スウ・ドン剣法免許皆伝48ムサシの剣「シュウコウ」

ムサシの教えに「シュウコウのミ」というのがあります。秋こうの身、こうは猿の事ですが、現代漢字ではなかなか出てきません。僕らの年代は猿の事を、えてこうと呼んだりしたのですぐに分かりますが、けもの辺に候補の右側をくっつけた漢字です。獲の左側がけもの辺です。
さて、なぜそう言うのかまでは調べていませんが、秋こうとは手の短い猿の事だそうです。手の短い猿になったつもりで入ってゆく、少しも手を出さないで身体を寄せていく、相手が打ちかかってくるより早く、小手先の術策労せずに身体を寄せつける、というような教えです。
手長猿が剣道しているとかイメージしてみましょう。手が長いから、それこそ小手先でチョコチョコ、チャカチャカと戦うでしょうね。手の短い猿とは違うかも知れませんが、剣道形には小太刀があります。小太刀ではとくに「入り身」がポイントです。短い刀だから、入らなければ仕事は出来ない、打つより先に身を寄せる、怖がっている場合ではないよというような感じでしょうか。真の勇気、相手の懐に飛び込んでゆく「入り身修練」が大切だよという事でしょう。剣というか刀は怖い物だけど、怖さを捨て去るのが大前提、とはいえ竹刀でさえ怖い物、なかなかその境地で試合は出来ない事の方が多い。ムサシはやはり剣豪だ、為になる教えが多い。手長猿の剣道やめて、手短猿の入り身剣道を目指そう。刀に頼らず竹刀に頼らず、がいいのだが、面・小手・胴の部位に当てるのが一本の現代剣道は、一頃言われた「当てっこ剣道」になってしまったのも仕方ない道だったのかも知れない。反省の道を進んではいるが。打つ練習だけでなく、入る練習、入って打たせてみる練習、入って打たせて打たれない練習というものも、これからはやってみていいかも知れない。入り身に関しては、いろいろな流派でいろいろな言葉で教えを説いている。昔の人は動物植物その他の自然を利用して、頭に浮かび易く残り易く説いている。とても為になる。単にメンコテドウじやない。