー卓の良さを伝えられて個人的にはとても満足しています。ぜひ下記の再生リストから気になったセッションを覗いてみてください。

7 おまけ。個人的に好きなセッション

好きなセッションをまとめているだけです。

シナリオがすごく考えさせられて、プレイヤーが一生懸命紡いだ物語。このシナリオを初見で見る方はぜひこのセッションの感想戦(メン限)もセットで見てほしい。TRPGで初めて号泣したセッション。

こちらの沼男はぜひ、他のセッションを見た後に見てほしい。最後の選択まで見届けてほしい、優しく切なく光る人達のセッション。
タグの元ネタにもなった別企画「ほしむすび」もよろしくお願いします。

カタシロ第四陣。哲学が好きなプレイヤーがプレイしたことによる化学反応が前面に出たシナリオ。KPむつーが唸るほどの回答を出した男は、迫られた選択にどう答えるのか。60分の対話シナリオの深みにハマってほしい。
このセッションは相手方(ワイテルズ)のメンバーシップにオーディオコメンタリーがあるので、気になった方はぜひ見てください。

天才しかいない。
カタシロというシナリオの向こう側を見た気がする。アナザーならではのPCの考え方、感情が見られてとてもよかった。むつーさんって凄い人なんだなと思ったのはこのセッションがきっかけ。

シリアスだけじゃない!ギャグシナリオもあるんだぜ!
花粉症のキャラクターが花粉を退治しに行くシナリオ。推奨技能が「火炎放射器」。このセッションは何かとキャラが濃い。右の子、一番まともそうだろ?一番ぶっ飛んでるんだよ。

他にもいろいろありますが、一度ここで切らせていただきます。ありがとうございました。

R.3  12/8