会社法条文・判例攻略法9

 今回も、ド典型な論点。株式会社成立後の新株発行の訴え。そんなの基本書を読めば、分かると言えそうですが、分かりやすい方法でまとめました。今回は、手続違反よりも取引の安全が優先される公開会社の3パターンを学びました。
【条文】
828条(会社の組織に関する行為の無効の訴え)
2項=株式会社の成立後における株式の発行 株式の発行の効力が生じた日から6カ月以内(公開会社でない株式会社にあっては、効力が生じた日から1年以内)
【語呂合わせ】
828条
語呂1→やっぱ(828)、組織の訴訟で戦おう。
語呂2→歯に歯(828)と、組織の訴訟で戦おう。
新株無効→新株無効に(2)
828を引くことができれば、2項にある株式発行の項目は見つかる。
【無効事由】
 新株発行無効の訴えで最も問題になるのは、無効事由。なぜなら、明文で規定されていないから。
1、既に発行された株式に利害関係を持つに至った者の法的安定性への配慮
 ↓
2、この法的安定性を犠牲にしてでも無効にするべき重大な瑕疵(重大な法令・定款違反)の有無
【ポイント】
1、公開会社か非公開会社かの区別。
【公開会社の場合】
1、株式が転々流通することが予定されている。
 ↓
2、非公開会社に比べ、株式譲渡について取引の安全を重視
 ↓
3、特別決議の有無は内部的要件
 ↓
4、株式発行の効力に影響させるべきではない
 ↓
5、特別決議を欠いても無効事由にならない。

【無効事由に当たらなかった事例3パターン】
≪1パターン≫=公開会社、取締役会決議なし(最判昭36年3月31日)
 わが国を代表するレンズメーカーから独立したZ社において、代表取締役S氏が昭和29年、有効な取締役会の決議(201条1項)を欠いたまま募集株式40万株(1株=50円)を発行したとしてパターン
 ↓
無効事由にならない。

≪2パターン≫=公開会社、取締役会決議なし、不公正発行(最判平成6年7月14日)
 大阪の帽子製造・販売会社において、代表取締役が昭和61年、取締役会決議を経ずに、著しく不公正方法により新株1万余株(1株500円)を発行した事案。最高裁は取引の安全を重視する理由で無効事由の該当性を否定した。

≪3パターン≫=公開会社、株主総会の特別決議なし(最判昭和46年7月16日)
 東京都内の大手不動産会社・T社が、訴外・大手証券会社・Y社に対し、なした買取引受けによる新株発行が有利発行であるにもかかわらず株主総会の特別決議を経ていないとして、T社の株主が新株発行の無効確認を求めた事案の上告審です。最高裁は、株式会社の代表取締役が新株を発行した場合には、右新株が、株主総会の特別決議を経ることなく、株主以外の者に対して特に有利な発行価額をもって発行されたものであっても、その瑕疵は、新株発行無効の原因とはならないものと解すべきであるから、特別決議のないことをもって本件新株発行の無効をいう原告の本訴請求は失当であるとして、上告を棄却した。
以上

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