スウドン剣法免許皆伝29

「押し切り、引き切り考」
今日のテーマに入る前に「慣れる」ということについて一言。慣れるとは、そのことが上手く出来るようになることで、いい意味にとれる。車の運転も、免許取り立ての頃は慣れなくて慎重に運転するが、慣れてくると注意力を失って事故ることがある。この場合の慣れは悪い意味にとれる。剣道でも同じことが言える。上手く打てることに慣れるために練習するが、慣れてきて上手く打てるようになると、打たれることも多くなる。なぜこんなこと書いたかと言うと、皆伝25ガンマン我慢の所で番号付けるの忘れた上に、皆伝28となるべき、五段受審の若者への所はスウドン剣法さえ飛ばしてしまったからだ。まさに慣れの悪さだ。
さてあなたは、台所に立って包丁で野菜や魚を切った経験がありますか。あればすぐ理解してもらえると思います。刃物は前へ押しても切れるし、手前に引いても切れます。もちろん垂直に押し付けても切れますが、力が入ります。直刀(ちょくとう、両刃、まっすぐな剣)からカーブを描く片刃の刀が出来て、引いて切るのがますますスムーズになりました。剣道で基本の面打ちは、剣道形にあるように上から下への左拳による引き切りなのです。しかしながら、竹刀は面に当たって止まる上に、踏み込み足でドンと打っている勢いで、体が前に出るので、押し切りをしているようにも見えます。引き切り押し切りの合体かも知れません。正しくは引き切りで終わって、後は余勢の動きだけなのですが。現代剣道で、押し切りは突きに残っているのみでしょうか。本当は、面部にも小手部に、胴部にも押し切りはあるのですが。私は中学生の頃、相手竹刀を右から叩いて、竹刀を返して相手の右胴に飛び込んで、左側に進んでいく技でよく勝利していました。考えてみると、これは押し切りに近いと思います。現在はあまり見かけません。当てただけとかとらえられるのかも知れません。刀なら切れているのに。こんなこと言っても仕方ないのですが、突き垂れを少々外れても体まで届けば一本、小手でも胴でも少々外れても一本、刀なら切れていますので。防具剣道は音というのも重要になるのですね。防具の発明で剣の技術は確実に衰えています。刀は右下からも左下からも斬り上げることが出来るのに、甲手をはめることによる手の操作性の減少と、打突部位の限定で、技術は確実に少なくなっています。かろうじて、右上左上からの打ちが残るのみでしょうか。まあしかし、防具剣道は数あるスポーツの中で、やるスポーツNo1と思います。格闘して相手をやっつけることは、人間の本能と快感に一番訴えかけるのです。ポーンと面打った時って気持ちいいですよね。しかも、打たれたとしても、防具が防いでくれるからそんなに痛くないですよね。ボクシングや空手やその他の格闘技は痛いのですよ。怖さを伴う緊張感を体感できる上に、痛さは少ない、だからやるスポーツNo1です。
でも、見るスポーツとしては最低は言い過ぎですけど、経験者でも目を離した隙に一本、見ててもわからない時もある。未経験者には、でかい声が響きわたるだけのよくわからない世界でしょうね。
最後にツマンナイことですけど、木刀は曲刀、竹刀は直刀に近いな、今まで全く考えたことも無かったけれど。今回は、刀の世界に比べて、技追究の面白味は減ってるなあ、なんか刀の使い方を利用できないかなあの愚痴でした。少しだけあります、いつかまた。