民事訴訟法・複雑訴訟総ざらえ6

民事訴訟法・複雑訴訟総ざらえ6
固有必要的訴訟を個別化して起こされた裁判例
1、改良行為(民法252条但し書)として個別化
共有権に基づく妨害排除請求→民法の改良行為として個別化
【事案】
 大正時代に、滋賀県彦根市の彦根区裁判所に起こされた事件。47人が、共有している用水路から、田んぼに引水していたところ、これを一部の者が妨害した。そこで妨害された側の30人が、妨害した10人を被告にして共有権に基づく妨害排除権を行使した。大津地裁を経て大審院まで争われた。大審院は改良行為として、共有者全員ではなく各共有者は単独で争え、被告も全員でなくてもよいと判示した。
【文献種別】 判決/大審院(上告審)
【裁判年月日】 大正10年 7月18日
【事件番号】 大正10年(オ)第203号
【事件名】 引水権確認等ノ件
【要旨】 〔大審院民事判決録〕
1. 共有ニ係ル用水専用権其モノノ確認訴訟ヲ提起スルニハ共有者全員ニ於テスルコトヲ要シ各自単独ニテ之ヲ為スコトヲ得サルモノトス
2. 共有権ノ妨害排除ヲ求ムルハ保存行為ナルヲ以テ各共有者ハ単独ニテ之カ排除ヲ求ムルコトヲ得ヘク其妨害ノ排除ハ妨害者ノ全員ヲ相手方トシテ之ヲ求ムルコトヲ要セサルモノトス
2、共有持分権に基づく所有権登記抹消手続請求訴訟
 名古屋市で起きた資産家に対する子どもの放火・殺人事件をきっかけにした土地の相続案件。
 資産家の子ども4人のうち1人Aが、この資産家を放火して殺害。その後、資産家の土地はAを含めて4人に相続された。殺害した子どもAは、債権者Bに、相続した土地で代物返済し、不実の所有権登記がなされた。また、愛知県は、Aの相続分に課税をした。
 残った子どもたちが、Aの持分権について、なされた不実の登記の抹消手続を求めた。
【文献種別】 判決/最高裁判所第二小法廷(上告審)
【裁判年月日】 平成15年 7月11日
【事件番号】 平成13年(受)第320号
【事件名】 持分全部移転登記抹消登記手続等請求事件
【審級関係】 第一審 28083059
名古屋地方裁判所 平成7年(ワ)第2600号
平成12年 2月18日 判決
控訴審 28083058
名古屋高等裁判所 平成12年(ネ)第287号
平成12年11月29日 判決
【判示事項】 〔最高裁判所民事判例集〕
不動産の共有者の1人が不実の持分移転登記を了している者に対し同登記の抹消登記手続請求をすることの可否
【要旨】 〔最高裁判所民事判例集〕
不動産の共有者の1人は、共有不動産について実体上の権利を有しないのに持分移転登記を了している者に対し、その持分移転登記の抹消登記手続を請求することができる。
【裁判結果】 破棄差戻
以上

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