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平成29年司法試験・民法・設問3・解答に挑戦

平成29年司法試験・民法・設問3・解答に挑戦
【論点】
1、本件土地(甲1土地、乙土地、甲2土地)をAからEが6000万円で買い受けた。本件土地の新所有者になったEは、Cに対し、丙建物の収去と本件明渡を請求した。
2、これに対し、Cはどう反論するか。不動産の賃貸借の対抗要件が問題になる。
3、丙建物は登記されているので、丙建物と甲1土地と乙土地については賃借権を対抗できるが、問題は特に登記されていない甲2土地の賃借権をどう対抗できるのか。→これは難問。条文だけでは、解決が付かない。しかし、Cは甲2土地についても賃借している。それなのに、登記不備などの対抗要件が欠くことで土地を明け渡さねばならないのか。ウヒャー。
第3 設問3
1、甲1土地と乙土地について
(1)借地借家法10条1項は、借地権は登記がなくとも、土地上に借地権者が登記された建物を所有すれば、借地権を第三者に対抗できる旨を規定する。
(2)Cは、本件土地の所有権がAからEに移った時点で、甲1土地、乙土地上に登記した丙建物を所有しており、借地借家法10条1項によって、本件土地の借地権をEに対抗できる。したがって、丙建物の収去と甲1土地、乙土地の明渡というEの請求は認められない。
2、甲2土地について
(1)甲2土地は、患者用の駐車場として使われている。借地権の登記はされていない。また、甲2土地上に登記された建物もない。とすれば、Cは甲2土地の賃借権をEに対抗できないことになる。しかし、Cは甲2土地について有効な賃借権を有し、実際に賃借している。このため、Cが、甲2土地の賃借権をEに対抗できないことになるのは、Cにとって不公平な結果といえる。
(2)そこで、賃借権が存在することが、その土地の位置、形状、構造などの物理的に明白であり、かつ、第三者が賃借権の存在を認識できる可能性がある場合には、対抗要件がなくとも、賃借権を第三者に対抗できると考える。
(3)本問において、甲2土地は、Aが柵で囲んでいた本件土地の内側という位置にある。また、本件土地に駐車場として整備されているという形状、構造が一般人にとっても明かであり、賃借権が存在することが物理的に明白である。
かつ、甲2土地に整備されている駐車場には、診療所(丙建物)へ通う患者が自動車を駐車させていることから、Eは認識できる。以上の事実から、Cは甲2土地について賃借権を設定していることをEに対抗できる。
3、以上から、甲1、乙土地、甲2土地のいずれにも、Eの請求に対するCの反論は認められる。
(以上、平成28年司法試験・民法・設問1に続く)

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