民事訴訟法・複雑訴訟総ざらえ1

民事訴訟法・複雑訴訟総ざらえ1
通常共同訴訟1
 今回から、民事訴訟法の複雑訴訟の総ざらえをします。とにかく条文とその語呂合わせ。判例は、理論ばかりでなく、いつ、どこで、だれがを明確にした説明を書きます。
 通常共同訴訟の条文・38条は暗記物。共同訴訟の出発点だからね。もし、38条の前段、又は後段か、を忘れた場合、緊急に六法を引く。また、問題の訴訟の定義づけする場合の規範を条文通り設定したいときは、この語呂合わせを使う。条文さえ、確認できれば、規範を立てられる。共同訴訟から条文を引くための語呂合わせでっせ。
【語呂合わせ】
語呂1→共同便所のスリッパ(38)は通常、共同でしょう。
【条文と具体例】
①権利義務が共通(38条前段)
例1=1人の原告が、複数人の被告に対する同一物についての所有権確認訴訟。
②権利義務が事実上、法律上、同一原因に基づくもの(38条前段)
例1=主債務者に対する主債務の履行請求と、保証人に対する保証債務の履行請求
例2=複数の共同不法行為者に対する損害賠償請求
例3=数人の連帯債務者に対する連帯債務の支払請求
③権利義務が同種かつ同種原因に基づくもの(38条後段)
例1=家主が数件の借家人に対して賃料請求する場合
例2=過払い金返還請求で複数の原告が一つのサラ金業者に対する請求を一通の訴状で行う訴訟、1人の原告が複数のサラ金業者に過払い金返還訴訟を一つの訴状で行う訴訟
【実際の裁判例】
①の例1
最高裁判所 昭和34年7月3日 第2小法廷 判決(昭和31年(オ)第454号)
 佐賀市内のSさんが自己所有の住宅の保存登記を長年、怠っている間に、誤って義兄の名義が登記された。その義兄から相続したIさんら2人の所有権登記がなされた。そこでSさんが、Iさんらに対し、同住宅の所有権確認訴訟を起こした。昔は、公簿(家屋台帳)と言っていた時代で、その記載もずさんなケースがあったのかも。これは通常共同訴訟で、必要的共同訴訟ではないことを判示した点がポイント。
要旨:最高裁判所
 1、真の所有者であると主張する者が公簿(家屋台帳)上の共有名義人を被告として提起した所有権確認の訴えは、必要的共同訴訟ではない。
 2、真の所有者であると主張する者が公簿上の共有名義人に対して提起した所有権確認請求において、第一審の請求認容判決に対して被告の一部が控訴せず、他の一部が控訴を取り下げた場合に、控訴審が残存する控訴のみを棄却する判決を下したことが適法であるとされた事例。
・上記以外の裁判例は、よくあるケースなので省略。
【参考】
過去問との関連
平成30年司法試験・設問1→共同不法行為者に対する訴訟で、38条の前段か後段かを明確にしなかった答案が多かった、との指摘。細かい点だけど、要注意だね。
以上

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