スウ・ドン剣法免許皆伝60ここのえの位って何?

久しぶりに書いておきたいことに出会った。雑誌剣道日本2021年3月号に、女性7段合格者2名の方の記事が載っていた。ブランクがあったり母親になって子どもと共に始めたりの中での合格、すごいことだ。10年挑み続け78歳で合格、しかも、退職金で道場まで建てて剣道の修業と伝達育成に取り組むなんて、頭がいくつあっても下げきれない。その方がコロナ禍での受審に当たり、「中心を攻めて一歩入り、気を溜めて打て」と教わった『九重の位』を頭に入れて、打ち込み台の打ち込みに丹念に取り組んだそうだ。自分はスピードが遅いので一歩入ったら相手に打たれるじゃないのと思っていたが、人形に何本も打っている内、先生の教えが「こういうことか」を自分なりに理解できるようになってきた。稽古再開後に、一人稽古でイメージしていたことを実践してみると確かな手応えを感じたということである。何となく理解はできる気はしたが、私は九重の位について習った事がないので、自分なりに考えてみることにした。また、その方は審査本番で「腹に力を入れて大きな声を出す」とだけ考えていた。何をどうしたか覚えていないということである。実に大きな教えである、学びである。審査において多くの人は雑念あり欲心ありだ。打たれたらやばい、打たなきゃやばい。無心になるには体を動かす、心を動揺させない為には体を動揺させる体を動かす、声を出す事は、喉を振るわすこと、体を動かすことに通じる。私も真似しよう。
さて九重の位とは。一重、二重、重箱段々と積み重ねる、八重、九重。イチニイサンシーゴーロクシチハチキュウ、キュウは九、九は究、九は窮、イコールきわめる、きわまる、とどのつまり、物事の果て、行きつく所。一ニ三四…と攻めて行って九で打つ。面を打つという身体の動きは短い時間の中でのスピーディな打ちであっても、心の中の動きは、イチで飛び込んで打っているのでなく、イチニーサン…キュウで急に打つ。そんな気分が「気を溜めて打て」なんだろうか。
あるいは九は球。一角二角三角四角…九角は円形、球に近づく。そして十。十は球がどんどん膨らんでいく様を表す。十は充実充満の充。溜まりに溜まった空気が十でとおとお破裂して、中の空気が勢いよく四方八方に拡散する力強さを持って面を打つ。自分の中での【九重の位】と心得て取り組んで行こう。