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「哀れなるものたち」


 久しぶりに映画に行きました。「哀れなるものたち」。

  久しぶりのsearchlightの作品。今はなき20世紀FOXの中の昔でいうミニシアター系や、アートティスティックな作品だったり、上質な作品が多いスタジオで、個人的に好みの作品が多い。今はディズニー傘下。
 最初のロゴのところは20centuryが取れていたけれど、以前と変わらずでちょっとホッとする。

 「哀れなるものたち」、searchlight健在、という感じのとても良い作品でした。
 自我、自立、自由、成長、ジェンダーなど、色々なテーマが主人公の成長にあわせて、奇想天外なストーリーの中で自然に描かれていて、とても面白い映画だった。

 自殺した女性の胎児の脳を、その女性に移植し、最初の体と脳のアンバランスの状態から脳がどんどん成長して、言語や身体の動かし方などをどんどん習得し、自我の獲得、その後の成長などを冒険(経験)を通して学んでいくというのが、ざっくりのあらすじ。

 ちょっと不快感を誘うようなリズムのズレたような音楽や、不思議な音(良い音ではない)がこの映画の独特な雰囲気にぴったりあっていて、素晴らしかった。この映画にはこの音しかないような。
 美術、衣装も素晴らしい。主人公のバフスリーブの衣装が素敵。そして様々な都市を巡るのだが、その都市の風景、表現が素晴らしく、個人的にはアレクサンドリアが、ブリューゲルの「バベル」をそぎ落としたような独特の表現が好きでした。明るくもなく奇妙であり寂寥感があった。

 ファンタジーのような雰囲気もあり、グロテスクでもあり、美しくもありと、不思議な世界観で一つにまとめられていて、素晴らしかった。似たものを挙げると、個人的にはビョーク的世界観かな、と。

 久しぶりに良い洋画作品を観たなー、と思いつつも、万人受けはあまりしなさそうと言いますか。私も正直観ながらこんな映画なんだ!と少し衝撃を受けた。
 事前に見た予告やあらすじからすると、もっと単純な成長譚なのかと思っていましたが、いい意味で裏切られまし、ビックリしました。

 あと内容とはあまり関係ないのですが、最近ヌードシーンでモザイクって入らなくなったんですね。男女ともにモザイクなし、裸全開でとてもビックリしました。
 この映画は、セックスシーンが多すぎるという声を聞きますが、私もちょっとそう思います。そのシーンが意味すること、「私の体は私のものである」みたいなメッセージ性はすごく理解できるものはあるのですが、正直ビックリしました。

 洋画らしいとても良い作品なので、機会がありましたら、ぜひ観ていただきたいなと。月並みですが、非常に興味深いテーマと描き方でお薦めです。



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