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過去の出来事が特別な思いへと変わった話

きっかけは社内上映会

私が新卒で就職したのは建設会社だった。配属先は企画課。まったくの事務屋で建設知識はない。

私が入社した年は、博物館明治村の帝国ホテル中央玄関が展示公開された年であり、移築はその会社が担当した。社内では大きなプロジェクトがあると、その詳細を紹介するビデオ上映会が随時開催されていた。もちろん、この帝国ホテル中央玄関に関する上映会も開催された。

この工事では、オリジナルの部材をすべて再利用するのではなく、ライトの作り出した空間を再現する「様式保存」という方法を採用していた。部材の多くはち密な調査の元、厳密に復元されたものだ。建築知識は無くても美術が好きな私は、工芸品のような美しい部材が出来上がっていく様を、ワクワクしながら眺めていた。

ところが、帝国ホテル中央玄関が、明治村のどこに移築されたかがわかった時、あまりのことにとても驚いた。この工事現場の近くに行ったことがあると、気づいたからだ。

蘇った記憶

高校2年と3年の間の春休み、仲良し友達5人で明治村に遊びに行った。どこをどう回って何をしたかの記憶はほとんどない。唯一、正面玄関から遠く離れた、奥のつきあたりが工事中だったことだけ覚えていた。隅田川新大橋の先だ。

見るものが無いとわかり、橋の手前で引き返そうとする友達を離れて、私は現場に近づき、中が見えないかと白い幕の奥を覗こうとした。当然何も見ることは出来ず、「何が建つんだろう」と思いつつ、その場所を離れた。

その後は教師になるべく教育大学に進学したので、まさか新卒で建設会社に入ることになるなど、夢にも思っていなかった。だから、明治村の工事現場のこともすっかり忘れていた。会社での上映会に参加するまでは。

あの会社に入社しなかったら、明治村の工事現場のことは、二度と思い出すことも無かっただろう。人生、どこで何がどう繋がるのか、予測はつかない。

入社した年の年末、会社でカレンダーをもらった。タイトルは「MUSEUM MEIJI-MURA」。2か月ごとのカレンダーで、6枚のうち最初の3枚は、帝国ホテル中央玄関の写真だった。捨てることに躊躇ない私だが、このカレンダーは40年近く経った今でも、大切に保管している。

丸めて保管してるのでヨレヨレだが中は美品

帝国ホテルライト館100周年

今年2023年は、帝国ホテル 東京 2代目本館(通称「ライト館」)の開業100周年ということで、豊田市美術館で「フランク・ロイド・ライト 世界を結ぶ建築」が、2023年12月24日まで開催されている。

明治村でも「特別展-帝国ホテル・ライト館竣工100年記念-「東洋の宝石」」が、2023年12月17日まで、千早赤阪小学校講堂で開催されていた。

毎年勤労感謝の日辺りは、紅葉狩りと明治村住民登録更新のために明治村を訪れる。今年は上記2つのイベントがあったので、午前中に豊田市美術館、午後明治村というコースで、「フランク・ロイド・ライト」を堪能した。

高校生から新入社員に繋がる記憶により、明治村の帝国ホテル中央玄関、ひいて、フランク・ロイド・ライトは、私にとって特別な存在となっている。

毎年チェックする博物館明治村 紅葉スポットのひとつ SL名古屋駅近くの階段

トップのイメージ画像は、豊田市美術館のレストランでいただいた「フランク・ロイド・ライト展特別デザート」。使われている食器は、ノリタケのフランク・ロイド・ライト インペリアル。かつて帝国ホテル ライト館で使用されていたお皿やカップの復刻版だ。ポップなデザインは、今なお、十分魅力的だ。

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