刑法条文・理論攻略法9

刑法条文・理論攻略法9
遺棄罪各論2
保護責任者遺棄罪(218条前段)
(1)客体
老年者、幼年者、身体障害者又は病者
病者には泥酔者も含む(最決43年11月7日)
岡山県の泥酔女の事例
(2)保護責任者遺棄罪の保護義務と、殺人罪の不真正不作為犯の作為義務者は同義とされている。
(3)不真正身分犯→65条2項
(4)本罪の「遺棄」
①作為たる移置②不作為による置き去りの2つの意義
【ポイント1】
218条は、保護責任者→不真正不作為犯
したがって、218条の「遺棄」については、作為の場所的離隔を図る行為のほかに、置き去りという不作為も含む。
【文献種別】 判決/最高裁判所第二小法廷(上告審)
【裁判年月日】 昭和34年 7月24日
【事件番号】 昭和31年(あ)第4547号
【事件名】 業務上過失傷害道路交通取締法違反要保護者遺棄被告事件
【審級関係】 第一審 24003622
大阪地方裁判所 
昭和31年 5月31日 判決
控訴審 24003623
大阪高等裁判所 
昭和31年10月31日 判決
【判示事項】 〔最高裁判所刑事判例集〕
自動車操縦者の被害者救護義務違反と要保護者遺棄罪の成否
【要旨】 〔最高裁判所刑事判例集〕
自動車の操縦中過失に因り通行人に約3箇月の入院加療を要する歩行不能の重傷を負わしめながら道路交通取締法、同法施行令に定める被害者の救護措置を講ずることなく、被害者を自動車に乗せて事故現場を離れ、折柄降雪中の薄暗い車道上まで運び、医者を呼んで来てやる旨申し欺いて被害者を自動車から下ろし、同人を同所に放置したまま自動車を操縦して同所を立ち去つたときは、道路交通取締法違反(被害者救護義務違反)罪のほか要保護者遺棄罪(刑法第218条)が成立する。
→この判決の結果、218条の遺棄には、不作為の「置き去り」を含むことが明確になった。
【ポイント2】
保護責任の判断方法
1、総合考慮説
→保護の継続性、保護の引受、先行行為、支配的地位、保護の容易性を総合考慮する
 VS
2、支配的地位の必須説
第1段階=事実上、扶助を必要とする者に対する「保護する責任」が発生するというためには、要扶助者に対する「支配的地位」が認められることが必須。
このため、支配的地位が認められることが必須
第2段階=次に、残りの保護の継続性、保護の引受、先行行為、保護の容易性の一つが認められればよい。
以上

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