刑法条文・理論攻略法4

刑法条文・理論攻略法4
【名誉棄損罪】
230条
(1)語呂合わせと条文
語呂→公然と名誉を踏み(23)にじり、汚(0)名を着せた。1項は生者、2項は死者だけど、ウソは駄目よ。
条文
230条
1項=公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した者は、その事実の有無にかかわらず、3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金に処する。
2項=死者の名誉を毀損した者は、虚偽の事実を適示することによってした場合でなければ、罰しない。
(2)保護法益
外部的名誉
判例
大判昭和13年2月28日
岐阜県大垣市の地元新聞社の記者が、同市内の眼科医の非行の記事を配布した事件
(3)客体
自然人だけでなく法人、団体も客体になる。理由は、社会的名誉。
ただ、東京人、九州人など特定性がないのは対象にならない。
(4)公然
「公然」→「不特定又は多数」
注意=反対概念は「特定かつ少数」
判例1
【裁判年月日】 昭和36年10月13日
【事件番号】 昭和33年(あ)第2480号
【事件名】 名誉毀損被告事件
【事案の概要】熊本の書店で大学卒のエリート社員が組合を結成。組合員の中の従業員の非行を叱責したところ、この従業員が組合を脱退し、経営者に告げ口をした。これにエリート社員が組合大会で、多数の組合員=不特定多数に当たる=に対し、この非行を披露して他人の名誉を毀損した。
【要旨】 〔最高裁判所刑事判例集〕
1. 労働組合の執行委員会において公然他人の名誉を毀損する行為は、たとえ労働者の団結を強化する目的に出たものであつても、憲法第28条の保障する権利行使に該当しない。
2. 右行為につき刑法第35条の適用はない。
3. 多数人の面前において人の名誉を毀損すべき事実を摘示した場合は、その多数人が特定しているときであつても、刑法第230条第1項の罪を構成する。

(4)伝播の可能性・百選判例
判例2(最判昭和34年5月7日)
 青森県での小さな町での事件。Nさんが、放火事件について、確証にないにもかかわらず近所の男を犯人と決めつけ、村人数人に言いふらし、伝播させる可能性があった事案。有罪で、罰金4000円。当時としては高かったろうに。
【おまけ】
→伝播の「播」の番は、田んぼの種を蒔く象形文字。
(5)事実の摘示
→人の社会的価値を下げるに足りる具体的な事実。
→事実は特定されていなければならない。
→摘示した事実は真実かどうかは問われない。
→摘示した事実が公知か非公知の事実かも問われない。
判例3
大判昭和9年5月11日
→公知である村長の非行を記述した文書を村議会で村会議員に配布して村長の名誉を侵害。公知であっても、名誉を侵害した以上、名誉毀損罪が成立する。
2、東京人、九州人
全国水平社からみの名誉毀損罪
名誉毀損罪又ハ侮辱罪ノ被害者タル者ハ或特定セル人又ハ人格ヲ有スル団体ナリトス
3、「公然」→不特定又は多数
【裁判年月日】 昭和36年10月13日
【事件番号】 昭和33年(あ)第2480号
【事件名】 名誉毀損被告事件
【事案の概要】熊本の書店で京都大哲学科卒のエリートが組合を結成。組合員の中の従業員の非行を叱責したところ、この従業員が組合を脱退し、経営者に告げ口をした。これに被告人が組合大会で、多数の組合員=不特定多数に当たる=に対し、この非行を披露して他人の名誉を毀損した。
【要旨】 〔最高裁判所刑事判例集〕
1. 労働組合の執行委員会において公然他人の名誉を毀損する行為は、たとえ労働者の団結を強化する目的に出たものであつても、憲法第28条の保障する権利行使に該当しない。
2. 右行為につき刑法第35条の適用はない。
3. 多数人の面前において人の名誉を毀損すべき事実を摘示した場合は、その多数人が特定しているときであつても、刑法第230条第1項の罪を構成する。
4、公然性がない場合
(1)検察官に対し、他人の名誉を棄損する発言をしても、検察官には守秘義務があるので、伝播性はない→名誉棄損罪は成立しない。
(2)伝播の可能性がなく、無罪とされた事件―静岡県高校ブラスバンドOB事件(東京高判昭和58年4月27日)
→被告人・S氏が、静岡県立高校の音楽担当教諭I氏の名誉を毀損しようと企て、昭和54年10月17日ころ、生徒の父兄を装い、その事実がないのに、虚偽の事実を記載した手紙3通を作成し、静岡県教育委員会ほか二か所に配達させた。2人の関係は高校ブラスバンド部のOBで、卒業後、OB会による楽器の購入等をめぐつて、両者の間は疎遠となったことがきっかけ。送付先が限定されており、伝播の恐れがないとされて、無罪。
5、違法性で問題になった事件
丸正名誉棄損事件
事案の概要
→静岡県にあった丸正運送店の女性店主が絞殺され預金通帳が無くなった事件。犯人として、トラックの運転手らが逮捕、強盗殺人罪で起訴された。弁護士2人は真犯人は被害者の親族だとして、記者会見を開いたうえ、本も出版した。→弁護活動の範囲を超えるものであり、違法性は阻却されずに、名誉毀損罪が成立した。
6、抽象的危険犯
→抽象的危険犯なので、実際にに人の名誉を低下させるおそれのある事実を摘示
7、故意
→名誉毀損罪は、故意犯に分類され、同罪が成立するためには、構成要件故意も必要。名誉を汚すことを認識・認容することが構成要件事実の一つとして必要。
以上

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