刑法条文・理論攻略法11

刑法条文・理論攻略法11
1、平成30年司法試験・刑法第1問
2、問題点
乙が、A高校のPTA役員会で、2年生の数学を担当する教員が自己の子どもの顔面を殴打したと発言した行為が、名誉棄損罪(刑法230条1項、刑法は以下、略す)に当たるか。
3、以下は、自己の解答(一度は、ペン書きしている。それをPCで打っている)
【解答例】
1、乙が、A高校のPTA役員会で、2年生の数学を担当する教員が自己の子どもの顔面を殴打したと発言した行為について、名誉棄損罪(刑法230条1項、刑法は以下、略す)が成立するか。
語呂→名誉を踏み(23)にじり、社会的評価に汚(0)名を着せる。一番は生者、2番は死者、死者はウソは駄目よ→条文を引き、要件を摘示する。
2、同罪の成立するためには、①公然と②事実を摘示し③人の名誉毀損するという要件を充足する必要がある。また、人の名誉を毀損する認識・認容することも必要(構成要件的故意)である。
ア、公然とは、発言の相手が「不特定又は多数」を意味する。「特定かつ少数」
の場合は公然に当たらないが、他に伝播するおそれがあるときは、公然に当たると考える。乙が上記内容の発言をした相手はPTA役員会であった。同役員会は保護者4人とA高校校長の計5人で、「特定かつ少数」にあたる。しかし、保護者4人はそれぞれ、他の保護者に乙の発言内容を話すおそれがあり、A高校校長も他の教職員に漏らしおそれがあることから、「不特定又は多数」に伝播する可能性がある。したがって、①公然の要件を充たす。
イ、次に②「事実を摘示し」にあたるか、を検討する。この事実は、抽象的な事実ではなく、具体的に特定されていなければならない。乙は、子どもを殴った人物を「2年生の数学を担当する教員」としているだけで、その人物の名前を特定していない。このため、乙の発言は「事実」に当たらないとも思える。しかし、2年生の数学を担当する教員は丙1人しかいないことから、実質的に特定されていると言える。また、丙が甲を殴打したというのは虚偽であるが、
230条1項は「その事実の有無にかかわらず」としており、甲の発言の真実性は問題にならない。したがって、乙の発言は「事実を摘示し」たと言える。
ウ、乙は「人の名誉を毀損」したか、を検討する。人の名誉とは、社会的な外部的名誉を意味すると考える。学校教育においては、教員が児童・生徒に暴行を加えることは、たとえ、それが懲罰といっても、許されない。もし、このような行為を教員がしたとすれば、その教員の外部的名誉が低下する。したがって乙の発言は、丙の名誉を毀損したといえる。
エ、また、丙が、乙の子どもを殴ったことを多くの人に広めようと乙は考えていたことから、丙の名誉を毀損することを認識・認容していた。以上から、乙の行為は、230条1項の構成要件に該当する。
2、乙の上記の行為の違法性を阻却する事情はなく、先述した通りに故意もあったことから、乙には名誉毀損罪が成立する。
3、また、乙には公益を図る目的はなかったことから、230条の2によって、乙の名誉棄損罪が不可罰になることはない。

注意=第2問、第3問は次回。以上

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