刑法条文・理論攻略法7

刑法条文・理論攻略法7
遺棄罪総論
(1)遺棄罪の実質(大審院大正4年5月21日)
→人の身体、生命に対する抽象的危険犯
【事案】
 大正時代のこと。東京都のKさんは、路上で乞食をしていた80歳前後の老人を気の毒に思い、一度は自宅に引き取った。しかし起居不自由になったので、荷車に乗せて、路傍に放置した。2審は、Kさんに遺棄罪の成立を認めたのに、弁護人・山野亀五郎は、実際に危険が生じたか何ら説明をしていないと弁護に奮闘し、上告。
大審院は、上記理由で棄却。
【感想】Kさんはきっと優しい人物だっただろう。一度、引き取っているので、情状を酌量してもいいと思うけど。
(2)遺棄罪の構造
                →単純遺棄罪(217条) 
         ――→遺棄罪
遺棄の罪(広義)→       →保護責任者遺棄罪(218条前段)
         
         ―→不保護罪(218条後段)
(3)遺棄の種類
①作為の遺棄→場所的離隔で身体、生命の危険を創出(217条の遺棄)
②不作為による遺棄→置き去り(218条の遺棄に含む)→すなわち218条は場所的離隔と置き去りも含む
以上

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