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BaseBallBearのマジックについて

BaseBallBearが2001年に結成されて20周年を迎えました。僕は彼らが高校3年と2年の時に送られて来たデモを2002年の春に聞き、可能性を感じて連絡しました。業界の第1発見者なわけですね。そんな彼らも順調に成長し活動を続け日本を代表するロック・バンドの1つになっています。

今回ニューアルバム「DIARY KEY」が発売されました。その特典DVDの歴代の関係者とメンバーが対談する映像が収録されているのですが、そこに僕との対談も収録されました。

僕が関わったのは2001年春の出会いから2006年のメジャーデビューまで約の5年間なのですが、この対談で色々記憶の扉が開いた事もあり、出会った当時の事、メジャー・デビューまでの思い出と彼らがなぜ20年も活動出来ているのか思った事を書いてみたいと思います。

当時の僕は新人の発掘をしながらナンバーガールの宣伝、氣志團、フジファブリック、Art-Schoolの育成などをしていたと思います。

最初にデモを聞いた音的な印象は編成が同じだった事もありスーパーカーのフォロワー的な感じがしました。それと教室で制服で4人が手を繋いで並んでいる写真(指がレンズにかかって一部が欠けている)が印象的でした。今でこそさほど珍しくはないのですが当時は、まだ高校生のオリジナルのバンドというのはあまりなく、そこにも興味を引かれたのだと思います。

小出君に連絡をして「新曲が出来たら聞かせて欲しい」とリクエストしたら定期的に新曲(MD!)が届き、その都度成長を感じていました。

そして、メンバーと初めて会ったのは、今はなき溜池山王の東芝EMIのロビーにメンバーが高校の制服でやって来ました。多分色々話したとは思うのですが、覚えているのは堀之内君が明日の人生初めてのデートをどうするかみたいな青春な話を延々としたのは覚えています。

02年7月15日下北ガレージでのファースト・ライブ、初めてのレコーディング、初めてのMV撮影、初めてのリリース、アルバム制作など、何をとっても彼らにとって初めての事を一緒に体験出来たのは本当に楽しかったです。

ちなみに関根さんが主演の1人だった2005年公開の映画「リンダリンダリンダ」打ち合わせから撮影、完成まで、色々関わった事は僕の楽しかった仕事チャートのトップ3に入ります。それと最近話題のアメリカの10代(前半!)のガールズ・パンク・バンド、ザ・リンダリンダズというバンドが、この映画の名前から取ったというのは嬉しいですね

話が外れました。

彼らがなぜメジャー・デビュー出来たのでしょうか。

まず一番は当たり前ですが努力した事です。バンドに良く言うアドバイスで「もしデビューしたいのならば週に2回スタジオに入り、月に2回ライブをやり、月に2曲新曲を作る事を2年やってみて欲しい、それで才能と運があればデビュー出来る」と言います。要は2年間メンバー全員がバンド中心の生活を送れという事ですね。

これは口で言うのは簡単ですが、なかなか実行するのは大変です。ですが彼らはこのノルマ以上の事をやっていました。特に2002年の夏、ドラムの堀之内君の実家の部屋を防音したスタジオのような部屋があったのですが、そこにほぼ毎日詰めて練習していました。そして夏休み明けると見違えるように上手くなっていた事を覚えています。

彼らをその結果。結成2年でファースト・ミニ・アルバムをリリース、この段階で、彼らの可能性を感じて僕以外にも応援してくる人が付いて来ました。その後、着実に動員と評判を伸ばしていき2006年にはメジャーデビューとマネージメントが決まりました。

考えたらフィロソフィーのダンスも結成からメジャーデビューまで5年かかったので同じですね。ちなみのフィロソフィーのダンスがここまで来た最大の理由はメンバーの努力だと思っているので、ここも同じものを感じます。

話が外れました。

それと、バンドは各々のメンバーが持っているものは25しかなくても4人が集まると100ではなく、200や300にもなる事があります。いわゆるバンド・マジックというやつですね(ビートルズのメンバーのソロ・アルバムには名盤もあるけれど、どこか物足りなさを感じるというのは、そのマジックが失われているからというのは良く言われます。

小出君は秀でたソングライターですが、やはりソロ・アーティストというのはイメージしづらいですね。後のメンバーもどんな音楽でも、そつなくこなせるというのではなくBaseBallBearの音楽の中で自分の魅力を一番に発揮できるミュージシャンだと思います。

それとミュージシャン志望の子に最初に「売れる事より、続けていくほうが大変だし。価値がある」とアドバイスします。彼らはシングル、アルバム共にトップ10ヒット(最高シングル5位)も多く出し、武道館コンサート2回行うなど成功はしていますが、ドーム・ツアーだミリオン・ヒットというものに成し遂げてはいません。でも、この20年間、大ヒットは飛ばしたけれど記憶の彼方に去ってしまったバンドやアーティストも多くいます。

一方、BaseBallBearはデビュー以降、この20年歩みを止める事なく定期的に作品をリリースしてツアーを行い、松任谷由実、RHYMSTER、岡村靖幸といったレジェンドアーティストに認められ、時に共演。あるいは小出君はラジオ・パーソナリティーとしても大人気のRHYMSTER 宇多丸さんからも喋り手&カルチャーの論客としても認められ独自の立ち位置を築きました。関根さんも結成当初はベース初心者。ルート音をエイトビートで弾くのがやっとだったのが、今や難関楽器の一つスティック・ベースを弾きこなすまでになりました。

それと彼らの独自の音楽性は小出君がNunberGirl、XTCといったロック・バンドからの影響と同時に彼が無類の女性アイドル・ソング好きという嗜好がミックスされたからではないかと思っています。今でこそロック・ミュージシャンがアイドル好きですとかいう事は市民権を得てますが2010年頃までは「アイドルが好き」なんて言ったものなら石でも投げつけられかねませんでした。当時はアイドルを認めていなかった僕も「カッコ悪いからアイドル好きとか言わないで」とか小出君に良く言っていたのですが、その件に付いてはこの場を借りて謝りたいと思います。

今回の最後まで読んでいただき有難うございました。



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