海
海が、好きだ。
黒く波打つ、ただ全てを飲み込む気しかないような海が。包み込むなんて優しさを簡単には見せてくれない海が。
高校三年間を海に囲まれた町で過ごしたというのは理由として大きくある。
日が暮れて、スマホのライトをつけて、自分の歳はんぶんくらいの高さの堤防のそばを歩く。
人目に晒されないであろう気分になれる所を選んで、寝ころんで、すこし湿った冷ややかな風が頬をなぞるのを待つ。
潮騒、海風が吹き、独特の匂いを嗅ぐ。確かに傍には海がある。瞳孔を開いても瞼を閉じたままのように暗い海。
そこにあるのに、それは私に無関心のままでいる。私があろうとなかろうと、それには関係なく、何をしようがお構い無し。
そんな関係性が心地よくて、居てくれるだけで貰えるものだけ貰って、思考の波は大きくなって、
夢想の海に沈んでゆく。
ビルの森の中で、そういった時間がときたま、恋しい。
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